2025年最終戦。コースは前日の第9戦と同様だ。ポイントリーダーは蕎麦切。それを藤野が19ポイント差で追う。2日目になって上位選手はゾーン外しによる減点が減り、得点も前日より高めの傾向になった。
まずはAグループ1本目に蕎麦切が丁寧ながら高いレベルの走りを見せて98.73点を獲得しトップに立ったが、すぐに山中が鋭い振りと大きな角度のドリフトを見せて98.94点を出し、蕎麦切を抜く。
その後、Bグループ、Cグループでは山中を超える得点は出なかったものの、Dグループで村上が鋭い振りと高い車速で点を稼ぎ、99.25点を叩き出してトップに立った。そのあとの藤野もメリハリのある走りで99点台をマークしたが村上には及ばない。
そして、本当は蕎麦切より下の順位で通過する予定だったというチームメイトの日比野が、クイックな振りから高い車速のドリフトを決めて99.27点という最高得点をマークしてしまい、単走優勝となった。
それでも、蕎麦切は8位となって単走シリーズチャンピオンを決めた。ただ、シリーズポイントへの加算はなし。藤野は3位で2ポイント加算と、わずかに蕎麦切とのポイント差を詰めた。
第10戦単走ウイナー:日比野哲也(SHIBATA RACING TEAM)MOTUL GR86 SHIBATIRE 18(ZN8)
「練習では昨日も一昨日も99点は出ていたので、出し方は分かっていました。ですが、本当は優勝とか狙っておらず、(蕎麦切)広大の下で着地したかったというところでした。広大は単走チャンピオンもかかってたので」
「なので、結構ゆるく走ったのですが、それがかえって安定度が良くなってしまって、点数が下がらなかったのかなと。ミスなく行けました。正直、本当に狙っていなかったです」
⎯⎯昨日より点が上がったのは?
「おそらく路面が良くなり、旋回速度が上がっているだと思います。昨日よりも振り出しのスピードが3キロから5キロぐらい速くなっています。なので、全体的に車速は上がっていると思いますね」
「1本目なので『ゾーンは1個外してもいいかな…』ぐらいの、マイナス1ぐらいであれば、DOSSで99点出ても、98点台ということになりますし。そのつもりで走ったところ、一応枠は押さえて走れてしまい、そうしたら点数も良かったので、結果オーライでした」
⎯⎯このコースのポイントは?
「今回のレイアウト的に直線がすごく短いんですね。なので、ギヤ比を考えると昨年と同じギヤではいけませんでした。昨年は3速まで上げて走っていたのですが、今はもう2速オートマで走っているぐらいに、ギヤは変えました。ストレートはそこまで車速が出ないので、2速で行けたから、そのまま行けるギヤ比でいきました」
■第10戦追走トーナメント:タイトルがかかった決勝で藤野が中村直樹に競り勝つ
追走開始時点では、藤野がシリーズチャンピオンを獲るには蕎麦切がベスト16で敗れ、藤野自身は優勝するしかなかった。しかし、蕎麦切はベスト16で現在絶好調の中村直樹に敗れてしまう。ここでタイトルの行方は完全に藤野次第ということになった。
ベスト16は多くの対戦で単走上位の選手が勝利したものの、藤野もそこはルーキーの稲岡拓也(VEHIQL RACING × VALINO)に貫禄勝ち。ベスト8に進出する。
ベスト8では日比野が中村直樹に敗北。田中省己(SEIMI STYLE SHIBATIRE DRIFT)も敗退して、シバタイヤ勢が藤野を止めることもできない状況になった。その藤野は“ポップ”ことラタポン・キャオチィン(NEXZTER DRIVE TO DRIFT)に苦戦したものの、再戦の結果、ポップのミスもあってベスト4に勝ち上がった。
準決勝ではオートポリスでの第8戦につづいて中村直樹vs中村龍の親子対決が実現。やはり、まだまだ龍は直樹には及ばず、父親の直樹が完勝した。
準決勝もうひとつの対戦は、ベスト4初進出の畑中夢斗(DRIFT STAR Racing)と藤野が対戦。1本目は後追いの藤野が終始近いドリフトで接近ポイント13を獲得。2本目は畑中があまり接近ポイントを稼げず、藤野が決勝進出を決めた。
藤野が勝てばチャンピオン、勝てなければ蕎麦切がチャンピオンという状況。そして、決勝の対戦相手はそのランキング首位の蕎麦切を倒した中村直樹だ。
1本目は中村直樹が先行。藤野は進入で距離を詰めたものの、振り返しで少し動きが合わせられず、ラインが小さくなってしまう。接近ポイント10.3。しかし、先行の中村直樹のDOSS点が95.9と低く11.8ポイントのリードだ。
そして、2本目。中村直樹は進入から藤野を捕らえてビタビタに入ってきたものの、その先で完璧には合わせられない。藤野もゾーン1をとりきれず減点1を受け、中村直樹は接近ポイント12を獲ったが、やはり中村直樹はDOSS点が低く、逆転はならなかった。
これで藤野が勝利。同時に藤野がわずか1ポイント差で蕎麦切を抜き、3度目のシリーズチャンピオン獲得を決めた。
第10戦追走ウイナー:藤野秀之(Team TOYO TIRES DRIFT 1)TEAM TOYO TIRES DRIFT GR86 #66(ZN8)
「今日は完全にあとがなくなったので、選択肢が“やる”っていう部分しか無くなりました。でも、チャンピオンを獲ろうよりも、確実にひとつひとつとっていき、万が一負けたら負けたでそれはそれという意識でした」
「なので、チャンピオンをとても意識してたかというと、そこまでではありませんでした。周りはみんなチャンピオンを獲りたい気持ちがあるので、プレッシャーはとてもありました。でも、プレッシャーといっても、応援してくれているのだなというところにプレッシャーを感じていました」
⎯⎯今日はいい追走ができた?
「そうですね。このレイアウトは追走しづらいコースだったと思うのですが、比較的できたかなとは思います」
⎯⎯どこかで気持ちのスイッチが入った?
「ポップ選手のときにサドンデスになりました。ポップ選手が上手いのはわかっていたので、サドンデスになった瞬間ぐらいから、やられたらやり返そうとしか思っていませんでした」
⎯⎯決勝前の心境は?
「逆に『もうここで獲れなかったらそこまでなんだな』としか思っていなかったので、『絶対に獲る』というよりも『勝とう』というだけの心境でした」
⎯⎯決勝の出来は?
「タイヤも中古で溝もほぼ無い状態で走ったので、やはり多少なりともミスは出てるなという感覚はありました」
⎯⎯優勝がわかった瞬間の心境は?
「とても嬉しかったです。素直に嬉しかったですね。正直、負けてるような感じもしていましたし、分かりづらいなと思っていたので」
2025年シリーズチャンピオン:藤野秀之(Team TOYO TIRES DRIFT 1)TEAM TOYO TIRES DRIFT GR86 #66(ZN8)
⎯⎯今季、シーズン中のチャンピオンへの意識は?
「シーズン途中も『チャンピオンを争えるところにいるよ』とは、周りから言われていました。でも、自分は意外とそこを見ないんですね。常にあまり気にしないようにしています」
「2017年にチャンピオンを獲ったときは、D1に出たばかりだったので、早く、最短でチャンピオンになったらかっこいいなと思って獲りたかったんですね。でも、今はそういうことを考えても、周りもすごいですし、そう簡単に獲れるものでもないですから、そういう意識は常にあまりしなくなっています」
⎯⎯今シーズンうまくいったことは?
「今シーズンからスポッターが(サスペンションメーカーDG-5の)北澤源吾さんになりました。自分のメンタルコントロールなどいろいろとしてもらい、そのおかげもあってすごくいい方向にいったと思います」
⎯⎯攻めの走りが増えた?
「そうですね。そのあたりが結果に繋がっていると思います」
⎯⎯3度目のチャンピオンです。
「3回は獲りたかったんです。本当にこの1年間、支えていただいたスポンサーさんやファン、周りの方たちに感謝しかないです」
2025年単走チャンピオン:蕎麦切広大(SHIBATA RACING TEAM)MOTUL GR86 SHIBATIRE 31(ZN8)
⎯⎯単走チャンピオンという結果に関しては
「普通に嬉しいのですが…。嬉しいです(笑)」
⎯⎯シーズン中、単走チャンピオンへの意識は?
「結果として獲れればいいな、ぐらいでした。今回、とにかく追走でチャンピオンを獲りたい一心でした。結果的にそれが獲れなかったですけども、もうひとつの単走の方は獲れて、嬉しい気持ちもありつつ、やっぱり悔しいです」
⎯⎯単走でうまくいったことは?
「オートポリスとか、エビスあたりですね。お台場って自分で頑張って走っても、点に反映されないことが結構あります。そういったところがオートポリスやエビスでは頑張った分だけ点に反映される、DOSSにちゃんと響く走りができたっていう感じでした」
⎯⎯そこは分析がうまくいった?
「分析というのもあるかもしれませんが、結果的にはかっこいい走りがしたいっていう一心でした。それをやった結果、DOSS点がついてきてくれたのが、エビスとオートポリスでしたね。お台場は少し追求不足だったので、もっともっと追求します」
⎯⎯今年は1本目で大体当確の点がとれていた?
「そうですね。比較的そういう作戦で取り組んでいき、1年間通して1回も予選落ちすることがなく、機能してたかなと思います。そのあたりの自分のコントロールなどは良い感じにできていたので、メンタル的な面も少しずつ成長できているのかなと思っています」
2025年チームチャンピオン:古口敦規(Team TOYO TIRES DRIFT 1/TOYO TIRE株式会社)
「今年、藤野さんはさまざまなレースに挑戦されていて、XCRっていうスプリントカップラリーでもシリーズチャンピオンになられました。そのラリーと今回のD1という2つの分野でのシリーズ優勝というのは期するものがあったと思いますが、そこにかける気持ちっていうのは、さすがすごいものがあったなと思います」
「最終戦のお台場で、このようなドラマを見せてくれて本当に感激しましたし、あとはこのD1とタイヤを支えてくださる皆さんの力で獲ったシリーズチャンピオンだと思っています。チームワークも良く、先ほど川畑選手が「これでも仲いいんですよ」のようなことを言っていましたけど、みんな仲が良いんですよね」
「今村監督…侍監督がしっかりリーダーシップをとって皆さんをまとめてくださっていて、ピットの皆さんとか、ブース運営してくださる皆様とか、そういう方々あってのチームなので、支えてくださっている皆さんに感謝しかありませんし、こういったチーム作りができ、良かったなと思っています。ありがとうございます」







