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F1 ニュース

投稿日: 2022.07.28 20:55
更新日: 2022.07.28 21:26

【中野信治のF1分析/第12戦】ルクレールのクラッシュがなくてもフェルスタッペンは勝てたか。角田裕毅と接触の裁定基準

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F1 | 【中野信治のF1分析/第12戦】ルクレールのクラッシュがなくてもフェルスタッペンは勝てたか。角田裕毅と接触の裁定基準

 また、今回のフランスGPでは接触に対して分かりやすい裁定が取られたのも印象的でした。前にいる方にアドバンテージがあり、それに対してコーナーに入っていく際に後ろのドライバーが前のクルマに当たったら後ろが悪いという、シンプルに前のクルマに優先権があるということを接触時の裁定で示していました。

 おそらく前戦のオーストリアGPのターン4での接触に関する裁定でその後、いろいろとあったので話し合いがなされたのだと思います。その結果として、今回のフランスGPではシンプルに前にいたクルマは悪くないという判断や流れになっていたイメージがあります。実際、今回のフランスGPのオープニングラップでの角田裕毅(アルファタウリ)とエステバン・オコン(アルピーヌ)のアクシデントはすぐにオコンに5秒のペナルティが出ました。あの接触はオコンが少し強引に行き過ぎたなという気がします。

 レース終盤のセルジオ・ペレス(レッドブル)とジョージ・ラッセル(メルセデス)のバトルに関しては、ペレスが外側から押さえに入っていたのにラッセルがそのイン側に飛び込んで、この時はノーペナルティとなりました。ラッセル的には無線で『ありえない!』と言っていましたが、ペレス的には『そのままだとぶつかるから仕方ないだろう』という感じでランオフエリアに逃げて順位もそのままに走行してましたが、この時はレーシングインシデントという判断でした。ペレスはもう少しラッセルのスペースを残してブロックしても良かったと思いますし、ラッセルは入る隙間がないところに入っていったのでお互いに原因があった印象です。

【動画】ペレスとラッセルのバトルシーンとお互いの無線

 その後、ラッセルはその裁定に納得がいかずに無線で怒っていてチームがなだめていましたけど、あのあたりは若さですね。感情を乱すと走りも乱れてしまいます。なかなか抜けそうで抜けないとき、ドライバーは本当にストレスが溜まりす。ラッセル的には千載一遇のチャンスに追い抜くことができなかったので、もう二度と追い抜けないというイメージができてしまいます。ですので、できればペナルティを出してもらって自分が前に出るというのがラッセル的には良いストーリーです。そして、それにこだわる理由のひとつに、チームメイトのハミルトンが前を走っていたことがあります。

 あの時のラッセルはもう前を行くハミルトンのことしか見ていないと思いますし、ハミルトンに追い付きたいという一心から、一刻も早くペレスを追い抜きたくての、あの裁定に対する無線だったと思います。チームメイトのハミルトンがアゼルバイジャンGPで限界を超えた走りをして以来、ここ数戦のハミルトンは完全に速さを取り戻してきています。そこからラッセルはハミルトンに勝てておらず、結構プレッシャーが掛かっていると思います。その後、ラッセルはバーチャルセーフティカー(VSC)後のリスタートでペレスを抜いて3位になりましたが、ペレスにとってはVSCのソフトウェアエラーでラッセルに追い抜かれたのは正直に可哀想でしたね。

 最後に角田裕毅に関してですが、予選は本当に素晴らしい走りで、アルファタウリのクルマのいいところを100%引き出して戦っていたと思います。走りを見ていてもクルマが苦手なところは、いなすようにうまく走り、クルマの得意なところを使いながら上手に走っていました。今回はむしろ、母国グランプリでもあるチームメイトのピエール・ガスリーの方が少しオーバードライブをしているように見えましたね。

 アルファタウリには今回アップデートが投入され、ストレートスピードが若干良くなっていました。あとはダニエル・リカルド(マクラーレン)との比較データを見たのですが、高速・中速コーナーでのコーナリングはマクラーレンに引けを取っておらず、そのあたりが若干ですが今回のアルファタウリが良くなった部分なのかなという印象を受けました。ダウンフォースが増えたことに加えてリヤのパーツも変えてきたようで、ポジティブなアップデートだと思います。

 裕毅はスタート直後にオコンと接触してしまい勝負権を失ってしまいましたが、これは切り替えるしかありません。救いとしては予選でいい走りをすることができたので、次戦に向けて自信は掴んでいると思います。レースに関しては自分のミスで落としたわけではないので、そこまで精神的なダメージは大きくないと思います。これからの裕毅は、この後のレースで何ポイントを獲ったという話ではないと思うので、とにかくチャンスが来たらそのチャンスを取りに行くというスタンスで、冷静に戦えるはずです。

2022年F1第12戦フランスGP 角田裕毅(アルファタウリ)がヒットされてスピン
2022年F1第12戦フランスGP 角田裕毅(アルファタウリ)がヒットされてスピン

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<<プロフィール>>
中野信治(なかのしんじ)

1971年生まれ、大阪出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在は鈴鹿サーキットレーシングスクールの副校長として後進の育成に携わり、F1インターネット中継DAZNの解説を担当。
公式HP https://www.c-shinji.com/
SNS https://twitter.com/shinjinakano24


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