世界グランプリライダーとなった鈴木が駆ったマシンはインドのマヒンドラだった。ホンダやKTM勢に比べると劣勢のマシンで鈴木は1年目に9ポイントを獲得しランキング28位。2年目の2016年には19ポイントを獲得してランキング27位を得る。
そして、2017年にはSIC58スクアドラ・コルセに移籍する。このチームは故マルコ・シモンチェリの父親、パオロ・シモンチェリ氏が息子の遺志を継いで立ち上げたチームで、鈴木はホンダのマシンにスイッチした。
2017年開幕前の冬の時期にはシモンチェリ家に居候したという鈴木は、1年目からチームに溶け込み、パオロ氏との信頼関係を築く。2017年には日本GPの4位を最高位にランキング14位と躍進。2018年もランキング14位を獲得する。和製イタリア人と名乗るほど、チームとイタリアに溶け込んだ鈴木は、Moto3クラスのトップライダーのひとりに成長し、表彰台と勝利まであと一歩に迫った。
そして、SIC58スクアドラ・コルセで3年目となる2019年シーズン。3戦目のアメリカズGPで鈴木はトップを快走。このレースは惜しくも転倒に終わってしまったが、続くスペインGPでグランプリ初表彰台となる2位に入賞。パオロ氏を歓喜させた。
しかし、その後のレースでもトップ集団に加わるものの、巻き込まれての転倒や自身のミスによる転倒もあり、なかなか結果につながらないレースが続いた。
そして、迎えたのがサンマリノ&リビエラ・ディ・リミニGPだった。舞台となるのはミサノ・ワールドサーキット・マルコ・シモンチェリ。マルコ・シモンチェリの名前を冠したサーキットで開催されたチームのホームレースだ。
初日のフリー走行はあまりフィーリングがよくなかったという鈴木は総合13番手で初日を終える。2日目のフリー走行3回目でも15番手に止まり、フリー走行総合では17番手と予選Q2直接進出を逃した。しかし、予選Q1をトップ通過して臨んだQ2ではトップタイムを記録。グランプリ初ポールポジションを獲得した。
「チームのホームグランプリで初ポールポジションを獲得することができました」と鈴木は予選後にコメントする。
「まずは、がんばってくれたチームに感謝します。今日はFP3でコース上が混雑してちゃんと走ることができず、Q1からの予選となりましたが、Q1をいいタイムで通過し、Q2でもトップタイムをマークすることができました」
「PP獲得はラッキーな面もありますが、マシンが完ぺきな状態ではなく、決勝に向けてまだやらなくてはいけないことがあるので、明日の決勝に向けて少しでも前進できるようにしっかりとデータを分析したいです。今日はまだ予選なので、明日の決勝で同じ結果を残せるようにがんばります」
そして迎えた決勝レース。鈴木はスタートからレースをリードすると、終始トップ争いを展開する。レース後半を前に一度はトップから下がったものの、ライバルの走りを見極め、終盤に再びトップに立つと、グランプリ初優勝を達成した。
「チームのホームグランプリ、そして、シモンチェリさんの名前がついたサーキットで初優勝を達成できて、本当にうれしいです。初表彰台に立ったスペインGPもうれしかったレースですが、それとは比べられないほど最高の気持ちでした」
「いいスタートが切れて、2位以下にリードを広げたときは逃げられるかと思いました。しかし、自分のミスもあり追い上げられて集団になりました。後半、後ろに下がったときに、前を走るふたりもタイヤがきつそうだったので、とにかく前に出ていこうと決めました。本当に最高のレースになりました。チーム、スタッフ、そして応援してくれたファンに感謝したいです」
パルクフェルメではパオロ氏と抱き合って勝利を喜び、チームのメンバーはもちろん、大勢のイタリア人から祝福を受けた鈴木。アラゴン、タイの次には、鈴木にとってのもうひとつのホームレースとなる日本GPが控えている。
