更新日: 2020.11.22 00:02
スズキに20年ぶりのタイトルをもたらしたミル、若きライダーが持つ“強み”/MotoGP第14戦【レースフォーカス】
こうした冷静なシーズンの戦いぶりや落ち着きを失わない点が、ひとつにはミルの武器ではないだろうか。「僕は精神的に強いと思う」と自身でも語っていたミル。とはいえ、タイトル獲得がかかるレースのグリッド上では、さすがにプレッシャーを感じていたと明かした。
「大事なのは、落ち着いて見えること、プレッシャーがないように見えることだ。でも、落ち着いてなんかいなかったし、プレッシャーだってあった。すごく緊張していたよ」
そう語るミルは「でも、実のところ、僕たちにはコース上だけではなく、家でもウイルスにかからないようにするというプレッシャーがあった。特にマネジメントが難しかった」と、シーズン全体で感じていたもうひとつの“プレッシャー”についても語った。
バレンシアGPは「このレースは悪夢だったよ、シーズンを通してとても苦しんだレースだった」と語るほど、苦しいレースだったらしい。それでも12番グリッドから5つポジションを上げ、そして7位でチェッカーを受けた。その結果は、ミルにMotoGPチャンピオンの称号をもたらした。ミルの精神的な強さについては、ブリビオ氏も言及している。
「今シーズン、ジョアンが精神的にどれほど強いのかを知りました。彼はいつも、とてもリラックスしていて、常にレースに集中していました。ただ、おそらく今日は少し違ったみたいですけどね。ジョアンは常にいいレースをすることに集中し、表彰台、そして優勝に挑戦してきました」
ミルがライダータイトルを決めただけではなく、バレンシアGPの結果によりチーム・スズキ・エクスターはチームタイトルを獲得した。2011年をもってMotoGPへの参戦を休止し、2015年に世界最高峰の二輪ロードレース選手権への挑戦を再開したスズキ。2020年シーズンが始まる前の5月上旬、オンラインで開催されたブリビオ氏の取材会で、彼はシーズンの展望を尋ねられ、そのなかで「スズキが驚きの成績を出すことを期待しますが、同時にそれが驚くべきことではなくなることも望みます」と語っていた。
そして、ブリビオ氏が期待したように、今季、スズキのライダーが表彰台を獲得することはセンセーショナルなニュースではなくなった。そればかりか、ライダータイトルとチームタイトル獲得という結果を手にすることに成功したのだった。残るはコンストラクターズタイトル。最終戦ポルトガルGPでは3冠の期待が高まっている。

