ターボラグを解消するためには、主にアンチラグを使うことになるが、乗りかたによってもかなり補うことが可能だ。前回の記事でも書いたが、ロバンペラは高いアクセル開度を保ったまま、左足ブレーキを多用してマシンの姿勢を変えるドライビングのため、他のドライバーよりもターボラグが出にくい。それでも、最終的にはブースト2.2で900馬力程度のセッティングがベストとなったようだ。
「高い回転数を保つ乗り方なので非常に負荷が高く、こちらとしてはドキドキします」と、クスコの担当者は笑っていた。
トランスミッションは、1000馬力にも対応可能なサデフの6速シーケンシャル。リヤデフは、ドリフト界では定番ともいえるシッキー(SIKKY)を採用していた。このシッキーは、コースやコンディションに応じて5分程度でファイナルギヤを交換できることが最大の特長で、ファイナルも細かく広い範囲の仕様が用意されている。
実際、ロバンペラもコンディション変化に応じてセッション間でファイナルを変えており、どのファイナルで行くかも勝負においては重要な要素だという。
■オリジナルの形を極力残したデザイン
冷却系は、フロントにインタークーラーを、リヤにラジエーターを搭載。リヤクゥオーターウインドウ部に開口部を設け、そこからシュラウドを介してフレッシュエアをラジエーターへと導くデザインとなっている。ドリフトで横に向いた時でも、しっかりと風が入ってくるような開口部形状になっているのが特徴だ。
ボディは、横幅こそかなり拡げられているが、他のマシンに比べるとノーマルに近い印象を受ける。それは、市販車とあまりにもかけ離れたモノにしたくないという、クスコおよびトヨタの意向によるものだ。
リヤウイングはノーマルサイズでかなり地味。内装についても市販車のトリムがかなり残されていた。一方で、足まわりはクスコの技術がフルに込められている。ラリーのキットカー制作で培われた技術により、クルマがドライバーの意のままに動くようなサスペンション設計に。ダンパーについては、クスコのオリジナルが装着されていた。
週末の“主役”となったロバンペラは、今季初優勝を飾ったWRC世界ラリー選手権第5戦『ラリー・ポルトガル』の終了から3日後の水曜日に来日すると、テストを通じて自分が望む動きになるようにとジオメトリーも含めて細かなリクエストを出し、ハンドリングを仕上げていった。
その作業はWRCのプレイベントテストと何ら変わることなく、国際ラリー出場経験豊かなメカニックやエンジニアを擁するクスコ・レーシングだからこそ、ロバンペラの要求にフルに応えることができたに違いない。ロバンペラの要求に応えられるクルマ、そして体制ができていたからこそ、ロバンペラはエビスサーキットでFDJ初出場初優勝を達成することができたのだ。





