F1の世界では、様々なミーティングや会合が開かれる。その多くは事前に何らかのアナウンスがある。

 しかし、F1の会合の中で、突然開かれる会合もある。その会合が開かれる時は、FOMのスタッフがメディアセンターに何気なくやってきて、数人のジャーナリストの元を訪れ、時間と場所を耳打ちする。その時間に予定が入っていても、お知らせを受けたジャーナリストは必ず会合に出席する。なぜなら、その会合を開くのは、バーニー・エクレストンだからだ。

 筆者も一度、出席したことがある。2年前の中国GPの時だった。2011年にバーレーンGPを中止していたF1だが、デモは収まったとして、1年後の12年は開催することを決定していた。ところがバーレーンGPが近づくにつれてデモが活発化。「今はまだ行くべきではないのではないか」という声が少なからず出てきたため、緊急会合を開いたのである。その時、筆者とともに呼ばれたのは、イギリス人ジャーナリスト3人とイタリア人ジャーナリストひとりの計5人。会合はエクレストンが自分の主張を押し付けるものではなく、ジャーナリストからのアイデアをエクレストンが聞き、どうすればF1がより良い方向へ進むことができるかを話し合う。そして会合の後、ジャーナリストたちはどのように記事として発表するのかを確認する。

 アメリカGPの土曜日、予選が終了した直後に開かれた会合も、エクレストンが開いたものだった。招集されたのはイギリス人3人、ドイツ人3人、イタリア人ひとり。議題はバジェットキャップ制とコンコルド協定についてだ。目的はケータハムとマルシャの欠場を受けて、いかに小規模チームを救うかだった。

 この会合がこれまでのものと少し違っていたのは、エクレストンがジャーナリストだけでなく、チーム関係者も招集してテーブルを囲んだことだった。出席したのはニキ・ラウダ(メルセデスAMG非常勤会長)、マルコ・マティアッチ(フェラーリ代表)。さらにその後トト・ウォルフ(メルセデスAMGエグゼクティブディレクター/ビジネス)、クリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)、エリック・ブーリエ(マクラーレンレーシングディレクター)も加わった。会合はいつも以上に盛り上がり、パワーユニットの開発凍結についても話し合いが行われ、シリル・アビデブール(ルノー・スポールF1マネージングディレクター)とホンダの新井康久(本田技術研究所取締役専務執行役員四輪レース担当)も臨席し、ここでジャーナリストたちは退席させられたという。

 この時の会合では全ての問題が解決することはなく、ブラジルGPの予選終了後にもエクレストンの到着を待って緊急ミーティングがふたたび開かれた。このミーティングは午後4時からのFOMのホスピタリティハウスで行われ、今度は全チームの関係者が顔を揃えた。インテルラゴス会議は午後6時半まで行われたが、またも大きな進展は見られず。そのため、小規模チームであるロータス、フォース・インディア、ザウバーの3チームは、トップチームが解散した後もエクレストンと話し合いを続け、結局最終的に会合がお開きとなったのは、午後7時だった。

 3時間にも及ぶ長いミーティングを終えて出てきたロータスの\bジェラール・ロペスによれば、「最後まで粘り強く討論されたものの、何ひとつ決定に至ることはなかった」と厳しい表情だった。「しかし、これで諦めるつもりはない。話し合いはまた来週も行うことを約束して、今日は解散した」という。

 アメリカGP、ブラジルGPとエクレストンが2度もミーティングを開いたにもかかわらず結論が出なかった理由を、ある関係者はこう話す。

「現在、F1の分配金を決めているのはバーニーだけでなく、F1の筆頭株主であるCVCキャピタル。でも、今回の会合にはCVCキャピタルの人間は出席しておらず、来週バーニーが会うことになっている」

 結論は出なかったとはいえ、F1の未来をみんな真剣に語り合ったという意味では、2回の会合は非常に有意義なものだったと言えよう。そして、その会合を開こうと音頭をとったエクレストンの存在感を感じるとともに、今のF1界にエクレストンのような立場でF1の未来を考える人間が他にいないことを憂うのである。

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