TOYO TIRES開発スタッフが初戦に掲げていた目標はただひとつ、「完走すること」だった。「あえてスピードを重視せず、タイヤの破損を避けるために内圧に十分に配慮をしながら、ひたすらデータ収集を目的に慎重に走ってもらった」と、初戦を振り返る。
TOYO TIRESのモータースポーツチームスタッフも、難しい状況下で無事に完走できたことに胸をなでおろした。「タイヤトラブルを起こさず、無事に完走したことが何よりの収穫。我々のチャレンジはスタートしたばかり。第2戦も完走を目標に、データ収集を第一に準備を進めていきたい」
リモートで監督業務を行った渡邊代表は、「車両もタイヤもデータが十分にない中で、終始安定したレース展開でクラス5位に入賞し、今後のレースに十分期待できるポテンシャルを発揮できた」とレースを振り返る。
また、「タイヤはまだまだ開発の発展途上だが、今後アップデートが繰り返されることで、ポテンシャルが向上すると期待している。共に挑戦する仲間として、TOYO TIRESの存在は心強い。今後の可能性を実感した初戦だった」と、手応えを感じていた様子だ。
現場でレースに臨んだ酒井は、ニュルで好成績を得るには、いかにピットストップを減らしてスティントを延ばせるかが重要と感じたようだ。
「今回のレースでは、アップダウンが非常に激しいノルドシュライフェにおいて、タイヤとマシンのバランスを探りながらスープラの足まわりの設定を色々試しつつ、タイヤの摩耗と燃費を考慮しながらクレーンさんと周回数の調整を行いました」
「今後はレースを重ねてマシンを熟成させるとともに、コンパウンドの改良も行うことで、さらに1スティント中の周回数を伸ばすことが可能だと思います」
同じく、現場でチームの指揮を執ったRING RACING代表のクレーンは「我々がニュルで勝つには、まだ道のりは遠い」と気を引き締めつつも、「日本のプロジェクトメンバーとはコロナ禍で遠く離れていても、心をひとつに一歩ずつ着実に目標に向かって邁進する」と、Novel RacingとTOYO TIRESのドイツへの“里帰り”を、首を長くして待っているという。
NLSの次戦は、第2戦と第3戦が7月11日と12日の2日連続で開催されるという過酷なスケジュールだ。
初戦のデータをもとにした新しいタイヤが投入できるのは、8月1日の第4戦からとなる。そしてこの第4戦までには、9月24~27日のニュル24時間レース用スペックを決定する必要がある。TOYO TIRES開発スタッフは「責任と緊張を感じるが、チーム全体でひとつの目標に向かう充実した時を心から愉しんでいる」と語る。
世界一過酷なサーキットで、TOYO TIRESとNovel Racing、RING RACINGがワンチームとなって挑むチャレンジはまだ始まったばかり。彼らが、今年のニュル24時間レースをどのように戦うのか。今後もしっかりと見守っていきたい。