右手を挙げて怒る石浦と同様に、走りで自らの感情を表現したのが可夢偉だった。予選6番手からスタートで3番手に順位を上げた可夢偉だったが、その後は前を行く中嶋一貴(PETRONAS TEAM TOM’S)に離され、ペースは上がらずじまいだった。
「1セット目のタイヤとセットアップは良かったのですが、(ピット後)2セット目に変えたらなぜか逆にタイムが落ちてしまって。2セット目は普通上がるはずなのにタイムが落ちてしまった。それがペースが遅かった一番の原因で、正直理由が何なのかは分からない。特に何かをやったわけではないのですがタイムが落ちて、そこからは勝負できないところにいってしまった。そこまでは勝負できる可能性もあったんじゃないかなと思っていたんですけどね。それで完全にリズムが狂って、守りのレースになっている間にタイヤを壊して、後はズルズルです」
そんな劣勢のレース展開となった可夢偉だったが、次々に襲ってくる後方のドライバーをタダでは抜かせなかった。1コーナーではスモークを上げながらギリギリまでブレーキングポイントを遅らせ、さらには相手のラインを読み切り絶妙なブロックを見せ、並ばれたとしても続くコカコーラ・コーナーの進入で抜き返すなどなど、さまざまな技と頭脳を総動員して、自らの引き出しの多さを見せた。