一方でロシアンタイムの牧野任祐は思わぬ落とし穴に嵌ってしまった。

 フリー走行を走り始めてわずか5周目でターン3でコースを外れタイヤバリヤにクラッシュ。今週末のロシアンタイムはハンガロリンクに対してセットアップを外してしまっていた。

「コースに出て行った1周目からマシンが結構オーバーステアだなぁというのは感じていて、車高も低かったみたいでボトミングもしていて。そのまま2周目のアタックラップに入っていったターン3でオーバーステアが出ているところにボトミングが重なってすごく大きなスナップが出てしまって、その反動でクルマが左を向いてそのまままっすぐ行ってしまったという状況でした。あとはもうどうすることもできませんでした」

 ほとんど確認走行もできないままぶっつけ本番の予選ではギヤボックストラブルが出てしまい、なんとか修復しセッション終了直前にアタックに臨んだがぶっつけ本番ではターン1でも最終コーナーでもオーバーシュートしてしまい最下位だった。

 それでもレース1では果敢に先陣を切ってウエットタイヤからドライタイヤに履き替え、ファステストラップを連発して9位までポジションを上げた。

「ドライに換えるのはちょっと早かったかなという気もしましたけど、後ろの方を走っていたので失うものもありませんでしたしね」

グリッドに並ぶ牧野任祐のマシン

「最初はタイヤが温まらないしまだウエットパッチも残っていたのでコントロールするのが大変ですぐにはタイムが上がりませんでしたけど、ピットアウトした周からセクター2はグリーン(自己ベスト)だったらしいんで、ウエットではビックリするくらいクルマがダメでタイヤもボロボロになって余計にペースが上がらないっていう状況だったので、換えるしかなかったというのが正直なところでしたね」

 予選7位から8位フィニッシュがやっとだったマルケロフも全く同じ状況だったといい、ロシアンタイム勢はドライ寄りのセットアップだったとはいえウエットコンディションへの対応は充分ではなかった。

 レース2ではスタート直後のターン1でコントロールを失ったラルフ・ボシュングに追突され17位まで後退し、衝撃でステアリングが曲がってしまったことで牧野レースは福住同様に厳しいものとなった。

「スタートが良くなくて、さらにターン1でMPモータースポーツのクルマ(ボシュング)が後ろからぶつかってきて、両側からサンドイッチされるようなかたちになってしまった。それで左フロントにぶつけられてステアリングが曲がってしまったし、そういう状態ではブレーキングでも攻めることができないし、タイヤマネージメントのためにペースを抑えて走っているというよりもあれ以上ペースが上がらないっていう状態でした」

 それでもレース1をマシントラブルでリタイアして後方から追い上げてきた選手権リーダーのジョージ・ラッセルにずっとついていくことができたほど、牧野のペースは決して悪くはなかった。

 リバースポールからスタートしたマルケロフはレース中盤からリヤのデグラデーションが酷く進み、最後は13位まで順位を落とすほどセッティングとタイヤマネージメントを外していた。そのなかでも牧野は12位まで挽回する走りを見せた。

レース1は9位、レース2は12位だった牧野任祐

 牧野もエンジンシャッフルの効果については「まだはっきりとは分かりませんけど、状況としては全然普通になったと思いますね」と語る。

 ロシアンタイムとしてはハンガロリンクに対するマシンセットアップが全体的に上手くいかなかず、牧野としてもフリー走行で躓いてしまったのは痛かった。しかしそれを差し引けばマルケロフと同等の走りができたこともまた事実だった。

 マシンの不利が小さくなったからこそ、ここからは本当の意味でチーム力が問われる。光明が見えてきたからこそ、福住は「こんなミスが続くようではいつまで経っても上位チームにはなれない」と苦言を呈する。牧野もこれからは課題のタイヤマネージメント力がより明確に問われることになる。

 ともあれ、ひとまず再出発のスタート地点にはきちんと着くことができた。そんなふうに感じられた日本人ドライバー2人のハンガリーラウンドだった。

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