F1モナコGPの番外編として、臨時特派員のムッシュ柴田が、パドック外の様子をお届け。セレブだらけの華やかな場所ばかりではなく、ただいま南仏はデモやストの季節で炎上中。しかし、ストには意外なメリットもあったりして……。
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ウエットレースとなった決勝当日から一転、翌日のコートダジュールは雲ひとつない快晴でした。これだけ、さわやかに晴れられると「ここに暮らしてもいいかな〜、毎日のんびりジョギングでもしたいな〜」なんて思うんですが……
ところがどっこい、南仏の治安の悪さは、パリをはるかにしのぐ物騒さ。この2週間ほどは、労働法改正反対のデモやストライキがフランス全土で頻発してまして
機動隊とデモ隊がガチでぶつかったり
石油精製工場のストライキでガソリンが足りなくなり、ガソリンスタンドでは長蛇の列ができたり。
ここ数年、モナコGPではレンタカーではなく電車通勤している僕は、車内で新聞を読みながら「クルマの人は大変だな〜」と他人事のようにつぶやいていたのですが
フランス国鉄が、ストをしないはずはありません。もともと1時間に2本程度しかないニース〜モナコ間の電車が、さらに減らされ、モナコ駅のホームには電車を待つ人々があふれていました。
では、みんな文句タラタラかというと、そんなことはありませんでした。というのも本数こそ少ないんですが、列車が時間通りにピタッとやってきて、ピタッと出発するからです。通常だと15分、20分遅れはザラで、何もアナウンスなしに運休されたこともありました。組合に入っていない管理職が運行してるから、時間に正確なんでしょうかね。いずれにしても例年より、ずっとストレスを感じない電車通勤でした。
さて今回はフランス新聞事情を、ちょっと紹介しましょうか。上でお見せした新聞は駅前や繁華街などで、毎朝無料で配ってるものです。
配っているのは、おばちゃんと、おにいちゃん。「ディレクト・マタン」と「20minutes」というのが無料新聞界の2大勢力ですね。すべて製作費用は広告収入で賄い、無料なので発行部数は旧来の新聞をしのいでます。しかも無料新聞といっても、独自取材の記事満載で、かなりしっかりした作りです。衰退著しい日本の新聞業界も、この可能性を考えるべきだと思うんですけどね。
こちらは「ディレクト・マタン」モナコGP後の月曜日のスポーツ面です。テニスの全仏オープン真っただなかで、それもあってF1の記事は片隅に追いやられてました。
一方こちらは、南仏を代表する地方紙「ニース・マタン」。中折りで15ページものF1特集を組んで、気合いが入ってるところを見せました。ちなみにモナコにも一応「モナコ・マタン」という日刊紙があるんですが、あまり読まれてないみたいです。
モナコGPを訪れたセレブな人々の紹介に見開き2ページを費やしているところは、ローカル色豊かという感じ。
見出しのつけかたも独特です。ペレスとアロンソの上位入賞を報じた右側のページ。
「ペレス、アロンソ、オレ!」って……。確かにメキシコでも闘牛は行われますが、あくまで本場はスペインでしょ。いろいろ強引。
しっかし、いい天気だったな〜。
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柴田久仁夫(しばた・くにお)
1982年よりパリ在住。TVディレクターとしてヨーロッパ、アフリカ各国を10数年間取材。初めてのF1は1987年のモナコGP。中嶋悟という日本人が参戦していると聞いて興味本位に首を突っ込み、以来そちらが本職に。幸い旅行が大好きで年間100日以上のホテル暮らしも苦にならない。趣味はランニングと、おいしいものを食べて飲むこと。