なぜこのタイミングだったのかFerrari 488 GT3の伊藤宗治監督兼エンジニアに話を聞くと、こんな返事が返ってきた。
「セーフティカー明けの1周目は、絶対に入りたくなかったんです。なぜかというと、一昨年のSUGOのレースのときにSC中にピットインして、“渋滞”を食らったから」
スーパーGTの歴史のなかでもレアなシーンとなった、15年のセーフティカー中のピットインによる“渋滞”。SC中のピットインを禁じるレギュレーション制定のきっかけになった出来事が伊藤監督の脳裏にあったということだ。ドライバーの新田守男は、いち早くスリックに替えることを主張したというが、それをおさえてまでのあのタイミングが奏功したということだ。
2台は特にズルをしたわけでもなく、レギュレーションどおりに戦った結果。もちろん2台が表彰台に立つためのペースが必要で、それを見事に達成した部分もあるが、まさに運が左右したのが、今回のスーパーGT第4戦SUGOだったということだろう。
今季は岡山、オートポリスで不運なクラッシュを喫したFerrari 488 GT3だが、伊藤監督は「今まで運が悪かったんだから、その分のツケがちゃんと返ってきたってことでしょう」という。また、福田エンジニアも「運です(笑)。2015年の鈴鹿1000kmなみの“神ってる”レースでした。ウチはアンラッキーが続いていたので、たまにはこういうのもないとね(笑)」と、今まで波に乗れなかった2台に、気まぐれなSUGOの女神が微笑んだのかもしれない。
また、「エンジニアとしては、SCが出るのも予感できていたし、展開を読めていたので、満足度がすごく高い(土屋監督)」「流れとしてはすべてうまくいっていた。でもこんなこともあるよね(河野エンジニア)」と、こればかりは仕方がない……という様子だった。
とは言えファン、そして参加している側からすると、やはり“運頼み”ではないレースもやはり見たいところだろう。そうなると必要になるのが、アクシデント発生時の公平性と安全性が高いフルコースイエロー(FCY)システムの導入となる。今回話を聞いた全員が「FCYは必要」だと口を揃えた。
FCYの導入は現在スーパーGTでも検討が進められてはいるが、サーキット側に設備が必要で、課題は多い。運が左右するレースもスリリングではあったが、今回はFCYの必要性も大いに考えさせられるレースだったと言えるだろう。