ライバルたちのスピードの前に王座は届かず
最終戦は3位表彰台に
ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE
第7戦 S耐FINAL大感謝祭
2025年11月15日(土)〜11月16日(日) 富士スピードウェイ(静岡県)
入場者数:11月15日:14,300人 11月16日26,100人
■PRACTICE スポーツ走行/STMO専有走行
11月13日(木)〜14日(金)
天候:曇り/晴れ 路面:ドライ
第5戦オートポリス、第6戦岡山と連勝を飾り、シリーズランキングでも2位につけ、逆転チャンピオンに近づく戦いをみせたKTMS。迎えた最終戦の第7戦富士は4時間のレースだが、今回KTMSは体制に小変更があった。速さでチームに貢献してきた鈴木斗輝哉が、同週末に開催されるマカオグランプリに出場するため不在となったためだ。
そこでチームは、平良響をBドライバーに据え、Cドライバーとして2022〜23年にチームに在籍した荒川麟を起用した。KTMS GR YARISも良く知るドライバーであり、これ以上ない人選とも言えた。
そんな新たなメンバーを加えた週末は11月13日(木)のスポーツ走行からスタート。11月14日(金)は午前9時35分から専有走行1回目がスタートし、1分53秒567というベストタイムを記録した。
専有走行2回目は午後1時35分からスタートし、富下李央菜がステアリングを握りコースインしたが、直後の4周目、富下はST-4クラスの車両と接触してしまった。車体右側のドアを中心にサイドを破損してしまい、KTMS GR YARISは急遽長時間にわたる修復を強いられてしまった。
車両は夕刻には修復されることになったが、この第7戦は通常より走行時間が少ない中、貴重な時間を失ったのは痛手と言えた。ただ荒川もこれまでの走行で感覚を取り戻しており、予選に向けた準備を整えていた。
■QUALIFY 公式予選
11月15日(土)
天候:晴れ 路面:ドライ
迎えた11月15日(土)の予選日は、フリー走行がなく午後1時から公式予選がスタートした。前日接触したKTMS GR YARISの車体右側は、フリー走行がなかったこともあり、カラーリングも終えてわずかにへこみが残る程度まで修復された。
まずAドライバー予選には、富下が出走。「クルマは問題ありませんでした」と状態を確認すると、1分53秒222を記録する。続くBドライバー予選では平良が1分51秒968を記録するも、合算タイムではやはり今回もライバルに分があり、公式予選の順位は6番手となった。
ただ、公式予選でライバルたちが先行するのは毎戦の光景。Cドライバー予選では決勝レースを見据えながら荒川が1分52秒991を記録しクラス4番手につけると、公式予選を締めくくった。
■RACE 決勝レース
11月16日(日)
天候:晴れ 路面:ドライ
いよいよ迎えた今シーズン最終戦の決勝。快晴に恵まれ、2万6100人というファンが訪れるなか、いよいよ午後1時、レースの火ぶたが切って落とされた。
KTMS GR YARISのスタートドライバーを務めたのは平良。第6戦岡山では、ウエットコンディションのなか素晴らしい追い上げをみせトップにまで浮上したが、今回はドライコンディションで、CIVIC TYPE-R勢はストレートが速い。ラップタイムでもKTMS GR YARISが全力を尽くしてもなかなか及ばない。
そんななか、平良は持てる力を尽くしポジションを少しずつ上げていくものの、13周目に4番手。なかなか思うように順位を上げられないままレース序盤を進めていった。
今回、KTMS GR YARISは優勝を飾ることができても、ランキング首位の#72 CIVIC TYPE-Rが3位以下にならなければチャンピオンには届かない計算だが、このままではトップには届かない。それでも自分たちのペースとしては決して悪いわけではないことから、平良はあきらめず前を追っていった。
昨年は赤旗中断2回と荒れたレースとなった最終戦だが、今回は時折フルコースイエローが入るものの、なかなかセーフティカーは入らず。平良はまず40周を終えピットインすると、富下に第2スティントを任せた。
富下にとって、この富士での決勝は2回目。時折バトルも展開しつつ、富下は着実なペースでレースを進め、トラブルなく自らのスティントをこなし成長をアピールした。
77周を終え、富下はピットに戻り、第3スティントを荒川に託した。決勝までにしっかりKTMS GR YARISのドライビングを取り戻した荒川は、好ペースで走行を続けていくと、KTMS GR YARISは3番手に浮上した。#72 CIVIC TYPE-Rはこのとき4番手。上位はいずれもCIVIC TYPE-Rで、ペースとしては追いつきそうもない。ただ、今回の第7戦はレース終盤、かなり暗くなることから、アクシデントが起きセーフティカーランになる可能性もある。チームは、セーフティカーが導入されるなど、レースの分岐点が来ることを狙い、荒川のスティントを引っ張っていった。
ただ、サーキット全体が暗くなり、ライトオンの指示が出てからも、なかなかレースの雌雄を決するような変化のタイミングは訪れなかった。KTMS GR YARISは117周を終えピットへ。最終スティントを平良に託した。
午後5時17分、レースはチェッカーを迎えた。KTMS GR YARISの順位は3位。ライバルたちがスピードをみせるなか、なんとか耐え抜いて表彰台の一角は確保した。
ただ、目標としていたシリーズチャンピオン連覇には届かなかった。今季のKTMSは、ST-2クラスのランキング2位となった。
しかし今シーズンから参戦した富下、鈴木、そしてふたりを引っ張ってきた平良、最終戦でチームを助けた荒川と、4人の若者たちはチームとともに今シーズンも大きな成長を遂げることができた。ふたたび王座を取り戻すべく、KTMSは来季もスーパー耐久に挑む。
■DRIVERS & ENGINEER VOICE ドライバー&エンジニアコメント
富下 李央菜 RIONA TOMISHITA
今回の決勝レースは、専有走行で接触をしてしまいました。これは今後気をつけなければいけません。ただ、決勝レースについてはしっかりミスなく走りきることができたと思っています。結果的に3位で、チャンピオンに届かなかったことは悔しいですけど、自分のベストは尽くしてシーズンを終えることができたと思っています。今回のレースは抜きつ抜かれつもあり、ペース含め今まででいちばん良い走りができました。シーズンを通じて成長できたのではないかと思います。
平良 響 HIBIKI TAIRA
残念な結果となりましたが、今回はこれが僕たちの精一杯の結果だったのではないかと思います。この富士はライバル勢がやはり速く、ミスなく戦うことができましたが、チャンピオンには届きませんでした。今シーズンは富下選手、鈴木選手が加わり、スーパー耐久の経験がないふたりを引っ張っていく立場でしたが、序盤レースを失ったことが響いたと思います。ただ、このメンバーで今年もう一度戦ったらチャンピオンは獲れると思うくらい強さは身につけられたと思っています。
荒川 麟 RIN ARAKAWA
ひさびさにKTMSに加わることができて嬉しく思っています。GR YARISのドライブもしばらくぶりだったのですが、専有走行から予選、そして決勝に至るまででしっかりとドライビングを思い出すことができたと思います。決勝レースについては3位でしたが、今持てるポテンシャルは出し切ることができたと思っていますし、チーム全体がミスなく戦うことができたのではないでしょうか。チームとしても、来季以降に繋がる一戦になったのではないかと思います。
上田 昌宏 MASAHIRO UEDA 神戸トヨペットエンジニア
3位表彰台でしたが、チャンピオンにも届かなかったので悔しさはありますね。今回については、ライバル勢とのタイム差がありすぎたので、どうしようもなかったというのが正直な感想です。そんななか、富下選手も富士は慣れているのでしっかり走ってくれましたし、平良選手も今回チームに復帰してくれた荒川選手も、しっかり戦ってくれたと思います。我々KTMSは来季もスーパー耐久に挑戦する予定ですが、そんな来シーズンに繋がるレースにできたと思います。


