2023年シーズンは、2019年から4シーズンにわたって使用された『ダラーラ・SF19』に変わり、新たなシャシー『SF23』が導入される。このSF23は、昨シーズン中に実施された次世代車両開発テストで得られた知見が反映された新型車両だ。
ボディカウルには、麻由来の天然素材を使用することで、製造過程でのCO2排出量を約75%削減しうるビーコンプ(Bcomp)社製のものが、タイヤには、横浜ゴムの再生可能原料を活用したカーボンニュートラル対応レーシングタイヤが導入される。なお、2023年シーズンでの導入は見送られたものの、将来的にはカーボンニュートラルフューエルの採用も検討されている。
今回、新たなエアロパッケージが開発・採用された大きな目的は、“接近戦”を実現し“速い者が抜ける”ようにするため。昨年までのSF19では、走行するマシンの後方乱気流の影響によってマシン同士が近づくことができず、接近戦が妨げられてしまうという傾向があった。その課題を解決するために開発されたのが、新たなエアロパッケージをまとったSF23だ。
新車導入により接近戦の増加が実現すれば、今まで以上にバトルが随所で見られるだろう。より白熱したレースが展開されることを期待したい。
また、エアロパッケージとタイヤスペックが変更になったことで昨年までとは異なるセットアップが求められるが、開幕前の公式合同テストは鈴鹿サーキットでの1回のみしか行われておらず、各陣営はまだSF23のパッケージにおける“最適解”を探っている段階だ。このため、とくにシーズン序盤戦では、昨年までとは異なる勢力図が見られる可能性もありそうだ。

■SF23 マシン諸元(編集部調べ)
| シャシー | |
|---|---|
| 製作 | ダラーラ・オートモービル(イタリア) |
| 全長 | 5,233mm |
| ホイールベース | 3,115mm |
| 全幅 | 1,920mm(タイヤ含む) |
| 全高 | 960mm |
| 車両最低重量 | 670kg(ドライバー搭乗時) |
| エンジンメーカー/製造元/型式 | 本田技研工業/M-TEC製/HR-417E トヨタ自動車/TRD製/TRD 01F |
| 排気量 | 2,000cc |
| 仕様 | 直列4気筒、ダイレクトインジェクション |
| 過給器 | ターボチャージャー(ギャレット製) |
| エンジン最低重量 | 85kg |
| 制限 | 405kw(550ps)以上 |
| 出力規制 | 燃料リストリクターによる燃料流量制限 |
一方、ルールの変更点として注目したいのは、オーバーテイクシステム(OTS)の運用方法の変更だ。燃料流量リストリクターを使用したOTSは走行中のドライバーがステアリング上のスイッチを押すと、その間エンジンへの燃料流量が増加し出力が上昇。先行する車両へのオーバーテイクを促進させるシステムだ。
2022年シーズンまでは、OTS使用中のマシンはドライバー着座位置の真上にあるロールオーバーバーのライトおよび、リヤのクラッシャブルストラクチャーのライトが点滅し、前方のドライバーやファンは、そのマシンのOTS使用状況を知ることができた。
ただ、OTSの運用方法が変更となり、2023年シーズンからはOTS使用中でもライトが点滅しないシステムへと変更となった。そのため、これからはOTSの使用中もライトは通常走行時と同様にOTSの残り時間を示すこととなる。
このルール変更により、前を走るドライバーは後ろを走るドライバーがOTSを使用していることを確認してから、OTSを使って追走を耐え凌ぐという戦い方ができなくなる。そのため、追う側にしろ追われる側にしろ、OTSを使う側の利点が増えたとも言えるこのルール変更は、バトル増加を促進することが期待できる注目の要素だ。
■1戦減少の全9戦。今年も2レース制がカギに?
2023年シーズンは、2度の1大会2レース制のラウンドを含む、7大会9レースが開催される。2022年シーズンは2レース制で争われた第7戦&第8戦モビリティリゾートもてぎでのレースが、2023年は1レース制のフォーマットへと変更となったために1戦減少。ただ、そのほかにはサーキットや開催時期を含めて昨シーズンからの大きな変更点はない。そのため、2023年シーズンのレースはどのレースも昨年に近い環境で行われることが予想される。
レースウイークのスケジュールは、1レース制の週末と2レース制の週末とでフォーマットが異なる。1レース制の大会では、90分のフリープラクティス1と予選を土曜日に行い、日曜は30分間のフリープラクティス2と決勝を行う。2レース制の大会では、金曜日に90分間の専有走行を行い、土曜と日曜は午前中に予選、午後に決勝という流れを繰り返すかたちとなる。
各レースにおける点数配分は、予選が首位から順に3-2-1ポイント、決勝では1位から順に20-15-11-8-6-5-4-3-2-1ポイントとなっている。1大会2レース制で行われる場合、それぞれのレースにおいて同じ分のポイントが発生するという点は昨シーズンと変わらない。
そのため、2023年シーズンも昨シーズンに引き続き、2レース制の大会において好調を維持しつつ2レースとも良い結果を残せるかという点が、チャンピオンシップを争ううえでのカギとなりそうだ。
過去2シーズン、ライバルを圧倒し続けてきた野尻の3連覇に待ったをかけるドライバーは現れるのか。また、新たに導入されるSF23をいち早く手なずけるのはどのドライバー、チームとなるのか。50周年を迎えた国内トップフォーミュラの戦いからは一瞬も目が離せない。
■2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権 レースカレンダー
| Round | Date | Circuit |
|---|---|---|
| 1 | 4月8日(土) | 富士スピードウェイ |
| 2 | 4月9日(日) | 富士スピードウェイ |
| 3 | 4月22日(土)〜23日(日) | 鈴鹿サーキット |
| 4 | 5月20日(土)〜21日(日) | オートポリス |
| 5 | 6月17日(土)〜18日(日) | スポーツランドSUGO |
| 6 | 7月15日(土)〜16日(日) | 富士スピードウェイ |
| 7 | 8月19日(土)〜20日(日) | モビリティリゾートもてぎ |
| 8 | 10月28日(土) | 鈴鹿サーキット |
| 9 | 10月29日(日) | 鈴鹿サーキット |

