それでは横置きFFベース+4WDシステムでどうやってそれを実現したのか、少しだけレクチャーも受けました。
まずあったのがボディの軽量化。3ドア化してルーフにはSMCという技法(炭素繊維を織物でなくモザイク状に配合して焼成。形状自由度が高い)のカーボン素材を採用。両ドアとエンジンフードはアルミ製となっており現行との比較でボディだけで38kg軽量化。前後重量配分適正化のためにバッテリーも後部に搭載したそうです。
そして3気筒という新エンジンの選択もパッケージングに大きく貢献していることが分かりました。WRカーの場合には同じ1.6気筒ターボでも4気筒であり、WRCイメージを売りにするなら4気筒の方が有利とも感じますが、3気筒には大きなメリットがあるのです。
3気筒の場合、4気筒と違い排気干渉がなくエキゾーストが短くできるそうです。4気筒で排気干渉を消すためには4-2-1レイアウトが必要となり、それだけのエキゾースト長も必要となります。
3気筒の採用によって進行方向後側に位置するエキゾーストが短縮できると、ターボとの距離も詰めることが可能となり省スペース化が実現できます。
排気系をコンパクトにまとめられた分だけ、バルクヘッドとの間に空間が生まれてエンジンを後傾することが可能となり、エンジン横置きレイアウトながら前後重量配分を適正化できるのです。
この手法自体はWRカーと同様であり、量産車であっても4気筒でなく3気筒だから実現できたものなのです。
4WDシステムのセンターデフに相当する部分はリヤデフの直前にレイアウトされており、『高応答カップリング』を採用。クラッチ機構を電磁式でコントロールして、理論上はトルク配分0-100のFRにも、100-0のFFにもセッティングが可能だそうです。
GRヤリス プロトタイプでは、センターコンソールのダイヤルで前後トルク比が変更できて、ノーマルモードがF/30:R/70、スポーツモードがF/40:R/60、トラックモードがF/50:R/50となっていました。
スキッドパッドでの試乗では3モードを試してスポーツモードが一番乗りやすく感じました。ちなみにグラベルではトラックモードのみで試乗しました。テストではWRCドライバーも試乗しており、ドライバーによって好みが分かれるそうです。
GRヤリスにはWRカーのホモロゲーションモデルとしての重要な役割もあります。設計段階で、WRカーの開発とWRC参戦チーム運営を担うトミ・マキネン・レーシングからの要望も盛り込まれており、ルーフ高の低減、ウイング効率の高いルーフ形状、ボディへの軽量材の採用、3ドアボディも要望事項だったそうです。
さらにはサイドメンバーの設計やサスペンションストローク量などにまで要望は及んだそうです。
試乗も技術説明も発表前に特別に実施されたものなので、大変短時間ではありましたが、少し触れて、聞いただけでもよくぞここまでとの開発の熱意とそれに見合う内容が感じられました。
技術と情熱てんこ盛りのGRヤリスがいったいいくらで発売されるのか、その発表は東京オートサロン2020の目玉のひとつと言えるでしょう。