「僕には見えていなかったんだけど、クレスト越えのコーナーに岩が潜んでいたらしい。それでホイールがあらぬ方向を向いてしまった。マシンを止めて修復を試みたけど、結局は明日の再出走に向けてリペアに専念した方がいいという結論に至ったよ」
これで総合2番手を走っていたブリニルデソンのフィエスタが首位浮上と思われたが、彼のマシンもルキヤナクと同じステージでパンクに見舞われ、続けてインターコムに不調を来す不運に見舞われてしまう。
その後、バックアップの携帯電話による通信方法も絶たれたフィエスタのクルーは、コドライバーのベロニカ・エンガンのハンドサインでステージを走破。しかし、このトラブルによりタイムを大きく失う結果となった。
これで首位に浮上したのはマガラエスで、彼自身は戦略的な判断を下してペースを抑え、最大限の注意を払って走行。それでもこの日の6SS中で3ステージのベストを記録し、サービスへと帰還した。
「これは本当の意味でのサバイバルだ。WRCでも『アクロ(悪路)を制する者が、世界を制す』と言われる意味がよく理解できたよ」と、疲労感をにじませて振り返ったマガラエス。
「この日の午前のステージは本当にクレイジーだった。こんなステージはこれまでのキャリアで見たことがないレベルだったよ。セカンドステージをスタートしてすぐに、クルマでは到底乗り越えられそうにない大きな石や岩が、道の真ん中にゴロゴロ転がっていたんだ!」
「信じられない景色だったけど、僕らはときにマシンを止めて、それらの岩を避けるべくコースサイドに回避してクリアしてきた。それこそが戦略的な判断だった」
これで最終デイ3の4ステージを残し1分以上のリードを築いたマガラエスは、残るステージも同様の戦略でクリアし、29.1秒のギャップを残してフィニッシュランプに到達。WRC時代の勝者であるセバスチャン・ローブ、コリン・マクレー、ワルター・ロール、そしてカルロス・サインツといったビッグネームに名を連ねる、アクロポリス・ウイナーの称号を手にした。
2位にヘルツェグ、3位にポーランドのヒューバート・プタチェクが入り、シュコダ・ファビアR5が表彰台を独占。また、この最終日に再出走を果たしたルキヤナクは最終3SSで連続ベストをマークし、ボーナスポイントを手にしている。
続くERCの第4戦は、アクロポリスに続いて厳しいラフグラベルが舞台となるキプロス・ラリーとなり、6月15~17日の週末に国連管理地域のニコシア・グリークを中心に、わずかにターマック・ステージも含むミックス・サーフェスのイベントとして開催される。