#13 ENDLESS GRヤリス
参戦クラス:ST-2クラス
Aドライバー:花里祐弥
Bドライバー:石坂瑞基
Cドライバー:伊東黎明
Dドライバー:岡田整
監督:中村稔弘

 富士24時間では3連覇を狙った#13 ENDLESS GRヤリスだったが、ABSにトラブルが発生してしまったこともあり3位でフィニッシュ。ST-2クラスのシリーズランキングは#72 OHLINS CIVIC NATSが59ポイントでトップとなっており、#13 ENDLESS GRヤリスが42ポイントで続いている。3位は#95 SPOON リジカラ CIVICの41ポイント、4位の#225 KTMS GR YARISも38ポイントと、ST-2クラスは接戦の様相を呈している。SUGOではポイントを積み重ね、トップとの差を詰めつつ2位以下の混戦から抜け出したい。

 今期から後期型にマシンチェンジをした#13 ENDLESS GRヤリス。フロントサスペンションのマウント方法変更や、ボディ剛性の変化など足回りの変更点が多いため、セッティング面で煮詰める余地は多い。また電子制御の介入も変わっているため、今回はアジャストを進めてマシンを持ち込んだ。依然シビック勢には速さで及ばないものの、ここまでは堅実なレース運びで連続表彰台を獲得してきた。今回も4時間のレースを着実に戦い目指すは表彰台の頂点だ。

 今回の予選ではノックアウト方式が採用。まずBドライバーがドライブし、クラス7台中の上位4台はQ2Aに進出。下位3台はQ2Bに進む。Q2はAドライバーがドライブし、Q2AとQ2Bのそれぞれの中で順位を決める。Q2Aに進むと予選順位は1~4位を、Q2Bの場合は5~7位を競うことになる。

予選

【Q1】B 石坂瑞基 1’37.936 クラス4番手
【Q2A】A 花里祐弥 1’38.482 クラス3番手
C 伊東黎明 1’32.426 クラス2番手
D 岡田整 1’32.778 クラス3番手
→予選結果3位/7台中

 今回ST-2クラスは土曜日1日の中で予選と決勝が行われるフォーマット。予選は朝8時30分から行われた。コース上は予選の30分ほど前から雨が降り始めたため、レインタイヤを装着してBドライバー石坂がコースイン。

 石坂がアタックしたQ1ではクラス4番手タイムを記録。金曜のフリー走行では良いタイムが出ていなかったが、上手くウエット路面でのアタックをまとめられたことでQ2Aに進出となった。

 Q1の直後に行われたQ2A。花里も同じくレインタイヤでコースイン。コース状況の回復を待って一旦ピットインしてからアタックして1分38秒6をマークした。しかしラストアタックに賭けた花里は最終ラップに再度アタック、1分38秒482をマークして3位に浮上し決勝は3番手からスタートとなった。

 CドライバーとDドライバーはまとめて20分の走行時間があり、伊東と岡田はともにスリックタイヤで走行。Cドライバー伊東は1分32秒4をマークし2番手タイム、岡田も1分32秒778をマークし順調な仕上がりとなった。

決勝

決勝結果:2位

 4時間の耐久レースとなる決勝。スタートドライバーは石坂が務め、花里、伊東と繋ぐプランとなっており、ピット回数を2回に抑えることでピットロスを減らす作戦を採用した。しかしながら4時間で約150周の周回を予定している一方で、燃費を鑑みるとフルタンクからギリギリ50周走行ができるかどうか。計算上は各ドライバーが50周ずつ走行すれば2回の給油で足りるが、気温が高くなることで燃費が悪くなり、途中で燃費走行を強いられる可能性もある。ピット回数を3回へ増やしてしまうと勝負権を失ってしまうことから、消費燃料をセーブしながら2回ピットでの完走を目指す。

 スタート時は雨も上がり、晴天のもと12時38分にレース開始。石坂は#95 シビックの猛追を抑えるが2周目にパスされて4位となってしまう。一方で当初ギリギリかと思われた燃料は、走行中の燃費情報からの再計算により全開走行でも1スティント50周持つ目途が見えたため、石坂はフルプッシュを継続。ガソリンが減りマシンが軽くなってきた終盤には1分33秒5のベストタイムをマーク。3位までわずかな差を保ったまま約90分の予定スティントを消化。

 50周目にピットインして花里へドライバー交代。タイヤはフロントのみ交換。ピット時間を短縮してコースに復帰する。熟練の自社メカニックを中心としたピット作業により、他チームよりも作業を完了。3位へポジションアップに成功し、花里は順調に周回。花里は昨年夏のレースで熱中症気味になる場面があったが、今回から新導入したクールスーツの活躍もあり安定して走行。本人も最後まで集中力を保ってプッシュできたという。

 101周目、2回目のピットインで花里から伊東に交代。ここでもタイヤはフロント2本のみ交換。リヤタイヤは無交換で完走を目指す。ピット作業は他チームに比べて15秒速く、一気に上位との差を詰める。ここでトップだった#95 シビックがマシントラブルでピットイン、事実上の2位へ順位を上げることとなった。伊東は1分33秒1のチームベストラップを刻みながら、トップの#225 GRヤリスを追い上げていく。残り時間70分でトップとの差は約5秒。

 115周目、追い上げてきた#72 シビックに抜かれ3位へ落ちるも116周目に#225 GRヤリスを抜いて2位に復帰。トップ#72 シビックとの優勝争いとなる。あと約50分、トップに立てるか。

 ペースは#72 シビックの方が良く、ジリジリと離されていく展開。2Lターボエンジンのシビックは1.6LターボエンジンのGRヤリスに比べて明らかにストレートスピードが速い。こちらもコーナリングスピードの高さで対抗するが、アップダウンの大きなSUGOではホームストレートで大きく差をつけられてしまう。

 残り時間30分でトップ#72 シビックと#13 ENDLESS GRヤリスとの差は約6秒。ペース的にはほぼイーブンで6秒差は変わらない。残り時間10分でトップとの差は8秒。ラップタイム的には互角。あとは互いにガソリンが持つのか。残り2分で6秒差まで追い詰めるが届かない。残り1分、伊東渾身のペースアップで約5秒まで詰めていく。

 16時38分、4時間レースのチェッカーフラッグが振られる。一時はトップも見えただけに2位でのフィニッシュは悔しさもあるが、チームそしてドライバーとしてまったくミスのないレースであり、現在考えられるなかでベストな結果となった。

 シリーズランキングは#72 シビックが富士24時間からの2連勝により、79ポイントでトップを独走。2位#13 ENDLESS GRヤリスは57ポイントと離されてしまっているが、一方で3位以下とはポイント差を付けることが出来た。次戦は7月末のオートポリス。昨年は2位、一昨年は優勝と相性の良いサーキットで今シーズン初優勝を目指す。

Aドライバー 花里祐弥

「SUGO大会は、車両の大幅アップデートを行って参加する運びとなりました。まずブレーキでは、2種類の新しい材質のパッドをトライしました。ひとつ目は前戦の富士24時間で投入予定だったフロントパッドで、こちらは前戦のレース中のトラブルにより使用ができなかったことから、1レース遅れての投入となりました。決勝での使用には至りませんでしたが、新たな耐久レース向け材質の開発に向け、さまざまなフィードバックが得られました」

「ふたつ目はGT4車両向けに開発しているパッドです。こちらは車重の面からGRヤリスにおいてはブレーキの効きが強すぎる傾向でしたが、ブレーキリリース時のフィーリングの良さも確認できました。最終的に今回のレースでは富士24時間で使用した従来品をチョイスしましたが、ふたつの新たな材質をテストできたことは、開発面で大きな収穫となりました」

「次に駆動系としてリヤデフをOS技研のLSDを1.5WAYから2WAYへ変更を行いました。後期型GRヤリスではブレーキング時のマシンの制御も変わっており、その制御の介入に悩んでいました。また制御が介入しないようリヤのブレーキパッドには摩擦係数の低いものをチョイスしていました。そこで内輪外輪での車輪速差を無くす目的でLSDを2WAYへ変更したところ、実際にヨーモーメントの発生がなだらかになったことで制御が介入しにくくなり、若干ボトムスピードを上げることができました。また併せてリアパッドをMX72に変更したことで、ブレーキリリース時の旋回が良くなりアンダーステアを軽減することもできました」

「最後にサスペンション関係として、渡海自動車と新規共同開発を行ったダンパープロテクターを投入しました。ダンパーのピストンエンドに使う物で、シムの動かし方を調整できるパーツです。テスター上では変化が出ないパーツですが、リバウンドの追従とバンプの立ち上がりが穏やかになることで、SUGOの高い縁石にもドライバーが対応できる様になりました。こちらは市販化に向けて今シーズン、来シーズンとテストをしていく商品ですのでユーザーの皆様も楽しみにして頂けますと幸いです」

「レースの内容としては、2ピット作戦を実行する為にエンジニア、メカニック、ドライバーそれぞれが職務を全うしたことで、順位を上げ2位でレースを終えることができました。優勝にはあと一歩でしたが、レース参戦以来、セットアップや商品開発、レース展開など1番内容のあるレースができたと感じました。あとは優勝するだけですので、皆様の応援に応えられるよう頑張ります。そしてお客様が喜んで頂ける様な商品造りにも励んでいきますので、引き続き応援よろしくお願い致します!」

Bドライバー 石坂瑞基

「開幕戦から後期型GRヤリスの電子制御に悩まされてきましたが、今回のアップデートで大きく前進しました。リヤデフを1.5WAYから2WAYに変更。減速時の車輪速差を小さくし、制御が介入する条件に入らないようにするのが狙いでした。思惑通り制御の介入が非常に少なくなりました。その分、進入での旋回感が弱くなりましたが、リヤブレーキパッドの効きを上げることでバランスを取ることができました」

「ダンパーもアップデートし、路面とタイヤの接地感、追従性が増してグリップをより引き出せるようになりました。この追従性の良さから縁石の走破性も向上し、縁石をたくさん使うSUGOでは大きなメリットでした」

「レースは最初から最後までフルプッシュするタフなレースとなりましたが、誰もミスすること無く持っている力を出し切れたと思います。結果はあと少しで優勝にも手が届くところにあり悔しさもありますが、週末通して大きく前進できたので非常にポジティブです。次戦はチームとしても得意のオートポリスなので、なんとしても優勝できるよう頑張ります」

Cドライバー 伊東黎明

「昨年のSUGOのレースは3号車ENDLESS GR86の助っ人でしたので、GRヤリスでのSUGOは2年ぶりの参戦となりました。開幕戦から問題視している制御については、チームが改善方向に向けてアップデートをしてくれたおかげで、走り出しからその点については気にならず、セットアップを詰めていくことができました」

「予選はウエットコンディションになった事により予想していたよりもいいグリッドで終える事ができました。決勝はラストを担当し、3台によるトップ争いが起きましたが、ライバル勢のストレートの速さには太刀打ちできずあと一歩の2位となりました。次戦のオートポリス大会はまたすぐに控えているので、ここから逆襲をかけられるよう再びチーム一丸となり意識を高めていきたいと思います。応援ありがとうございました」

Dドライバー 岡田整

「今回車両の大幅変更が施され、走り出しから今まで悩んでいた制御の部分が改善されました。今回は2ピットの作戦でしたので、乗車予定はありませんでしたが、専有走行などではロング走行でのチェックを行わせて頂き、今回の車両のアップデートを感じることができました」

「暑い中、いつも旗を降ってくれているエンドレス伝統の旗振隊や、現地まで応援に来て頂いている皆様に感謝です。ドライバーもチームもミスなく繋ぎ、2位表彰台。沢山の応援ありがとうございました。次戦も引き続き応援よろしくお願い致します」

監督 中村稔弘

「今回は車両にさまざまなアップデートを施しましたが、ダンパーが良くなって縁石を使えるようになったのが大きなプラス要素です。制御面でも良い方向に向かうことができました。ブレーキキャリパーも富士24時間で使用した6POTをベースにさらに軽量に仕上げたもので、パッドも同じもので引き続きテストしましたが問題なく走ることができました」

「予選では突然のウエット路面になりました。普段3号車のENDLESS GR86で戦ってくれている坂裕之選手が応援に来てくれましたが、坂選手は先日のGR86/BRZ Cupで既にSUGOの新路面を走行していました。不安定なコンディションでしたが、走行ラインのアドバイスをもらえたこともあり良い順位を獲得できました。坂選手には本当に感謝です」

「決勝では2ピットで優勝を狙いましたが、シビックのストレートスピードは速く、SUGOのコース特性もありトップチェッカーとはなりませんでした。しかしチーム・ドライバーが一体となって戦えたことで、ベストなレースはお見せできたかと思います。次のレースではさらにアップデートを行い優勝を目指します。応援ありがとうございました」

ENDLESS GRヤリス
2025スーパー耐久第4戦SUGO ENDLESS GRヤリス(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整)

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