BMW Sports Trophy
Team Studie

SUPER GT in KYUSHU 300km
予選12番手からポディウムへ
3位フィニッシュの痛快なレース

予選 Q1:10位通過 Q2:12位
2015年10月31日(土)予選(天候:晴れ コースコンディション:ドライ)
決勝 3位入賞
2015年11月1日(日)決勝(天候:曇りのち雨 コースコンディション:ドライのちウェット)
場所:オートポリス(大分県日田市/全長4.801km)

雨粒が落ちてコンディションが悪い中、本来の勝負強さを発揮

 気温7度、路温8度。
 紅葉が広がりはじめた阿蘇の朝はキンキンに冷えたコンディション。予選前の公式練習は荒聖治選手がステアリングを握っていた。

「アンダーだね…」と無線越しに荒選手。

 レコードラインがダスティでグリップしない…と思われたのだが、それが掃けた後もアンダーステアに改善は見らなかった。マシンのセットアップで改善を図る。スプリングの前後バランス、スタビライザーの硬さ。試したものの手応えのある変化がみられない。時間がない中、煮詰まった状態で拘泥する。

 ヨルグ・ミューラー選手に交替したもののアンダーステアに悩まされる。しかもGT500のコースアウトにより赤旗中断。貴重な走行時間が失われていく…。

 2014年を振り返ると、やはり時間に悩まされたオートポリスだった。このコース、初めての走行となるミューラー選手がアウトラップでコースアウト。グラベルでストップ。大きなダメージもなく安堵。ところが、この後ミッショントラブルに悩まされた。シフトチェンジが働かず、公式練習の走行を続けられないどころか、予選も出走できない事態に。結果、決勝は最後尾からのスタート。なにより、ミューラー選手がほとんどコースを走らずに決勝を迎えたのが痛手だった…。

 2015年こそ、決勝までにミューラー選手がラップを重ねられるようにするという方針は序盤からつまずいた。それ以上にアタマを抱えることになったのはJAF勢と、GTA独自のワンメイクであるマザーシャーシ勢のラップタイムの速さ。公式練習をみるかぎり、トップはNo.7 Studie BMW Z4より約2秒速い。決勝レースもさることながら、予選Q1突破は激戦区になることが確実視された。そこでコースを知っている荒選手をQ1に、ほとんどラップできていないミューラー選手をQ2に充てることにした。

 予選Q1。荒選手は3周目に1分45秒027を出して6番目に滑り込むものの、他のマシンがアタックを開始すると、8番手、9番手とジリジリ下がり始める。安全をみれば、もう少しラップライムを削っておきたいところ。

「これ以上は無理だろうから戻るよ…」と荒選手。

 同じBMW Z4 GT3であり、サクセスウエイトがやや軽いNo.51 LMS LMcorsa Z4が1分45秒217であることを考えると、マシンとタイヤのポテンシャルを使い切ったタイムであることは明確。タイムにこれ以上の伸び代はない。

 幸いにもQ2へ進出できる13台中、10番手にとどまることができた。蓋をあけてみればQ2進出の13台すべてがオートポリスにおけるGT300のレコードタイムを上回っていた。従来のレコードタイムを塗り替えたマシンだけが生き残れるという熾烈さ。

 Q2に挑むミューラー選手。結果は1分45秒464で12番手。Q1より後退してしまったのは、まだミューラー選手がこのコースに習熟していない可能性を残していた。

 決勝日。天気予報はソースによってレース終盤に雨が降る、降らないと見立てが異なっていた。公式練習、予選を通して、苦しい展開が予想される中、雨も味方につけたいところ。ただし、BMW Sports Trophy Team Studieはオートポリスで雨のデータ蓄積がないため、出たところ勝負になる。その場合はドライバーの手腕に勝敗のすべてを委ねることになるが、勝機のないままフィニッシュするよりは一万倍いい。

 実のところ、劣勢の展開からタイヤ無交換作戦も検討したが、オートポリスでは巧くフィットしないことが判明した。第7戦の闘い方は「正攻法」。スタートドライバーに荒選手。できるだけファーストスティントでラップ数を稼ぎ、フレッシュタイヤを託したミューラー選手に一気にまくってもらうのが狙い。この場合、レース後半に雨が降ったときの対応力が高まる。場合によってはセカンドスティントにレインタイヤを投入する選択肢もある。

 決勝が定刻どおりに始まった。予選で使ったタイヤを荒選手が履いて、12番グリッドからスタート。このとき、予選で前のポジションにいたNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTとNo.25 Viva C86 MCがグリッドに並べず、ピットスタートとなる。実質10番手でラップを重ね始めた。

 1周でも多くラップを稼ぐために、荒選手はバトルしながらタイヤマネージングを重視するという難しい舵取りが強いられる。7周目にはNo.51 LMS LMcorsa Z4をかわして、ひとつずつ、ジックリと上を目指す。実のところ、タイヤが路面に落ちているタイヤカス(あるいは自らのタイヤカス)を拾って、タイヤのトレッド表面に固着するピックアップ現象に頭を悩ませていたのだが、これは他のチームにもみられたようで、全体にペースが上がらない。ズルズルと落ちてきているチームもある。このとき予選ほどのタイム差はないと実感する。タイヤマネージメントをしながらも、荒選手はペースを落とさない。後ろから来るGT500のマシンをやりすごすタイミングでタイムをロスすることはあるが、勝利を導くペースでラップタイムを刻んでいた。

 すると20周目を超えたあたりから雨粒がコースに落ち始める。フロントウインドウに雨が付き出すと、ライバルマシンの脚が徐々に鈍くなり始めていた。そんな中でも、荒選手は1分49秒から50秒台でコンスタントにラップを重ねる。まわりを見渡すと、タイヤのグリップが落ちてきたマシンがピットインを始める。

 そして33周目、ついにチームは動く。No.7 Studie BMW Z4をピットインさせてタイヤ交換、給油、ドライバーチェンジを行う。このとき、ふたつ隣のピットにNo.87 クリスタルクロコランボルギーニGT3がピットインしていたため、プッシュバックしてファストレーンに戻すが、マシンを押す息が合わず、タイムを数秒ロスしてしまう。ここは公式練習のシミュレーションでも練習していたところだけに手痛い。すでに戦闘モードに入っていたミューラー選手は爆音を残してピットを後にした。狭いスペースからの脱出はスポーツランドSUGOでも小さなロスタイムがあった。ここは次戦のツインリンクもてぎまでに改めて改善しておきたいところ。

 アウトラップを挟んだ35周目。1分48秒台をマーク。低い路温でもタイヤの温まりは速いことがわかっていたものの、いきなりペースアップするミューラー選手。瞬間沸騰的なハイペースは第4戦の富士スピードウェイでタイヤバーストという結果を招いた一因になっている。その経験を活かし、タイヤの空気圧マネージメントにミューラーシフトを敷いている。ミューラー選手が存分にプッシュ(追い上げる)できる計算になっている。

 期待に応えてミューラー選手は攻める。1分48秒台を連発。ペースが落ちない。他のマシンがピットインし始めたこともあり、徐々に順位を上げる。

41周目に9番手。
42周目に8番手。
44周目に7番手。
50周目に6番手。
52周目に5番手。
53周目に4番手。

 ついに、ポディウムが目前に迫る!前を行くのはJAF勢の中にあってもコーナリングマシンと言われるNo.55 ARTA CR-Z GT。その予選順位は3位。いっぽう、GT3マシン随一のコーナリングマシンと言われるのはBMW Z4 GT3。「JAFコーナリングマシン対GT3コーナリングマシン」のガチンコ対決が始まった。55周目のコントロールラインを抜けるとテール・トゥ・ノーズ。ミューラー選手は背後からプレッシャーをかけ続ける。

 激しくプッシュするミューラー選手。完全にCR-Zをロックオン。そして第3コーナー、ついに並んで3番手への扉を力づくでこじ開けて見せたのだ!

 雨が徐々に強くなる中、ペースをまったく落とすことなく、No.7 Studie BMW Z4はそのままチェッカーフラッグ。今シーズン7戦中3度目のポディウムに立ったのだ。

[関連サイト]
◯ チーム公式サイト http://www.teamstudie.jp/2015/
◯ Facebookファンページ https://www.facebook.com/bmwsportstrophyteamstudie
◯ Twitterアカウント @teamstudie
◯ BMW M HEAT http://bmw-m-heat.jp

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