14車種29チームが熾烈なバトルを繰り広げた2015年シーズンのスーパーGT300クラス。数多くある車両のなかから1台ピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。
今回はBMWが開発したFIA-GT3マシン、BMW Z4 GT3にフォーカス。
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BMW Z4 GT3は2010年にBMWモータースポーツが投入したFIA-GT3マシン。スーパーGTには2011年からGT300クラスへ参戦を開始し、デビューイヤーにシリーズタイトルを獲得する活躍をみせた。その後は性能調整(BoP)により苦戦を強いられたものの、2014年シーズンは2勝を挙げ、グッドスマイル 初音ミク Z4の谷口信輝/片岡龍也にドライバーズタイトルをもたらしている。
マシンはFIA-GT3勢のなかで最も高いコーナリング性能を有しているのが特徴だ。BMW Sports Trophy Team Studieで2年連続でGT300クラスへ参戦した荒聖治は、コーナーによってはJAF-GT勢を超えるスピードを発揮すると明かす。
「JAF勢はとにかくコーナーが速いですが、そんな彼らと比較してもZ4は同じところまで攻めていける場所もありますし、優れている場所もあります。具体的にどのコーナーかは言えませんけどね。コーナリングマシンであることは間違いないです」
一方、予選では思うような結果を残せず、苦戦を強いられることも多い。これはマシンがコーナリングマシンとして仕上げられていること、搭載しているエンジンが自然吸気(NA)エンジンであることから、ターボエンジン搭載マシンやハイブリッドのアシストを受けるマシンと比べてストレートで負けている部分があるからだ。
「ターボやハイブリッドによる電気アシストがなく、純粋な4.4リッターのV8NAエンジンで戦っているので、予選時にパワーを引き出すようなセッティングができません」と荒。
「ストレートスピードが厳しい理由はマシンバランスや、重量物を中心に持っていくというZ4のベースとなっている持ち味もあると思います。このBMWとしてのクルマ作りの良さが、操縦性や運動性能の高さに出ているんじゃないかと感じています」
「クルマ自体は本当にドライビングしてて気持ちいいクルマです。決勝でも安定して走ることができますね。標高が高い富士やオートポリスはエンジンパワー的に不利になりますが、例えばオートポリスではコーナーリングの速さで持ち味を活かすことができます」
FIA-GT3では2016年に続々と新型マシンが登場するが、BMWも市販車のM6クーペをベースとして、新たにM6 GT3を開発。2016年1月末のデイトナ24時間を皮切りに続々と実戦投入が予定されている。
このM6 GT3には市販車M6のエンジンをモディファイした4.4リッターのV8ツインターボエンジンが搭載されるほか、市販車よりホイールベースを延伸。この結果、Z4 GT3よりハンドリング特性が大幅に向上するという。来年、このM6 GT3をどのチームが導入するかは未定だが、いちドライバーとして荒もM6 GT3に期待を寄せる。
「M6 GT3というクルマは見た目の存在感が強いですよね。ああいうパッケージのクルマは嫌いじゃありません。さらに今度はエンジンがターボエンジンになります。今まで少しライバルに劣っていたストレートスピードも含めて、バランスが整って1周通して速いクルマになってくれれば、レース展開も変わってくるのかなと思います。乗るチャンスがあれば、乗ってみたいですね」
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今季はBMW Sports Trophy Team StudieとLM Corsaの2チームがZ4 GT3を使用してGT300クラスへ参戦。BMW Studie Z4は3度の表彰台を獲得する活躍をみせた。しかし、どの表彰台もチームの戦略が機能した結果といえ、BoPによって苦戦を強いられたシーズンだったことは否めない。2016年に登場するM6 GT3はターボエンジンによりストレートスピードが向上することは間違いなく、BMW特有の持ち味であるコーナリング特性を活かすことができていれば、来季GT300クラスをかき回す台風の目となりそうだ。