FIA-F4選手権の第4大会が、鈴鹿サーキットで8月29〜30日に開催され、ポールポジションを第7戦は坪井翔(FTRSスカラシップF4)、第8戦は牧野任祐(DODIE・インプローブス・RN-S)と、ランキングのトップを争うふたりが分け合った。しかし、決勝レースでは坪井が連勝し、牧野との差を3ポイントにまで詰めることとなった。
全14戦で争われるFIA-F4選手も、鈴鹿でいよいよシリーズの折り返しを迎えることになった。ここまでは牧野が4勝、坪井が2勝で、両者の間には13ポイントの差がついていた。これが果たして広がるのか、詰まるのか大いに注目されるとともに、一騎討ちとなりつつある状況を打破するドライバーが現れるかどうかにも期待がかかった。
今回も木曜日に2セッション、金曜日に3セッションの専有走行が行われたが、いきなり新たなスター誕生の予感を感じさせるドライバーが誕生した。木曜日の総合トップは坪井となったものの、セッション2で阪口晴南(DUNLOP SUTEKINA F110)がトップタイムをマーク。全日本カート選手権の最高峰、KFクラスでポイントリーダーにつけている阪口は、限定Aライセンスを獲得したばかりだ。
阪口にとっては今回がフォーミュラデビューというわけではなく、実はすでにスーパーFJ岡山シリーズ第3戦で早々と勝ち名乗りを挙げている。ちなみに、阪口が達成した16歳と17日の初勝利は、2010年に同シリーズで平川亮が達成した16歳と45日の記録を、ほぼ1か月上回る最年少記録だ。ちなみに阪口、この初勝利と同じ日にはJAF-F4にも出場していたが、こちらは牧野に敗れてはいる。
もっとも、専有走行はドライバーごとニュータイヤの投入タイミングが異なるため、単純な比較はできないにせよ、またひとり注目のドライバーが登場した。また、金曜日の総合トップにつけたのは、富士スピードウェイの第3大会で2戦とも表彰台に上がった平木湧也(GSR初音ミク ホリデー車検F110)。昨年のJAF-F4西日本チャンピオンが、FIA-F4でも覚醒しつつあるのは間違いない。その一方で、牧野は5セッションいずれもトップに立てず、「正直きついです、富士ほどではないですけど……」と珍しく弱音を吐いていた。
29日に行われた予選は、今回も30分間の一本勝負。ファーストベストタイムが土曜日の第7戦、そしてセカンドベストタイムが日曜日の第8戦の決勝グリッドとなる。ライフ重視のコントロールタイヤだけに、チェッカーが振られるまで走り続けるドライバーもいれば、途中まで、あるいは途中からというドライバーも当然存在する。そんな中、牧野はセッション途中から、坪井はセッション途中までのアタックとなった。坪井のマークした2分8秒192を追いかける格好となった牧野だったが、終盤に黄旗が提示されたこともあり、2分8秒289を出すのがやっと。しかしながら、セカンドベストタイムでは牧野が2分8秒314と、坪井の2分8秒428を上回ったため、ふたりがポールポジションを分け合うこととなった。
「昨日、赤旗が何回も出ていたので、今日もそうなるだろうと予想し、前半勝負に出てファーストベストは獲れたんですが、途中から出てきたドライバーに引っかかってしまったので、セカンドベストまでは獲れませんでした。それでも明日は2番手なので大丈夫です!」と坪井がきっぱり言い切ったのに対し、「自分では走りも『イケた』と思っています。クルマの感じも、昨日よりは良くなっていましたし……」と牧野はなぜか歯切れが悪い。一方、平木は第7戦を3番手、第8戦を4番手とするも、こちらも「昨日までの走りができていたなら」と納得がいかぬよう。そして、阪口は7番手、6番手から決勝に挑むこととなった。
さて、予選と同じく29日に行われた第7戦の決勝レースは、予選同様ドライコンディションで争われた。苦手なスタートも最近は克服しつつある坪井は、ここでもそつなく発進していったものの、牧野を抑えようという意識が強過ぎたか完全にアウト側のラインを開けてしまう。そこに飛び込み、坪井と牧野をまとめて抜いてきたのが3番手スタートの平木だった。その後、首位の平木についていけたのは坪井のみ。牧野も後続は引き離していたものの、トップのふたりからは徐々に遅れを取る形となる。
上級カテゴリーに比べれば、ダウンフォースの少ないFIA-F4車両ながら、背後にぴたりとつくと挙動が乱れてしまうのは、ほぼ一緒。坪井も逆転の決め手を欠いていたことから、そのまま平木が逃げ切ることが予想されたが、そんな状況の中、西コースで雨が降り始めたとの情報が入る。そしてドラマは、その西コースで、最終ラップに起こる。
スプーンで平木がコースアウトし、その脇を坪井がすり抜けていく。すぐにコースへ復帰した平木だったが、シケインで牧野にも抜かれてしまう。「これがトップを走る怖さなんですね。その前の周、慎重に行って大丈夫だったので、次の周も同じような感じで行ったら、飛び出してしまって……。悔しいです、もし雨が降らなければ」と平木はガックリと肩を落とした。
「最後、雨が降ってくれたおかげで優勝できました。まさに恵みの雨(笑)。僕のスタートも悪くなかったんですが、それ以上に後ろ(平木)が良くて。もし雨が降ってくれなければ、抜けなかったでしょうね」と3勝目マークに坪井は大喜び。4位は大津弘樹(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)、5位は石坂瑞基(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)、そして6位は小高一斗(FTRSスカラシップF4)が獲得した。
30日に行われた第8戦の決勝レースは、未明に降った雨によって路面は濡らされ、岡山国際サーキットの第2戦以来となる、全車ウェットタイヤ装着での戦いとなった。ここでも、スタートを決めてトップに立ったのは坪井。対するポールシッターの牧野は、5周目までは食らいついていったものの、それ以降は徐々に差が広がっていく。すでに雨は上がっていて、周回を重ねるごと水が捌けていくレコードラインを坪井はトレースしていたのに対し、牧野はストレートでレコードラインを外してタイヤを冷やし、チャンス到来を待ち続けたのだが……。何事も起こらず、坪井がそのまま逃げ切って4勝目をマーク。ランキング首位の牧野に3ポイント差と詰め寄るとともに、優勝回数では並ぶこととなった。
「流れが来ましたね! このいい流れを大切にしていきたいです。スタートがまた決まってトップに立てて、後半(牧野が)来るかと思っていましたが、思ったほどじゃなかったですね」と坪井。一方の牧野は「見てのとおり、明らかに差がありました。1周目のS字でもう、厳しいなと分かりました」と苦笑いしか出なかった。
平木が2戦連続の3位。「セッティング変更が裏目に出ました」と、期待された初優勝は次回以降に持ち越すことになった。4位は小高で、5位は予選13番手から絶妙のスタートを決めた根本悠生(GUNZE F110 KCMG)が獲得した。
一方、注目のルーキー阪口だが、第7戦ではスタートの遅れが響いて9番手に後退した後、5周目の1コーナー、最終ラップのシケインで追突されてチェッカーを受けることは許されず。第8戦は逆にスタートを決めて4番手に浮上するが、4周目に小高と根本に相次いでかわされてしまう。それでも6番手は最後までキープ。決して納得の結果ではあるまいが、この悔しさが今後の糧になることを期待したい。
