
ルクレール:タイヤをケアする必要はある?
フェラーリ:プッシュする必要がある。我々はプランB(2ストップ作戦)を考えている。
レース前のシミュレーションでは、1ストップ作戦の方が速くなるはずだった。そのため多くのマシンがタイヤを労りながら最後まで保たせて1ストップで走り切ると思われ、フェラーリは2ストップ作戦でプッシュすることでなんとか順位を取り戻そうとしたのだ。
しかし34周目、4番手のマックス・フェルスタッペンが2回目のピットストップに飛び込んだ。
日曜日は空がどんよりと曇り、路面温度が低くなった。そのためハードタイヤが想定通りに機能せず、スライドしてアブレージョン(磨耗)が進んでペースが低下してしまったのだ。
これでフェラーリは3番手のベッテルを翌周ピットインさせ、フェルスタッペンのアンダーカットを阻止するので精一杯。全員が同じ戦略になった以上、ルクレールには逆転のチャンスはなくなってしまった。
フェラーリ:BOX、セバスチャンBOX、NOW。VERがピットインしたぞ。
ピットアウト直後のリヤタイヤが温まりきっていないベッテルはフェルスタッペンの猛攻に遭い、ターン14でインに飛び込まれる場面さえもあったが、なんとかこれを凌ぎきって3位を守り抜いた。まさしくバーレーンGPの対ルイス・ハミルトン(メルセデス)の戦いと同じ展開だったが、今回のベッテルはしっかりとポジションを守ってみせたのだ。
一方でレッドブルはハードタイヤの変調をいち早く察知し、2ストップ作戦でフェラーリの一角を切り崩す戦略を採った。それによってルクレールをアンダーカットしたのもさることながら、もしレッドブルが1ストップに固執していれば2ストップ作戦のルクレールが逆転していたかもしれない。ペースはルクレールの方が速かったが、レッドブルの戦略勝ちだった。
チェッカードフラッグを受けた後、力強いレースだったとねぎらうチームからの無線に対してベッテルはこう言った。
ベッテル:第1スティントはすまなかった。もっと速く走れたはずだけど、タイヤがダメになっていたんだ。最後はグリップが戻ってきたけどね。LEC(ルクレール)はVERの何秒差まで行けたの?
フェラーリ:3.6秒差だ。
ベッテル:あぁ、クソッ。
なんとか3位は確保したものの、本来ならば手にできたはずの4位をレッドブルの巧みな戦略によって奪われた。そして第1スティントで手をこまねいているうちにメルセデスAMGとの優勝争いのチャンスもなくなった。フェラーリにとっては敗北にも等しいレースだった。