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クルマ ニュース

投稿日: 2020.01.22 15:08
更新日: 2021.02.10 16:16

高まるメーカーのフォーミュラE熱。ドイツ名門が躍起になって参戦する真の理由【大谷達也のモータースポーツ時評】

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クルマ | 高まるメーカーのフォーミュラE熱。ドイツ名門が躍起になって参戦する真の理由【大谷達也のモータースポーツ時評】

 メルセデス・ベンツが先ごろ発売したEQCが快適性や安全性を売り物にしているのは当然のことです。

 おそらく彼らは、そうした努力を補強するためにフォーミュラEに参戦しているのでしょう。フォーミュラEで成功を収めて、自分たちがEV技術でも最先端にあることを世に知らしめたい。

 もしくはエコカーとして認識されることの多いEVでレースを行うことにより、そのダイナミックな走りを印象づけたい。そんな思いがフォーミュラE参戦の背景にあるようです。

 とはいえ、EV市場はまだまだ極めて小さいのが現状です。2018年のグローバルなEV市場はおよそ130万台でしたが、ほとんどのドイツ・メーカーにとって、EVの売り上げ比率は1%に満たない数字。その程度の少量生産モデルのために、巨額なプロモーション予算は割けません。

 フォーミュラEの主催者は当初よりこのような状況を鑑み、メーカーのコスト負担を最小限に抑える努力をしてきました。各チームが独自に開発できる領域をドライブトレイン系に限り、車体やバッテリーなどをワンメイクとしているのはこのためです。

 また、市街地でレースを行なったり、様々なイベントと抱き合わせでレースを催すのは、既存のモータースポーツに関心のなかった層を呼び込むためと考えられます。

 EVの購入を検討するのは、長年のモータースポーツ・ファンよりは環境問題などに関心が強い層が中心でしょう。フォーミュラEの主催者は、この辺を見越してイベントの性格を決めていると考えられます。

 今後、フォーミュラEの焦点は各メーカーがいかにして自分たちのブランド性をアピールできるかに移ってくると予想されます。この場合、当然コストは増大しますが、それに見合ったパフォーマンスがプロモーション面で発揮されれば、自動車メーカーはフォーミュラEに留まるでしょう。

 果たして、フォーミュラEの人気が高まるのが先か、それとも自動車メーカーがシリーズへの投資に耐えられなくなるのが先か……。今後しばらくは主催者側と自動車メーカーのガマン比べになりそうな気がします。

メルセデス・ベンツEQC
メルセデス・ベンツEQC
アウディeトロン
アウディeトロン
2019/20年シーズン、アウディとBMWに続きポルシェとともに新規参入したメルセデスAMG
2019/20年シーズン、アウディとBMWに続きポルシェとともに新規参入したメルセデスAMG

【Profile】大谷達也 Tatsuya Otani/自動車ジャーナリスト

エンジニア職を経験後、自動車雑誌編集部で新車情報やモータースポーツに関する記事を編集・執筆。2010年からフリーランスとなり、ハイパフォーマンスカーの試乗記事の執筆を中心に、自身の経歴を活かした環境技術や最新モデルの新技術の解説にも定評がある。モータースポーツ記者会会員。


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