14車種29チームが熾烈なバトルを繰り広げている今シーズンのスーパーGT300クラス。シーズン後半戦に向けて、活躍が期待されるマシンを1台ピックアップし、ドライバーにマシンの魅力を聞いていく。
今回は不動の体制で3シーズン目に挑むARTA CR-Z GTにフォーカスする。(本取材はスーパーGT第6戦SUGOにて実施)
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2012年シーズン途中からスーパーGT300クラスへ参戦を開始したCR-Z。TOYOTA PRIUS apr GTと同様、GT300クラスでハイブリッドシステムを搭載しているマシンだ。特徴はJAF-GTならではのコーナリングの強さとハイブリッドパワーによる立ち上がりの加速、燃費の良さ。また、2013年シーズンには同じCR-Zを使用していたチーム無限がクラスチャンピオンを獲得している。
そのチーム無限が活動を休止したため、今季のCR-ZはARTAの1台のみ。また、昨シーズンはエアロパッケージが刷新されるなど大きなアップデートが投入されてきたが、デビューから3年目を迎える今季は外観から判別できるような大きなアップデートは実施されていない。
しかし、当然開発の手が止まっている訳ではなく、開幕直前には新たにABSを装着。雨が降ったり止んだりの難しいコンディションとなった開幕戦岡山では、そのABSの効果もあり2位表彰台を獲得している。
ABS導入に踏み切った理由について、ドライバーの高木真一はGT300クラスで主流となっているFIA-GT3マシンにはABSが装備されている点を挙げ、「強いクルマを目指した」結果だと話す。
「いままで(ABSが)なくても戦えていた部分もありましたし、優勝することもできていました。しかし、それは極めてコンディションが良かったり、ABSが必要とならないコンディションで勝っていたんです。しかし、タイヤが冷えているアウトラップや雨が降っている時、雨あがりでスリックタイヤをつけている時など、微妙なコンディションでは僕たちドライバーがいろいろなところで練習してきたブレーキングを駆使しても、コンピュータには敵いません」
「ところが、GT3車両はABSが装備されているので、そういう場面ではどんどん攻めてきます。こういうちょっとしたところで、1ポイントを失ってしまうのであれば、ここを落とさないようなクルマを目指そうということになりました」
しかし、このABSのシステムは万全といえる状態ではなく第2戦富士や第3戦タイの決勝中は使用しなかったとのこと。優勝した第4戦からはデータ取りのために、高木は積極的にABSを使用するようにしているという。
「テストできる機会も少なく、システムも完璧ではありませんから。それに、走行中にまずいなと思ったら、(ABS)を切ればいいだけですからね。ただ、いきなり切ると(感覚を取り戻すまでに)3周くらいかかります。まったく違いますから、そこの大変さはありますね。3周じゃ足りないかな?(笑)」
また、使用するブリヂストンタイヤについてはウエットタイヤの性能やライフが向上しており、「ウエットでの性能が比較的普通だったところが、すごく強くなりました」とのこと。ABSとの相乗効果で、難しいコンディションでの戦闘力が、これまで以上に高まったと言えそうだ。
一方で、やはりネックと言えそうなのがハイブリッドシステムからくる車重の重さ。ポールポジションから独走で勝利を掴んだ第4戦富士では、軽量化のため20kgのクールスーツシステムを外して挑んだほか、72kgのウェイトハンデで挑んだ第5戦鈴鹿1000kmでは路面が乾くにつれハンデが響き、じりじりと後退。最終的に12位フィニッシュに終わっている。
最後に同じハイブリッドマシンであるTOYOTA PRIUS apr GTや今季から新たにGT300クラスへ参戦しているマザーシャシー勢について率直な意見を聞いた。
「プリウスとCR-Zはハイブリッドパワーの使い方に違いがあるように感じますね。またエンジンに関しても、こちらはターボエンジンで、向こうはもともとGT500クラスで使われていたNAエンジンがベース。そういう部分で差があります」
「ただ、今年は同じブリヂストンタイヤを使うようになり、同じハイブリッド。にも関わらず、メーカーはホンダとトヨタのガチンコ勝負。ある意味言い訳ができなくなりましたよね(笑)」
「マザーシャシーはコーナリングスピードが驚異的。完成されたクルマであれば、コーナーを得意するJAF車両の1番美味しいところを上手に使っているなと感じます。ガチンコの勝負ができるクルマが出てきたなと感じていますよ」
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ドライバーラインアップやチーム体制含め、不動の3年目を迎えたARTA CR-Z GT。今季は新たにABSという武器を手に入れ、コーナーでの戦闘力が向上している。ハイブリッドシステムの重さがネックだが、シリーズ終盤の2戦はウェイトハンデが軽減される上、コース特性もマシンにマッチしているため、コンディションによっては独走の可能性もありそうだ。