スーパーGTの今季最終戦となる第8戦もてぎは、GT500クラスのチャンピオン決定戦になる。ここまで7戦を終えて、ランキングトップのカルソニック IMPUL GT-Rが、ディフェンディングチャンピオンのMOTUL AUTECH GT-Rを2ポイント差で上回っている状況。数字的にはランキング上位6チームにタイトルの権利があるが、実質的にはカルソニックとMOTULの一騎打ちとなる。その決戦を前日に控えたツインリンクもてぎで、関係者に話を聞いた。

「ドライだったら、まあ一騎打ちになるだろうけど天候がな。タイヤメーカーの違いとか天候の変化を狙ってギャンブルを打つチームが出てくるし、見る人にとっては面白いかもしれないけど、我々としてはドライコンディションで王道の戦いをしたい」と話すのは、ニッサン陣営を率いる柿元邦彦総監督。どっちに転んでもGT-Rのチャンピオン獲得は有力な状況なだけに、リラックスしてレースを見れるのでは、と思ったが柿元総監督は即座に否定した。

「いやいやいや。まだチャンピオンが決まったわけではないし、以前のSUGOの例(2012年SUGO戦でスタート直後の1コーナーでカルソニックとMOTULが接触して両者リタイア)がある。だから決して楽観視はしていない」

 柿元総監督が警戒しているように、前戦のオートポリスでもトップを争ったこの2台。第2ヘアピンで接触してMOTULが逆転優勝し、カルソニック陣営は悔しい想いのままサーキットを後にすることとなった。同じメーカー内での激しいトップバトルは見ているファンにとっては大歓迎だが、接触が伴うと総監督の立場としては肝を冷やしかねない。だが、それでも柿元総監督はドライでのガチンコバトルを期待している。

「24号車(D'station ADVAN GT-R)も前回、そしてここでの事前テストでも速かった。もう、その速さは本物ですよ。46号車(S Road MOLA GT-R)も速いし、4台がトップ4で争ってくれれば最高だけど、それはちょっと欲張りな話で、どちらかがきちんとチャンピオンを獲ってくれれば。2台に何かがあっても、46号車、24号車が来てくれればそれでもいい。とにかく、38号車(ZENT CERUMO RC F)の前でゴールしてくれるような展開になればと思っています」

 一方、タイトルのプレッシャーがかかっているドライバー本人たちは、決戦前日といえども、非常にリラックスした様子だった。スーパーGTで初タイトルが掛かる安田裕信は「前回の方が緊張していた」と笑う。ペナルティ累積で練習走行が走れず、いきなり予選本番となった前回オートポリス戦はさすがにプレッシャーが大きかったようだが、搬入日の時点ではいつも通りの落ち着きを見せていた。

「J-P(デ・オリベイラ)とも話をしましたが、ふたりとも優勝は何度もしているので、あと僕らに足りないのはチャンピオンだけ。落ち着いて自分たちのレースができればと思っています」と安田は抱負を述べる。

 前人未到である4度目のドライバースチャンピオン獲得がかかったMOTULのロニー・クインタレッリも「タイトルがかかった最終戦だけど、いつものレースのように、そして1年前(の最終戦)と同じ気持ちで、楽しんでレースをしたいと思っているよ。それだけ」と緊張は感じられない。両者が明日の練習走行からどんなポジションにつけるのか、何はともあれGT500の週末はこの2チームが軸になる。

 もちろん、9月の事前テストでトップ4を占めるなど好調だったレクサス陣営、そしてストップ&ゴーのサーキットレイアウト的にミッドシップのトラクションを活かすことができ、しかも雨になればさらにそのアドバンテージが活きるNSXにも大きなチャンスはある。前回のオートポリス戦の様子から考えても、ドライの戦いならばカルソニック、MOTUL、ZENTが予選上位を奪いレースを先導し、ミッドシップでフロントタイヤの温め方が難しいNSX陣営はレース中盤から追い上げるという展開が定石か。それが天候やアクシデントなどでどう変化するのかは、運次第と言えそうだ。とにもかくにも、3メーカーによるノーウエイトでのガチンコ勝負は、見どころ豊富だ。

 一方、すでにタイトルの決まったGT300クラスは、前戦オートポリスで74kgのウエイトを搭載しながら2位に入り、チャンピオンとなったGAINER TANAX GT-Rが当然ノーウエイトでもそのパフォーマンスを遺憾なくを発揮することになるだろう。ただ、チームメイトであるGAINER TANAX SLSの平中克幸とビヨン・ビルドハイムは、この最終戦のもてぎで2年連続の優勝を飾っており、相性はバツグン。3年連続の優勝も期待される。

 このGAINERのチーム内バトルに、前回優勝を飾ったB-MAX NDDP GT-Rがどう絡むのか。すでにタイトルは決まっており、どのチームも失うものはないだけに、この3台によるノーガードの殴り合いの展開も予想される。今回のGT300は純粋にどのチームも優勝を争うだけの戦い、という混じり気のない魅力がある。そしてもうひとつ、今回のレースでの引退を発表しているCR-Zや、来季の新車両が発表されているBMW Z4、メルセデスSLSなどは、この最終戦が見納めとなってしまう可能性が高いだけに、最後の勇姿をきちんと目に収めておきたい。

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