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F1 ニュース

投稿日: 2016.06.15 07:00
更新日: 2016.06.15 10:13

今宮純の決勝インプレッション:神と悪魔のハミルトン、失策とは言えない跳ね馬

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F1 | 今宮純の決勝インプレッション:神と悪魔のハミルトン、失策とは言えない跳ね馬

 5位で終わったランキング首位、ロズベルグの心境は察するにあまりある。2コーナーで後続集団に迷い込み、序盤からマシン各部が熱を持ち、中盤にはブレーキシステムの警告ランプが点灯、スローパンクチャーで想定外の2度目ピットイン。苛立ち、あせり、はやり、終盤は燃費も厳しく、ポイントリーダーは苛まれ続けた。ラスト10周、フェルスタッペン相手にもつれ争い、最後のシケインでスピン。ミスはミスでも、あの瞬間インからアウトに転じたアタックは責められない。むしろ、あのアタックを察知して4位を守りきったマックス・フェルスタッペンの反応をほめるべきだ。しかしロズベルグは、あそこでクラッシュしていたら首位陥落、最悪の事態に陥るところだった。

 今季もっとも冷たいコンディション、気温12度、路面22度(風による体感は7度前後)で始まったレースは、タイヤデータを大きく狂わせた。金曜のフリー走行2回目に収集したデータは晴天下の気温18度、路面温度42度でのもの。路面温度が20度(!)も低下、この激変に、結果的に大きく振りまわされたのがフェラーリ、レッドブル以下大半のチームだった。

 想定スティントをカバーできないだろうと読んだフェラーリは、11周目に2台を低温作動型のスーパーソフトタイヤに換え、使用義務づけのソフトタイヤへ、もう一度ピットインする2ストップを選択。これを失策とは、ひとくちでは言えまい。レース後にも2位に入ったセバスチャン・ベッテルはチームの戦略を批判せず、「70周をプッシュしつづけられたから」と表情に濁りは一切なかった。一方、7位ダニエル・リカルドはメルセデスやウイリアムズのような1ストップ戦略が崩れ、本人のタイヤロックもあって「プランB」に移行して欲求不満。予選までの戦況を見定め、メルセデス対フェラーリ対レッドブルの「三つどもえチーム戦」を予想したけれど、極寒コンディションが、その構図を塗りかえた。余談だが、観客のみなさんが、あれほど防寒・雨対策しているのを目にするのは初めてだ。

 雨は結局降らず、超低温ゲームを1ストップでカバーしたメルセデスのハミルトン。最大勝因は、もともと備わっているダイナミック・ダウンフォースをさらにプラスして、ウルトラソフトで24周、ソフトで46周をカバー。追跡王者は、いきなりロズベルグを刺すと、タイヤに優しく舞い、現役最多カナダ5勝を勝ちとった。先日亡くなった偉大なボクサーの名言にたとえた『言葉力』もヒーローには欠かせないものだ。いよいよ中盤連戦ラウンドへ、防衛王者は勇み立つ。


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