タイヤから見たスペインGP
2011年5月19日、バルセロナ(スペイン)
スペインGPの新たな注目点は、ピレリのF1用タイヤの中で最も硬いコンパウンドとなるPZeroシルバーの最新進化型が登場することです。
この新しいPZeroシルバーは、従来型と同じ基本構造に基づいて設計されていますが、デグラデーションを低減するために新たなコンパウンドが使用されています。サーキットの路面や気候コンディション、セットアップやドライビングスタイルなど様々な要素によって変わってきますが、10〜25%の摩耗低減が想定されています。今週末のバルセロナで使用されるPZeroイエロー(ソフト)タイヤとの差が大きくなるように設計されており、この組み合わせによって各チームにレース戦略の幅を与えることになります。
サーキットについて
モンメロに位置する全長4.655kmのカタルーニャ・サーキットの中で、最も重要なのはターン3です。長い右コーナーで、フロントにもリアにも極めて厳しいことで名高いコーナーです。KERSの回生エネルギーと830馬力のエンジンパワーによって、タイヤには非常に大きな負荷がかかり、横Gは3.9Gにも達します。
コース中盤にある有名なカンプサでは、6速で時速280kmからハードブレーキングを強いられます。ドライバーは縁石を使ってこのコーナーを抜けますが、この際にはタイヤに800kgもの荷重が垂直方向にかかります。縁石を乗り越える激しい衝撃はカーカスによって吸収され、F1マシンにかかる衝撃が和らげられます。これこそがサスペンションの一部としてタイヤに求められる非常に重要な役割なのです。
ラ・カイシャへのブレーキング時には、タイヤは4.85Gもの減速Gに晒されます。そして1.8Gの横Gがマシンをコーナー端まで押しやり、右フロントタイヤにはコーナーの最後まで負荷がかかり続けます。それとは対照的に、最終シケインはサーキットの中で最も低速なセクションです。ダウンフォース発生量は少なく、タイヤはほぼメカニカルグリップのみによって支えられます。最高のトラクション性能を得るためにエンジンパワーの全てを上手く使い、このサーキットの中で最速のセクションであるホームストレートでは時速300kmまで加速します。
F1用タイヤと市販車用タイヤ
今年、総計で5万本のF1用タイヤが製造されますが、これはピレリが年間に製造するタイヤのごく一部にしか過ぎません。一方、F1用PZeroタイヤと対極にあるのは、最新の市販車用タイヤのひとつであるピレリP1です。このタイヤは中型・小型車向けに環境に優しい技術を用いて設計されています。
P1の走行距離は5〜6万kmとして設計されおり、これはF1用タイヤの約600倍にあたります。そして従来品に比べてロードノイズを約30%低減し、転がり抵抗を25%向上させています。このようなピレリのあらゆる製品と同様に、新型PZeroシルバーはある特定の責務を果たすために設計されているのです。
ピレリは市販車用のウルトラハイパフォーマンス・タイヤで世界的リーダーブランドと認められており、F1への参戦によってそれはさらに強固なものとなっています。F1用タイヤに使用されるPZeroという名前も、市販車用のハイパフォーマンス・タイヤに由来しています。本来、PZeroコルサ・システムがスポーツカー用のレースタイヤで、PZeroとは、最高級の高性能車へ向けたプレステージ性の高い最新のタイヤなのです。
また、PZeroロッソは快適性と性能の最良のバランスを実現したタイヤで、PZeroネロはチューンドカーやハイパフォーマンスカーに幅広く適応するタイヤです。
ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター ポール・ヘンベリーのコメント:
「新型のPZeroシルバータイヤは従来からの進化型で、5周ほど長く走ることができ、ソフト・タイヤとの性能差が大きくなっています。今回のレースで期待通りの結果が出れば、今後はこれがハード・タイヤとして使用されることになります。すでに充分にテストが行なわれたタイヤですから、今週末もまた特に戦略の幅広さという意味でエキサイティングなレースを演出してくれるものと自信を持っています」
