2021年F1第17戦アメリカGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点について解説する。今回は、メルセデスが圧倒的有利とみられたサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)でレッドブルが見せた強さの秘密を探る。
────────────────────────────────
レース前の予想とは裏腹に、アメリカGPでのレッドブル・ホンダは素晴らしい戦闘力を発揮した。特にマックス・フェルスタッペンが予選でメルセデスの2台を凌ぐ速さを発揮したのには、大いに驚かされた。
COTAの舗装はイスタンブールよりずっと滑らかな代わりに、路面のバンピーさは悲惨なほどに酷い。ハイレーキコンセプトでリヤの車高が高いRB16Bは、メルセデスのW12に比べてより柔らかいサスペンションセッティングが可能で、その分バンピーな路面や攻撃的な縁石に対応しやすい。そのためターン11から裏ストレートへと立ち上がっていく際のトラクションのかかり方は、レッドブルの方がずっと優れていた。
ダウンフォースをしっかり効かせたRB16Bは、セクター1のターン3~6の高速S字区間、そして最終区間のターン16~18の高速複合コーナーでも速かった。
ダウンフォースが十分に効いていたため、タイヤも十分に持たせることができた。これはデグラデーションが非常に大きかった今年のCOTAでは特に有効だった。
リヤタイヤのオーバーヒートに終始苦しんだメルセデスのトラックサイド・エンジニアリングディレクター、アンドリュー・ショブリンは、「この週末のレッドブルマシンのリヤアクスルは、本当に優れていた」と、ライバルを称賛していた。「オーバーヒートだけでなく、リヤが飛び跳ねる症状にも我々は手こずらされた。しかし彼らのリヤは、ぴたりと路面に吸い付いていたよ」。
メルセデスのリヤには予選でのソフトタイヤだけでなく、レースでのミディアムでもオーバーヒート症状が出た。予選Q3ではストレート主体の得意のセクター2で最速区間タイムを出しながら、セクター3で失速している。
一方でバンプでフロアがダメージを受けるのを避けるため、二日目以降は車高を上げざるをえなかった。初日に2台揃って群を抜く速さを見せたのは、本来の低い車高で走ったことも大きかったということだ。