「いや、あれは意地ですよ。直線を通る度に僕が(サーキットモニターに)映っているから、『うわあ、これはがんばらなやばいな』、『これを中途半端に行かせたら、あとで絶対言われる』と思って。あれが映る度に『ああ! 行かな、行かな!』という意識しかなかったです。ああいう時はできればあまり映してほしくないですね(笑)。そうしたら僕ももっとラフに帰ってこれたのに。もうね、あれだけフラットスポットができてバイブレーションが出ていて、あと残り30周って見た瞬間に、僕死のうかなって思いましたもん(笑)。無理やろって(笑)。直線でいつタイヤがパーンってバーストするかわからないくらい、結構恐ろしかった。そういう心境だったので、技とかじゃなくて、意地ですね」とそのシーンを振り返る可夢偉。
明らかな劣勢の状況にあっても、可夢偉の観客を失望させたくないという心意気、言い換えれば諦めの悪い抵抗は、観る者を大きく湧かせた。可夢偉の意地、そして石浦の怒り――レースは勝ち負けの競争だが、その結果以上に、ふたりはレースの大きな醍醐味を伝えてくれた。
“予選とスタートで8割決まる”という勝者の法則は、もしかしたら真実かもしれない。だが、現在のスーパーフォーミュラの魅力は、それだけでは語れない。
