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F1 ニュース

投稿日: 2018.12.10 15:05
更新日: 2021.04.14 01:09

唯一、存命のジョディ・シェクターが語る“6輪”ティレルP34。「ターンインするとホイールがバタバタと」

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F1 | 唯一、存命のジョディ・シェクターが語る“6輪”ティレルP34。「ターンインするとホイールがバタバタと」

――スウェーデンGPは、あのクルマにとってシーズンのハイライトになりました。ポールポジションを獲り、レースでも勝ったのですから、大いに勇気づけられたに違いありません。
「どういうわけか、ティレルはいつもスウェーデンでは強かった。私も2度優勝している。理由は分からないが、私としてはリヤサスペションのジオメトリーがあのコースに合っていたような気がしている」

――そのスウェーデンで、前輪のひとつが脱落して5輪の状態でピットに戻ってきたのに、しばらく誰も気付かなかったというのは本当ですか?
「ああ、プラクティス中にホイールがひとつ外れたんだ。デレックが私のそばに腰を下ろして、『どんな感じ?』と聞いたので、私は『えっと、ほんの少しアンダーステア気味かな』と答えた。すると、みんなが一斉に笑い始め、その部分に毛布を被せてクルマをガレージに引っ込めた」

――オーストリアGPでは大きなクラッシュを経験し、脚にケガも負いました。その時のことは憶えていますか?
「フロントサスペンションの何かが壊れた。かなり大きなクラッシュで、軽傷ですんだのは幸運だった。レースでケガをしたのは、あの時の一度きりだからね。ボルトか何かが脚に当たって、傷から少し出血したが、大騒ぎするほどではなかった。あのクルマは絶えずどこかが壊れたり、歪んだりしていた。特にリヤサスペンションまわりが多かったと思う。イギリスのファクトリーに出向いて、『もうこのクルマには乗れない。始終壊れてばかりだ』と訴えたこともある。ザンドフールトでは、またクルマが壊れるのではないかと思うと心配で、コックピットの中で縮み上がっていた。あのサーキットの裏手の方(ピアース・カレッジやロジャー・ウイリアムソンがクラッシュした場所)で何かが壊れたら、まず無事では済まないからね。先ほども言ったように、あのクルマはフロントのキャンバーが絶えず変わってしまうほどだったのに、彼らは走るたびに調整するだけで、補強などの対策は何もしなかった」

――ターンインする時にフロントタイヤが見えるように、コックピットにパースペックスの窓を設けるように頼んだのはあなたですか?
「どういう経緯だったかは憶えていない。窓があったのだから、前輪が4つ揃っているかどうかも見えたはずだよね(笑)」

ティレルを離れた理由

――アメリカ人のコンピュータの専門家、カール・ケンプを憶えていますか? ティレルに加わった彼はデータ収集のパイオニアでした。
「その人と同じ人物かどうか分からないが、グッドイヤーから来た男が、何だかすごい機械を持ってきたのは憶えている。ロールになった幅2フィート(約60cm)くらいの紙に、何かが記録されて出てくるんだ。紙には走り書きでいろいろと書き込まれていたが、いったい何をしているのか誰にも分からなかった!」

――パトリック・ドゥパイエについて、憶えているのはどんなことですか?
「いいやつだったよ。典型的なフランス人だったけどね。例えば、最初のプラクティスで速かった時には、ピットに戻ってきて『クルマは文句なし』と言うのに、次のセッションで自分たちのタイムは同じでも他のドライバーが速くなってくると『全然ダメだ!』と言い出すんだ。でも、一緒にいて楽しい男だった。コース上でもかなり速くて、モナコとかその他のいくつかのサーキットでは、私より彼の方が速かった」

――ドライビングスタイルやセットアップの好みは似ていましたか?
「それほど大きな違いはなかったと思う」

――ガードナーとの関係はどうでしたか?
「とてもうまくやっていたよ。彼はちゃんとした紳士だった。ただ、6輪車に関する彼の理論には同意できなかった。そして、彼らは私よりもパトリックの意見に耳を傾け始め、それがティレルを離れてウルフへ行こうと考える理由のひとつにもなった」

――77年にルノーのターボエンジンを積む計画があったのはご存知ですか?
「それについては何も知らないな」

みんなが覚えているクルマ

――当時のクルマの1台を所有されているそうですね。どんな履歴のシャシーですか?
「私の理解している限りでは、かつて私がドライブして全損になったクルマが、バラバラの状態でアメリカへ渡った。私はそれを買い取ろうとしたのだが、持ち主が売ろうとしなかった。その後、彼がレストアして組み上げ、売りに出していたのを買ったんだ」

――オーストリアGPでクラッシュしたシャシーでしょうか?
「そうかも知れないが、正確なところは分からない」

――あなたの農場で開かれたフェスティバルで、そのクルマを走らせましたね。楽しくドライブできましたか?
「ああ。体型が変わっていて、乗り込むのが大変だったけど、すごくいい感じだったよ。まあ、ダスティな道を冷えたタイヤで半周ほど走っただけだから、理想的なコンディションではなかったけどね。あのイベントでは、フェラーリ312Tにも乗ったんだ!」

――あなたのキャリアの大きな部分を占めたあのクルマは、いい思い出になっていますか?
「もちろんさ。だからこそ、あのクルマを買ったんだ。何と言っても、みんながよく憶えている有名なクルマだからね」

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