全日本F3選手権は7日、第9戦の決勝レースが富士スピードウェイを舞台に行われ、ポールシッターのニック・キャシディ(PETRONAS TOM’S F314)はスタートでトップを高星明誠(B-MAX NDDP F3)に明け渡したものの、激しいバトルの末に逆転を果たし、今季4勝目をマークした。F3-Nでは、小河諒(KeePer TOM’S F306)が連勝を飾っている。
富士スピードウェイの上空には土曜日同様、雲が浮かんでいたものの切れ間も見えて、より穏やかな天候となっていた。15台が並ぶスターティンググリッドのポールポジションにつけたのは、ポイントリーダーのキャシディ。その脇には高星が、そして2列目には、山下健太(PETRONAS TOM’S F312)と福住仁嶺(HFDP RACING F312)が。ここまでの8戦で、優勝もしくはポールポジションの経験のあるドライバーが、順当に上位に並んだという印象だ。
「良くもなく、悪くもなく」というキャシディのスタートに対し、絶妙のダッシュを見せたのが高星だった。高星は1コーナーまでにトップに立ち、さらに福住にもインを刺されてしまったキャシディは、わずかながらもオーバーランしてしまい、3番手に後退してしまう。チームメイトの山下もまた4番手に後退していた。
同じトップでもF3-Nの小河は好スタートを切るも、オーバーオールクラスの車両に追いついてしまい、ダウンフォースが抜けるような状況の中、まさに虚を突かれた格好で三浦愛(EXEDY RACING F307)にパナソニックコーナーでインを刺されてしまう。しかし、その後の加速が鈍った三浦愛は、ストレートで小河に抜き返され、再びホームストレート上に戻ってきた時には1秒1の差をつけられていた。
一方、高星は1周目終了時点の1秒2の差を、もう1周重ねると1秒7としていたが、差を広げられたのは、この周までだった。3周目からはキャシディのペースが上回るようになり、タイム差は次第に縮まっていき、6周目からは完全にテール・トゥ・ノーズ状態となる。
同じような状態になっていたのが、3番手を争う福住と山下。4周目の最終コーナーでインを刺し、いったんは前に出ていた山下だが、ストレートエンドで福住に抜き返されていた。それでも離れることなく続き、そのまま熾烈なバトルを繰り広げていった。
このダブルバトルにいち早く決着をつけたのは、山下だった。12周目の1コーナーで前に出て、必死に堪えようとしていた福住はオーバーラン。これで2秒近く山下に引き離されたばかりか、やがて佐々木大樹(B-MAX NDDP F3)の接近を許すことにもなる。
そしてトップ争いに決着がついたのは16周目。スリップストリームから抜け出した、キャシディが1コーナーでのブレーキング競争を制して高星をオーバーテイク。それでも高星は遅れることなく続き、再逆転を狙ったものの、ラスト2周はまるで力尽きたかのようにキャシディに振り切られてしまった。
山下が3位に留まったこともあり、再びポイント差を広げることとなったキャシディは、「今回はレースウィークを通じてクルマがとても速く、スタートで抜かれてしまったけれど、トップに上がることができて、すごく良かった。ファステストラップを山下選手に奪われたことは、そんなに気にしていない。ここまで走ってきたサーキットでは、すべて優勝できたので、また走る岡山のレースがすごく楽しみ」と語るほどに上機嫌だった。2位は高星が、そして3位は山下が獲得。最後のホームストレートで佐々木に並ばれた福住は、コンマ1秒差で辛くも振り切り、4位フィニッシュを果たしている。
F3-Nでは小河が、3周目から予選タイムとそう変わらない1分37秒台で周回を重ね、誰もついていくことができず。2位の三浦愛ですら、18秒もの差をつけられていた。それほどの圧勝にも、「最後の方はペースが上がらなかったし、現状に甘んじることなく、もっと総合で上位のマシンに食らいついていけるようにしたい」と、小河はレース内容に納得いかない様子。また、ニュータイヤを温存して定位置脱出を狙ったDRAGONだが、中盤に三浦愛との差をやや詰めるに留まり、今季8回目の3位となった。
