ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE
第4戦SUGOスーパー耐久4時間レース
開催地:スポーツランドSUGO(宮城県)/3.586km
7月6日(予選・決勝)天候:晴れ
コースコンディション:ドライ観客数:3900人

一時はトップも走行、僅差での3位だったものの、大いに収穫を得たSUGOラウンド

 2025年もaprは、全7戦で争われるスーパー耐久シリーズに、FIA-GT3で競われるST-Xクラスに臨む。DENSO LEXUS RC F GT3をレギュラーとしてドライブするのは永井宏明選手と蒲生尚弥選手、小林利徠斗選手、そして嵯峨宏紀選手。

 なお、今大会は永井選手が仕事のため、出場できず。そこでトヨタとの相談により、推薦してもらった鵜飼龍太選手をAドライバーに起用。鵜飼選手は、今年は出場していないものの、2年連続でST-Xクラスのチャンピオンに輝いたROOKIE RacingのAドライバーであり、トヨタの開発ドライバーでもある。かつての強力なライバルが、頼もしき仲間として加わる格好だ。

 シリーズ第4戦の舞台はスポーツランドSUGOで、4時間での戦いとなる『SUGOスーパー耐久4時間レース』はこの布陣で臨む。前回の富士24時間レースは悪天候と不運に翻弄された一戦だった。スタート直前の雷雨で1時間ディレイに、さらに1時間減の23時間での戦いとなり、セーフティカー(SC)スタートでの開始に。戦闘モードに入って間もなくのコースアウトが発端となって、マシントラブルが相次いだ。そのつど入念に修復されるも、多発したFCY(フルコースイエロー)やSC、果ては赤旗中断まであり、挽回の機会すら与えてもらえなかった。

 ともあれ過酷なレースだったのは間違いない。そんな状況において戦線から離脱したライバルもあり、4位で完走を果たせた意義は極めて大きい。絶対にリタイアしない、という執念を実らせたからにはラスト4戦、勝ちに行かなくてはならない。

公式予選 7月6日(日)8:55〜

 今大会は2グループ開催で、予選と決勝が1日に集約され、ST-Xクラスはグループ1として日曜日に行われる。しかし、開幕戦のもてぎでは設けられていた土曜日のフリー走行がないため、金曜日2回の専有走行までに準備を整えなくてはならない。

 木曜日から走行を開始し、まずは蒲生選手によってセットアップが進められ、同時に鵜飼選手のマシン習熟が行われる。この日のベストタイムは、蒲生選手が1分23秒435で、鵜飼選手が1分24秒233。金曜日最初の専有走行も、このふたりで周回が重ねられ、それぞれ1分22秒048、1分22秒954にまで短縮を果たす。

 2回目の専有走行は蒲生選手、小林選手、嵯峨選手の順でドライブしたが、途中から雨が降り始め、路面を瞬く間に水浸しにしてしまう。蒲生選手が1分23秒434を、かろうじてドライ路面で走れた小林選手が1分23秒646を記すも、嵯峨選手はドライ路面を走れぬまま、本戦に挑むこととなった。

 さて、普段はAドライバーとBドライバーのタイム合算で決勝のグリッドを決めるが、昨年からSUGOでは独自の予選システムを採用しており、ノックアウト方式となっている。ただし、スーパーGTでお馴染みの方式とは若干異なり、BドライバーがQ1を走り、上位チームがQ2Aに、下位チームがQ2Bに回ってAドライバーが走るというもの。

 ちなみにボーダーは参加台数の50%ということで、3台のST-Xクラスは上位2チームがQ2Aを走る。気になるのは、ST-Xクラスに限り、Q1、Q2ともに計測時間は5分しか用意されていないこと。ほぼワンアタックでの勝負となる。

 その予選は、直前に行われた走行会でアクシデントが発生。ストレートから1コーナーにかけてオイルが撒かれたため、その処理に時間を要し、当初の予定より25分遅れでの開始となった。先に走行したクラスでは、路面状態の向上を待ってコースインを遅らせる車両も少なからずいたが、ST-Xクラスは先に触れたとおり計測は5分のみとあって、そうはいかない。

 気温は31度、路面温度は44度と、7月上旬とは思えぬ暑さのなか、Q1に臨んだ蒲生選手は、2周をウォームアップに充てて一発勝負に討って出る。1分21秒737はレースウイークのベストタイムだったが、コンマ5秒及ばず3番手に。Q2Bに臨んだ鵜飼選手は、コースを独り占めして1分23秒040をマーク。DENSO LEXUS RC F GT3は決勝を3番手でスタートすることとなった。

 この後に行われたC・Dドライバーセッションでは、小林選手が1分22秒810を、そしてようやくドライ路面で走れた嵯峨選手が2分23秒101をマーク。いずれもユーズドタイヤで、決勝に向けた最終チェックを行なっていた。

鵜飼龍太選手

「時間は短かったですけど、このクルマには初めて乗るので、木曜日からチームのエンジニアや、他のドライバーの方々から、しっかりアドバイスもらいながら、なんとかなったかなと。ちょっとミスもありましたが、クルマの特性もつかめていますし、決勝に向けては頑張れるかな、と思っています。このチームは本当にみんなクルマが好きで、和気あいあいとしています。クルマのセットアップだけでなく、それ以外の話でも、自分がすごく勉強になっています」

蒲生尚弥選手

「5分だけなのは、みんな条件は一緒ですから。でも、自分の方でも、もうちょっとタイヤの温めとかうまくできたと思うので、まぁ、しょうがないですね。そんなに予選は重要じゃないんで。決勝は頑張ります」

小林利徠斗選手

「レースに向けたテストをしました。いつも特別、何か変なこともないので、いつもどおりもうちょっとセットなり、走り方なり見つめて、レースでもそうですね、やれるだけのことをやるのが最優先だと思います」

嵯峨宏紀選手

「決勝に向けたセットだと思うんですけど、ドライは今日、初乗りで。初見としては、もっと曲がって欲しいので、ちょっと対策しなきゃいけないな、という感じがします。ここで曲がらないのは致命的なのでトラクションはあるので、そこをうまく活かしていけば、レース後半はいいのかなという感じがします。味付け的には、フロントがもう少し欲しいかな、という感じです」

金曽裕人監督

「5分のアタックなので『正直きついね』って。フロントタイヤが他車より大きいから、温まりきらないのは想定内。でも、そんなに大きい差をつけられているわけではないので、そこまで気にしていませんが『だよね!』という感じです(笑)。鵜飼選手は期待どおり。このレベルで走ってくれれば、まったく問題ありません」

「決勝は確実に走って、しっかりポイントを獲って帰ります。フロントタイヤが逆に大きい分、余裕があるから、そこはアドバンテージなので、タイヤが温まり切ってからの勝負になりそうです。3スティントはたぶん難しいから、4スティントで行くと思います。みんなでプッシュ、プッシュって感じです!」

DENSO LEXUS RC F GT3
2025スーパー耐久第4戦SUGO DENSO LEXUS RC F GT3(鵜飼龍太/蒲生尚弥/小林利徠斗/嵯峨宏紀)

決勝レース 7月6日(日)12:40

 今大会は2グループ開催で、4時間レース。グループ1は5クラス合わせても21台での戦いとなった。60台が一斉に走った富士24時間とは対照的に、トラフィックが少なくなること、そしてクラス間の速度差が緩和されることで、土曜日に行われたグループ2決勝はセーフティカーどころかFCY(フルコースイエロー)さえ一度も出ず。同様にグループ1決勝でも、波乱のないことが期待された。

 気温は30度、路面温度は43度と、予選と同じく過酷な条件のなか、レースはスタートを切る。DENSO LEXUS RC F GT3のシートを最初に託された小林選手は、いきなり1コーナーで仕掛けるも前に出るまでには至らず。しばらくするとトップは徐々に逃げていくも、2番手の車両には遅れず続く。

 小林選手の前を行くのは、トヨタのレーシングスクール『TGR-DC RS』の校長でもある片岡龍也選手。生徒だった小林選手に、あたかも『こうすれば抜かれないんだよ』と指導しているかのように行く手を阻み続ける。その差は絶えず1秒を切ったまま周回は重ねられていき、緊張感に満ちたバトルは片岡選手が先にピットに入った44周目まで続けられた。

 対して、DENSO LEXUS RC F GT3の最初のピットストップは52周目。スタートから1時間12分経過したところで蒲生選手に交代する。トップのピットストップは、それより2周後。その間に蒲生選手は2番手に浮上し、直後にS字脇でストップした車両があってFCYが導入されるも、どのチームも交代を済ませたばかりとあって活用できなかった。

 蒲生選手はトップと等間隔で周回し続け、相手はきっちり4スティントと定めていたのだろう。ほぼ2時間経過したタイミングでピットイン。これにより、86周目から蒲生選手はトップに躍り出る。そして残り1時間半を切ったタイミングとなる105周目に、鵜飼選手にバトンタッチ。この間に3番手となったDENSO LEXUS RC F GT3ながら、3台がそれぞれ異なる戦術、ピットタイミングとしているから、なかなか先が読めない状況ではあった。128周目に再びトップに立つも、そのまま最後まで走り続けることはできない。

 残り30分を切った148周目、最後のバトンは嵯峨選手に託された。ここで給油だけでなく、タイヤも4本交換してコースに送り出される。さぁ、どうだ? 順位は3番手、そしてトップからは16秒の遅れを取っていた。しかし、その差を徐々に嵯峨選手は詰めていく。その最中に2回目のFCYが。わずか4分だったが、勢いに乗った嵯峨選手には長く、長く感じられたことだろう。

 その後も差をどんどん詰め続けたDENSO LEXUS RC F GT3だったが、スタートから4時間経過してトップとは5秒、2位とは2秒の僅差でチェッカーとなり、最後まで意地を見せつけた。次回のレースは3週間後の7月26〜27日に、オートポリスで1グループ開催の5時間レースとして行われる。SUGOで3位完走を果たし、着実にポイントを積み重ねていることが、最後に効いてくることを期待したい。

鵜飼龍太選手

「蒲生くんが中心となってセットアップしてくれたことで、フリー走行や予選よりも、決勝ではクルマのバランスが良く、けっこう走りやすかったです。けれど、やっぱり自分もクルマに、もう少し合わせ切れれば良かったな、というところもたくさんあって、ちょっと申し訳ないなと思うところもあります。RC FのGT3でレースができたことで、自分の知見も貯まって勉強できました。これから、このチームが活躍してくれることを願っています」

蒲生尚弥選手

「最初のペースが良くて、最後ちょっと、ギリギリ届かなかったですけども、レースするごとに、だんだんまわりとの差も縮まって、今回はすごくいいレースができたと思います。次につながるレースになったかな、と思います。良かったです。また少しずつ良くなればいいな、と思います」

小林利徠斗選手

「ラップペース的には、こっちの方が少し速いかなと思うところがあったり、あと『片岡先生』はさすがで、付け入る隙はあるかなと考えたりしていたんですけどオーバーテイクは無理でした。クルマ的にも思った以上にパワーも的にも加速が遅くて。コーナーちゃんと決めても、スリップストリームで抜きに行くって動作ができないまま、1スティント終わってしまったので、ちょっと決め手に欠ける感がありましたね。そのペースが良かったのはいいところでもありますし、ペースがあった分をちゃんと活かしきれなかったという点においては、反省すべきところではあるので、またいろいろ考えて次戦に臨みたいと思います」

嵯峨宏紀選手

「あと3周欲しかったですね、FCYもなかったら。タイムは詰めたけどFCYにて、詰めただけで抜けずに終わっちゃったというレースでした。戦略も今回、3ストップ勢と2ストップ勢に分かれたし、追いつけば抜ける自信はあったんですけど……。自分の中で『悔しい』とか、『追いつきたい』って気持ちが湧いて、そういうメンタル的にポジティブなレースができました。これをバネにオートポリスで勝てるようにしたいですね、次も頑張ります」

金曽裕人監督

「最後、タイヤ換えてプッシュしてやろうと思っていて、そっちの方が最後に2台抜いて優勝できたら見ごたえもあるし、他はロングスティントやっているから。こちらは燃料的も軽いし、宏紀に『ニュータイヤで予選のつもりで20周プッシュしてこい』って。残り10分で出たFCYが作戦的にかなり余計でした、この分が稼げていたら……」

「ブロックされて終わっていたかもしれませんが、1周2秒近くの速さは間違いなくあったので抜けるはず。そういうレースをやりたいと思っていたから残念。でも、久しぶりに最後の最後まで、レースできていたし『まぁ、いいんじゃない』っていう考えと、僅差で3位だけど、『だいぶクルマ的には近いところに来たかな』という感じはしています」

「助っ人で加わってくれた鵜飼さんは、安定していました。速さやうまさもあったし、とても感謝しています。次のオートポリスは、マシン的に高地でエンジンパフォーマンスも不利、コースレイアウト的にアンダーステアが顕著で、一番苦手ですが、なんとかしてみせます。今回、いい方向が見えてきたので、毎年、オートポリスでは悩み以外、何もなかったんですけど、今年はもう少しいいところに行けそうな気がしています!」

DENSO LEXUS RC F GT3とTKRI松永建設AMG
2025スーパー耐久第4戦SUGO DENSO LEXUS RC F GT3とTKRI松永建設AMG GT3の争い

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