──2022年はスポーツランドSUGOなどでウエットタイヤの速さが目立っていましたが、他のカテゴリーからの技術の応用などはあったのでしょうか。
MB:ここスーパーGTは、他のタイヤマニュファクチャラーとの競争があることから、新しい技術を導入する場となっています。したがってここスーパーGTで検証し、たとえばWEC(世界耐久選手権)など他のカテゴリーでスケールアップできる技術というものがあるのです。
たとえばWECでは、ひとつのスペックのタイヤを、年間を通じて使わなければなりません。ですが、ここスーパーGTでは、コースに合わせてタイヤ(のスペック)を変えることも可能ですから、新たなテクノロジーを試す場として適しているのです。
現在のウエットタイヤのテクノロジーも、ここスーパーGTで改良しました。とくにウエットからドライへと遷移するような状況では、より多くの開発焦点がありますが、そのようなコンディションで我々のタイヤがリーダーシップを持つことができているように見えるのは、とてもハッピーです。
以前のウエットタイヤも良いレベルにはありましたが、これは競争です。他のタイヤマニュファクチャラーも開発してくるので、そのままではアドバンテージを長く保つことはできません。
そして我々は、ウエットタイヤの(一時的な)パフォーマンスにだけ着目しているのではなく、そのケイパビリティ(使える幅の広さ)も重要視しています。耐久レースであるWECでは、雨量に変化があってもタイヤを替えずコース上にとどまった方がいい、というケースもあります。我々は現在の新しいウエットタイヤにおいて、このウエットからドライまでのカバーできる範囲の広さという点で、大きなアドバンテージを手にしていると思います。
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ウエットタイヤについて、取材に同席した日本ミシュランタイヤの小田島広明モータースポーツダイレクターは「他のカテゴリーの技術がスーパーGTのタイヤに導入されたのではなく、それとは逆で、スーパーGTに投入されて検証された技術が、他のカテゴリーへと転用されていっているということです」と補足する。
「現在のポルシェカレラカップなどのカスタマーレーシングで使用されているウエットタイヤのトレッドパターンは過去にスーパーGTに導入したもので、それがWECや他のGTカテゴリーへ派生していったのです」ということで、世界に広がる技術が生まれる場所として、スーパーGTはミシュランにとって重要な舞台となっているようだ。
2023年も、すでにスーパーGTの開発テストはスタートしている。GT500では空力開発が凍結されるなか、タイヤ開発にかかる比重はさらに高まっているとも言える。今季も4メーカーによるタイヤ開発競争から、目が離せなくなりそうだ。

