オーストリアGPで、マクラーレンがアロンソのマシンに投入したショートノーズ。しかし、それはランキングトップを独走するメルセデス型ではなく、ウイリアムズやレッドブルなど多くのチームが採用している先端にレギュレーションをクリアするための突起がついたタイプだった。マクラーレン・ホンダは、なぜメルセデス型を採用しなかったのだろうか。

 オーストリアGPには昨年秋からマクラーレンへ加入したチーフエンジニア、ピーター・プロドロモウ(写真2枚目)の姿があった。メルセデス型を採用しなかった理由を問うと、プロドロモウは次のように説明した。

「もちろん我々も突起物がないメルセデスに似たタイプのデザインも考慮した。しかしF1マシンの空力というのは、ひとつのパーツではなく、マシン全体のパッケージとして機能している。したがって、もしノーズをメルセデス型にしようと思ったら、マシンの空力コンセプトそのものを変えなくてはいけない。メルセデスは昨年からショートノーズを採用しており、今年は、その進化系。空力のコンセプトを維持したまま、さらにノーズを最適化させることができた。これに対して、我々は一度ロングノーズでマシン全体をパッケージングし、それからショートにしたので、いきなりメルセデス型まで進化させることは難しかった。今回はノーズを変えただけでなく、フロアとディフューザーも変更した。大切なのはノーズの形そのものではなく、マシン全体のパッケージングなんだ」

 マクラーレンの新ノーズを、ライバルはどのように見ているのだろうか。メルセデスのチームマネージャーを務めるロン・メドウは分析する。

「マクラーレンのエンジニアがどんな開発を行っているのかわからないので、彼らが突起物のあるショートノーズにした理由を答えることはできない。ただし、ひとつだけ言えることはメルセデスと同じタイプのショートノーズにするには、クラッシュテストをパスするため、それなりのノウハウが必要だということだ。ノーズが短くなればなるほどクラッシャブルストラクチャー部分が減るので、より衝撃を吸収する技術が必要とされるからだ」

 つまり、メルセデス型を導入したくても、できなかったという可能性もあるわけだ。そのメルセデスはオーストリアGPで、さらにノーズを若干モディファイしていた。

「ほとんど同じように見えるが、より空気抵抗が軽減された新しいデザインのものを投入した」と、メドウは解説する。実物を見ると、ノーズ先端下部がフラットになり、ウイングの効率を上げているようだ。

 追いかけるマクラーレンと、はるか遠くを逃げるメルセデス。空力の進化をめぐる戦いに終わりはない。

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