すると前日に続き、このセーフティカーピリオド中にトラックには、ふたたびの雨が落ち始め、各陣営がレインタイヤへのギャンブルに出るか、ステイアウトを選ぶか判断が分かれる状況となり、SC明け11周目のリスタートでは事態が一変。ここでピンチに陥ったのがFR勢のBMWとスバルだった。
3番手争いを繰り広げていたFK2シビックとアウディのFF勢は、リスタート後すぐにスバルのサットンをかわすと、コブラスポーツAmDオートエイド/RCIBインシュアランスのブッチャーはターン4の“サーティース”でターキントンも仕留め、なんと首位浮上に成功する。
スリッパリーなコンディションで苦戦するリヤ駆動マシンのターキントンは、その後アウディにもかわされズルズルとポジションを下げると、その背後に迫ってきたのが12番手スタートのFK8シビック、カミッシュだった。
オープニングで7番手に躍進していた若きスター候補生は、SC中にライバル勢数台がウエットへと履き替える展開にも助けられ驚異的なペースで周回を重ねると、15周目の“グラハム・ヒル・ベンド”でアウディも捉えて2番手へ。
さらに新旧シビック対決となった首位ブッチャーとのバトルでは、1コーナー“パドックヒル・ベンド”のアウトサイドから豪快なパッシングを見せ、ファクトリーマシンの性能を活かしてついにトップランを手にする。
その後さらに雨脚が強まると、カミッシュは視界良好のひとり旅で18周を走破しトップチェッカー。土壇場で今季2勝目を飾り、5位に終わったターキントンのポールポジション&ファステストのボーナスポイントを帳消しにする金星をマーク。
さらに2位、3位の表彰台には、SC中のレインタイヤ交換で終盤、怒涛のオーバーテイクショーを披露した予選13番手のマット・ニール(FK8ホンダ・シビック・タイプR)と、同19番手のトム・チルトン(フォード・フォーカスRS)が続き、チーム・ダイナミクスが望外のワン・ツーを決めている。
これでトップ10圏外に終わったBTCホンダのクックと、トヨタのイングラムがタイトルへの挑戦権を失うと、続くレース2はターキントンvsカミッシュに、BMWジョーダンが絡む三つどもえの構図に。
その緊迫のハイライトは早くもオープニングラップで訪れ、R1勝者のポールシッター・カミッシュの背後に5番手スタートのターキントンがジャンプアップし、そのまま現役王者がテール・トゥ・ノーズで若手にプレッシャーを掛け首位浮上を狙う勢いを見せる。
しかし先を越されたフロントロウ2番手発進のニールが、大ベテランらしい老獪なドライビングで挽回を狙うと、続く“グラハム・ヒル・ベンド”で2台は接触し、FRのBMWがスピンアウト。なんと選手権リーダーが隊列後方に転落する緊急事態となる。
このアクシデントによるSCが明けると、チーム・ダイナミクス勢に襲い掛かったのがスバルのサットンで、路面状況がドライアップとなるのに合わせて息を吹き返したレヴォーグGTが意地のドライビングで首位に浮上し、そのままトップチェッカー。
そして同じくFRのジョーダンは、自らの逆転タイトルに望みを繋ぐべく起死回生の追い上げを見せ、2度目のSCを挟んでニール、カミッシュと続けてシビック勢を仕留めるパフォーマンスを披露。2位表彰台に上がって2019年最後のレースを前に13点差のビハインドを死守した。
そして3位表彰台のカミッシュが、ポイント圏外に終わったターキントンを逆転し8点のリードを得て、今季初の選手権首位に立つ白熱の展開となった。



