14車種29チームが熾烈なバトルを繰り広げている今シーズンのスーパーGT300クラス。シーズン後半戦に向けて、活躍が期待されるマシンを1台ピックアップし、ドライバーにマシンの魅力を聞いていく。
今回は2015年シーズンからスーパーGTに導入されたマザーシャシー(MC)の1台、VivaC 86 MCにフォーカスする。
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今季、スーパーGTにデビューしたGT300マザーシャシーは、『日本のものづくり』を育てていくためにGTアソシエイションが中心となり進めてきたプロジェクト。安価な専用モノコックと、GTAが独自に販売する4.5リッター自然吸気V8エンジン、6速パドルシフト式ミッション、トリプルプレートクラッチ等が組み合わされている。FIA-GT3マシンと比較すると、車両製作に高い自由度が設けられており、チームやメンテナンスガレージが技術力を発揮できるマシンだ。
あわせて4台が参戦しているマザーシャシー勢はどれもストレートよりコーナーが速いコーナリングマシン。直線の長い富士スピードウェイやストップ&ゴーレイアウトのツインリンクもてぎよりも、テクニカルな鈴鹿サーキット、スポーツランドSUGOなどを得意としている。
このマザーシャシーのなかで、ランキング最上位につけるVivaC 86 MCは開幕戦岡山の予選で4番手を獲得すると、決勝では粘りの走りで6位入賞。第3戦タイの予選ではマザーシャシー初のポールポジションを獲得するなど好走をみせている。ドライバーを務めるのは土屋武士と松井孝允のふたりだ。
FIA-GT3と異なりマザーシャシーはシーズン中にアップデートを行うことができ、VivaC 86 MCには毎戦様々なアップデートが施されている。しかし、ドライバー兼チーフエンジニアの土屋によれば、このアップデートはパフォーマンス向上よりも信頼性向上を重視したものが多いという。
「このクルマは走れば走るほど壊れていってしまいます。熱や振動、負荷など様々な問題が出てしまうんですよ。そのため、まずはレースを走りきれるクルマにすることを念頭に手を加えていますね」と土屋。
「もちろん、アップデートも何度か入れていますが、それ以上に基礎的な部分を毎回作り直しています」
とは言いつつも、マシンのフロント部分を根本から作り直し土屋いわく「ほぼシェイクダウンの状態」で挑んだ第4戦富士では、マシンが苦手とするコースレイアウトながら予選6番手、決勝5位を獲得する活躍をみせており、少ないというパフォーマンス重視のアップデートは確実に効果を発揮しているようだ。
それでも、「壊れなければ優勝できる」と強い意志をみせていた第5戦鈴鹿1000kmでは予選こそ7番手を獲得したものの、決勝ではトラブルなどに苦しみ23位に終わり、マシンの信頼性向上が急務であることも間違いない。
「FIA-GT3のクルマは点検整備さえしっかり行えば、(レースを)走りきることは可能だと思います。しかし、このクルマ(マザーシャシー)は点検整備だけでは足りません」
「ありとあらゆるものをチェックした上で、必要な物は自分たちで作っていく必要があります」(土屋)
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FIA-GT3マシンやJAF-GTマシンよりも手間が掛かるマザーシャシーだが、マシンについて語る土屋武士や松井孝允、第5戦鈴鹿1000kmで第3ドライバーを務めた谷川達也は終始明るい表情をしていたのが印象的だった。残念ながら鈴鹿1000kmでは下位に沈んでしまったものの、続く第6戦、第7戦はマシンとの相性が良いだけに、巻き返しに期待したい。