9月14日、快晴の鈴鹿サーキットで、待望のフォーミュラ・ニッポンの新システム、『システム-E』実走テストが行われた。本来は5月に行われる予定だったが、東日本大震災の影響もあって延期が重なりこの日の実施となったもの。

 14日のテストでは、トヨタ、ホンダが現行フォーミュラ・ニッポン車両であるFN09をベースにしたテスト車両を1台ずつ運び込み、それぞれ松田次生、道上龍がステアリングを握ってテスト走行を行った。

 システム-Eは、従来のオーバーテイクシステムと同時に作動し、電池とモーターの力でおよそ50馬力をアシストする仕組みである。電池の容量は、フル充電でたとえば10秒間の使用ならばおよそ2回程度働く程度が確保されている。

 減速時には、制御によりモーターが発電機として一種のエンジンブレーキとなりながらこの電池に充電を行う。この、いわゆる回生を行うと3周ほどでフル充電に復帰してシステムが再び使えるようになる。原理としてはF1グランプリで用いられているKERSと同じだと考えて良い。

 システムの構成としては、ザイテック社製のモーターがホンダ・トヨタの両メーカー共通で、現行のギアボックス横に取り付けられ、インプットシャフトと減速ギアを介して噛み合っている。サイドポンツーン内には、右に電池、左にモーター制御用のインバーターが収められており、それぞれのコンポーネントは水冷システムによって冷却される。現時点でシステムEは、従来のオーバーテイクシステムの起動スイッチと連動して発動する。

 現在のオーバーテイクシステムは、リミッターを制御し通常10300rpmの回転数制限を20秒間にわたって10700rpmまで引き上げる仕組みだが、最高回転域ではトルクが細いため決定的なオーバーテイク支援とは言い難かった。しかしこれにシステムEが加わればオーバーテイクシステムに出力が約50馬力上乗せされることになり、明確な性能向上が見込める。さらに、システムを使用するタイミングと回生するタイミングによって、戦略には幅ができ、現行のオーバーテイクシステムよりもレース展開に及ぼす影響も大きくなりそうだ。

 開発は、これまでトヨタとホンダが別々に進めてきた。モーターは共通だがバッテリーやインバーターはそれぞれ別のコンポーネントを用いており、そこでは開発競争が起きる可能性もある。

 今回の鈴鹿でのテストは、それぞれが初めての実走テストであり、まずはシステムEを構成するコンポーネントがレーシングスピードでの振動を含む負荷に耐えられるかどうか、発熱しやすいコンポーネントを十分に冷却できるかどうかなどの確認作業に終始した。

 約300Vの電圧で作動するシステムにとって、微細な漏電もきわめて危険な事態をまねくトラブルであり念には念を入れたチェックが必要なのだ。今回はあくまでもシェイクダウンと初期チェックが目的で、モーターを駆動して本格的なテストが行われるのは、まだ先のことになりそうだ。今後、シーズン内にスポーツランドSUGOや富士スピードウェイでテストが予定されているという。

 問題はいつ実戦に導入されるかだが、開発が遅れたうえ導入に必要な財源の問題もあり、当初予定されていた2012年度の導入は見送られることになりそうな気配だ。そもそもシステムの追加によって車両重量が約60kg強ほど増加するため、運動性能に及ぼす影響への対応、とりわけブレーキング性能における対策やシステムの冷却対策も不可欠で、システムの完成にはまだ時間が必要だろう。

 しかし、新たなオーバーテイク支援によるレース展開の活性化には大きな期待が持てるのも事実だ。システム-Eの開発状況には今後も注目していきたい。今回のテストは、15日にも継続して行われる。

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