フロア側では、新規定によりフラットボトムの面積が縮小された。2022年までは前後とも車軸間がフラットボトムだったのに対し、フロントタイヤ後端とリヤタイヤ前端の間となり、下面における空力開発の領域が広がったのだ。さらに、フロントはスプリッター面積が拡大されたことでキール形状の設置が可能となり、リヤはディフューザーのキックアップポイント(始点)が前進し、ギヤボックスの逃げは直方体だけでなくキール形状での設置も認められた。また、スキッドブロックは前後分割式だったが、後ろ側が縁石に引っかかりスピンを誘発する原因でもあったため、それを防止するべく一体化されている。

 フロア側の新規定だけを見れば、空力開発の自由度が高まり、なかでもリヤディフューザーの効果範囲が広がったことは、エアロダイナミクスにおける空力効率(L/D(エル・バイ・ディー)=揚力と空気抵抗の比)においてプラス材料だ。しかし、チームによってはマイナスになることもあるようだ。

 というのも、旧規定ではディフューザーの傾斜プレートの最大設置幅が950mmであったのに対し、新規定では1300mmに拡大。タイヤハウス底面に規定はなく、以前はそのスペースを利用して凹形状の小さなアップスイープを設けるチームも多かった。これは「トリックディフューザー」と通称されるもので、吸盤のように路面に吸い付く効果があったという。

 だが、傾斜プレートの左右両端位置が拡大したことで、そのワザを使えなくなってしまった。ディフューザーは延伸されたが、後端の高さは150mmと変わらないこともあり、トリックディフューザーを使っていたチームにとっては数値上のピークはマイナス方向になってしまったのだ。

 ただ、トリックディフューザーは効果が突然抜けることもありピーキーな特性だったが、ディフューザーの前進によってダウンフォースの発生地点が中心に寄り、扱いやすい特性になったという。ダウンフォースの絶対量は減ってしまったが、決勝での安定感は上がる方向になったというわけだ。

 残念なのは、ボディ側以上に効果があるフロア側は“明かされない”こと。とはいえ、空力はボディとフロアの両面でバランスさせることが肝要であり、それが2023年規定における開発競争の焦点となる。次回からはトヨタGRスープラ、トヨタGR86、スバルBRZの車種ごとに、“明かされた”ボディ側の空力モディファイを中心に紹介していく。

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 GT300クラスの決勝スタート
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次回はトヨタGRスープラGTの空力モディファイを紹介する
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