現在のトップフォーミュラは“予選とスタートで8割決まる”という定説が流れて久しいが、その言葉は、現在のスーパーフォーミュラのオーバーテイクの少なさ、そしてレース展開の変化の少なさを揶揄した表現にも聞こえる。今回の第3戦富士では、予選で2番手を獲得したジョアオ-パオロ・デ・オリベイラ(LENOVO TEAM IMPUL)がスタートを決め、独走でトップチェッカーを受けたが、その勝ち方は、まさに定説のとおりだった。もちろんオリベイラの圧勝は賞賛に値するものだが、レース内容は濃厚だった。そして、オリベイラ以上に今回のレースを面白くしたのは、その定説に抗ったドライバーたちだった。
前回優勝の石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)は今回、雨の予選でタイヤ選択に失敗して10番グリッドと低迷。ドライとなった日曜朝のフリー走行でも8番手と、回復の兆しを見せることはできなかった。レースでもスタート〜序盤と大きなチャンスがあったわけでもなかったが、10周目にターニングポイントが訪れた。8番手の石浦の前を走るアンドレ・ロッテラー(PETRONAS TEAM TOM’S)が早めのピット戦略を採ったのだ。