自動車メーカーの開発車両が参戦するST-Qクラスの注目マシンは、やはり今年の富士24時間に新規参戦するニッサン/ニスモの『ニッサンZ・レーシングコンセプト』と、ホンダ・レーシングのTeam HRCが投入する『シビック・タイプR CNF-R』の2台だろう。
シビック・タイプR CNF-Rについては、カーボンニュートラルフューエルを使用することがすでに発表されており、公式テストでは武藤英紀/伊沢拓也/大津弘樹の3名がステアリングを握って走行を行った。まだマイナートラブルなどの課題はあるものの、この参戦を通じて参加型モータースポーツ向けのレースベース車両やパーツの研究開発も行っていくとのことで、実戦デビューが待ち望まれるマシンだ。
一方でニッサンZ・レーシングコンセプトについては、公式テストに段階では「GT4をベースに改善する領域を調べ、同時にカーボンニュートラルフューエルにトライ」することだけ明かされたが、その具体的な内容が語られることはなく、ステアリングを握った平手晃平、佐々木大樹、高星明誠、松田次生もマシンについては「言えない」という徹底ぶり。おそらくレースウイーク期間中にその詳細が語られると思われ、具体的な情報はまだ待ちたいところ。
さらにST-Qでは、2022年からシリーズに参戦しているORC ROOKIE GR86 CNF concept、Team SDA Engineering BRZ CNF ConceptのトヨタGR86とスバルBRZのライバル対決のほか、初の24時間レースを迎えるMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptも、どのようにレースを戦うのかが楽しみだ。なお、車両火災により第1戦およびテストを欠場しているORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、関係者によると「ゴールデンウイーク返上」で車両修復が進められているとのことだ。
■ST-1〜ST-5の各クラスも激戦必須
今季はシンティアム アップル KTMとD’station Vantage GT8Rの2台が争うST-1。テストではマシンの速さに勝るシンティアム アップル KTMがクラストップを奪ったものの、D’station Vantage GT8Rも0.202秒という僅差で続く結果に。ST-1はマシンの速さよりもノートラブル・ノーミスという点が勝敗を分けるかもしれない。
ST-2は昨年の富士24時間を制しているKTMS GR YARISがテストでクラストップになっており、今年も優勝候補に挙げられる。しかしライバルも手強く、なかでも第1戦を制しているHonda R&D Challenge FL5は富士24時間で全日本スーパーフォーミュラ選手権2連覇かつスーパーGT GT500ドライバーの野尻智紀が加入することになっており、野尻自身も「優勝を狙っていく」と意気込みをみせているため、好バトルが期待される。
ST-3は、ニッサン・フェアレディZニスモRCとレクサスRC 350という2車種の争いに。テストでは岡部自動車フェアレディZ34がクラストップで終えるも、2、3番手には名門TRACYSPORTS with DELTAが投入するRC350が続いており、まずはノートラブルで24時間を走り切ることが優勝への絶対条件と言えるだろう。
そして今季大幅に参戦台数が増加したのがST-4だ。このクラスはトヨタGR86が主戦場としており、テストでは昨年度王者のTOM’S SPIRIT GR86が速さをみせた。しかしENDLESS GR86やシェイドレーシング GR86といったライバルも僅差で続いていることから、優勝候補を予測することは難しい。さらに今季はマツダ・ロードスターRFを使用するodula TONE MOTUL ROADSTER RFも参戦しており、このマシンが24時間レースでトヨタGR86にどこまで挑むことができるかも注目したい。
ホンダ・フィット、マツダ・ロードスター/デミオ、トヨタ・ヤリスがしのぎを削るST-5は、テストではDIXCELアラゴスタNOPROデミオが唯一の2分06秒台をマークしてクラストップ、2番手にYAMATO FIT、3番手にTHE BRIDE FITが続いていることから、ストレートスピードに勝るFF勢が富士24時間でも速さをみせそうだ。しかしロードスター勢もレース中にポジションを上げてくることが予想され、今回も接戦が繰り広げられることが予想される。
さらに2023年の富士24時間では、工場火災の影響を受けたハンコックに代わり、ブリヂストンがST-XからST-3の車両にドライタイヤを緊急供給(ウエットはハンコック)し、ST-4とST-5にはポテンザの市販ラジアルタイヤが供給される予定になっている。このタイヤ変更も勢力図を変化させる要因になるかもしれない。
マシンだけでも非常に注目ポイントの多い2023年スーパー耐久シリーズ『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』は、5月26日(金)に公式予選が行われ、5月28日(土)15時に長きに渡る24時間レースのスタートが切られる予定になっている。レースおよび観戦チケットの詳細は以下のページをチェックしてほしい。
■富士スピードウェイ公式サイト:https://www.fsw.tv/motorsports/racing/2023stai2/index.html
■観戦チケット詳細および販売ページ:https://www.fsw.tv/motorsports/ticket/07/2023-stai-rd2.html