決勝日の17日(日)は朝から雨に見舞われたが、決勝レースのスタート時刻が迫るにつれ、徐々に天候は回復。スタート進行が行われる頃には、1コーナー先の上空でわずかに青空が見えるほどに向上した。とはいえ、気温は14°Cと前日よりも大きく下がり、各車はウエットタイヤで35周の決勝レースをスタートした。抜群の蹴り出しを見せたのは山本選手で、1コーナーでイン側からトップを狙うが、アウト側からスタートした大津選手がしっかりと押さえきり、オープニングラップをトップで終える。一方の野尻選手はこの時点でのコンディションとセッティングが合わなかったのか、オープニングラップで7番手に後退。翌周には牧野選手にもかわされ8番手までドロップしてしまう。ただし3周を過ぎてからはペースも落ち着き、なんとか8番手に踏みとどまり順位の回復を狙っていった。
野尻選手がポジションダウンしたのち、代わって3番手に上がったのは山下選手だったが、8周目の3コーナーで阪口選手が山下選手をかわして3番手に浮上。山下選手は急激にペースが鈍り、9周目には松下信治選手(B-Max Racing Team)、関口選手にもかわされてしまう。路面コンディションは各車が走行するレコードラインの水がなくなりはじめ、徐々に乾いてきたようで、6番手まで順位を落とした山下選手はそのままピットイン。スリックタイヤに履き替えてコースに復帰する。KONDO RACINGは第6戦にしてようやく日本への入国が叶ったサッシャ・フェネストラズ選手も同じラップでピットへと戻しスリックタイヤへ交換させた。
しかし、フェネストラズ選手はコース復帰直後の5コーナーでスピンを喫してしまい、コースサイドでマシンを停めてしまう。これでSCが入ることになり、SCボードを確認したマシンたちが一斉にピットへとなだれ込んできた。大津選手の TEAM MUGENはミスのないピット作業で、大津選手を実質のトップでコースへと送り出す。山本選手と福住選手、平川選手がステイアウトを選択したため、大津選手の後ろには阪口選手、関口選手、牧野選手が続いた。
レースは14周目にリスタート。ウエットタイヤのままリ・スタートを迎えた3名は、タイヤ交換分のマージンを築こうとプッシュするが、SC先導中にタイヤのウォームアップができていた大津選手が15周目には山本選手のラップタイムを上回ってくる。山本選手と平川選手はやむなくピットへ入りスリックタイヤへと交換。ほぼ最後尾に下がることになってしまった。福住選手は2人よりも1周前にタイヤ交換に入っていたが、右リヤタイヤのナットが噛んでしまい、ピット作業で大幅にタイムロスしてしまっていた。
17周目、タチアナ・カルデロン選手(ThreeBond Drago CORSE)が2コーナーでクラッシュし、レースは2度目のSCランとなる。21周目にリ・スタートが切られると、それぞれのギャップが縮まった状態でポジション争いが一気にヒートアップ。その中で、小林可夢偉選手(KCMG)と争っていた坪井翔選手がブレーキをロックさせてしまい3コーナーでコースアウト。さらに、山本選手と平川選手も3コーナーの手前で接触し、2台はクラッシュしてしまった。このアクシデントのため、レースは3度目のSC導入となった。3台の車両を回収するため、SCランは長くなったが、25周目にレース再開。ここから残り10周は、大津選手を先頭とした6台のトップ争いが白熱する。
この頃になると天候もさらに回復し、路面状況も向上。上位陣はお互いにファステストラップを塗り替えながらトップ争いを繰り広げた。まずは27周目の90度コーナーで、牧野選手がOTS(オーバーテイクシステム)を使って阪口選手に急接近。阪口選手はこれを見て自身もOTSを使ってブロックすると、その勢いのまま大津選手に詰め寄ってくる。0.4秒差でコントロールラインを通過すると、そのまま3コーナーでアウトから並びかけサイドバイサイドの勝負に持ち込んだが、大津選手は冷静なライン取りで阪口選手の猛追をしのぎ切る。
その後方では、OTSを使い終わった牧野選手に対して関口選手が猛チャージをかけ、同じ3コーナーでこちらは逆転に成功した。関口選手もタイトル争いにわずかな望みを残しており、そのためには今大会で優勝が必須条件。牧野選手を攻略すると、そのまま上位2台に近づいていった。ところが、33周目の最終コーナー立ち上がりでオーバーランを喫し、牧野選手が関口選手をかわしていく。この瞬間、野尻選手の手元に初のシリーズタイトルが大きく引き寄せられることになった。
大津選手と阪口選手のトップ争いは終盤、大津選手がファステストラップを連発してリードする。最終ラップには1周まるまるとOTSを使ってパワーアップし、1.7秒のマージンを築いてトップチェッカー。昨シーズンの最終戦でスポット参戦し、今シーズンがフル参戦デビューイヤーとなる大津選手が自身初のスーパーフォーミュラ優勝を飾った。そして、一時8番手まで後退した野尻選手は5番手まで順位を取り戻してフィニッシュ。最終戦を待たずして、こちらも自身初となるシリーズチャンピオンを決定した。



