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コラム ニュース

投稿日: 2021.01.20 16:29
更新日: 2021.08.30 12:34

モータースポーツのワールドカップが初開催された2005年A1グランプリ【サム・コリンズの忘れられない1戦】

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コラム | モータースポーツのワールドカップが初開催された2005年A1グランプリ【サム・コリンズの忘れられない1戦】

 その日のサポートレースについてはあまり覚えていないが、自分のメモを見ると、ある意味で歴史的なGTレースが行われていた。フォーミュラ・フォード1600とフォーミュラ・パーマー・アウディだ。後者のフォーミュラ・パーマー・アウディは非常に面白いチャンピオンシップかもしれない。これがF3やフォーミュラ・ルノーの低予算版の代替レースであることを知らなければの話だったが。

 フォーミュラ・パーマー・アウディではチューブフレームのバンディーメンのシャシーに、チューニングされた2ℓのアウディのエンジンが搭載されていた。他のほとんどのチャンピオンシップと違い、シリーズ全体がアライブ・アンド・ドライブ形式で運営されていた。すべてのマシンは、ジョナサン・パーマーが経営するモータースポーツ・ビジョン社(ブランズ・ハッチも所有している)が管理しているため、すべてのドライバーは、コースに来てレースをするだけだった。

 このレースは通常、激しい接戦が見られるものだが、私がレースについて思い出せるのは、大学の友人のひとりであるエミリオ・デ・ビロタJr.が出場していたことだけだ。彼は調子が悪く、彼の姉がドライブした方があの日は速かったかもしれないと冗談を言っていたことを思い出す(彼の姉のマリアはその数年後、マルシャF1チームのテスト中の怪我が原因で亡くなっている)。

元イギリスF3選手権チャンピオンのロビー・カーに集まった観客は注目。
元イギリスF3選手権チャンピオンのロビー・カーに集まった観客は注目。

 私が完全に集中していたのは、メインイベントであるA1グランプリレースの2戦だった。最初のレースは短いスプリントレースで、その後長いフィーチャーレースが行われる。このふたつのレースの間には休憩がある。ポールポジションを獲得していたのはエマーソン・フィッティパルディがチーム代表を務めるチーム・ブラジルのネルソン・ピケJr。

 2番手はチーム・ニュージーランドで、真っ黒にペイントされたマシンをドライブするのはマット・ハリデーだった。ハリデーを知っている人は少ないかもしれないが、彼は主に母国オーストラリアの競技に出ていたドライバーだ。さまざまなバックグラウンドを持つドライバーにチャンスを与えるという点はA1GPの興味深い点のひとつだったと思う。

 レースにエントリーするために、チームはフランチャイズ権を購入しなければならない。また、チャンピオンシップの主催者は、モータースポーツが普通に行われている国はもちろん、モータースポーツの歴史が浅い国も引き寄せることを望んでいた。パキスタンやインドネシア、レバノン、中国はすべてグリッド上にマシンを並べていたし、他にも予想外の国々が参加を切望していた。

 しかし各チームは、少なくともその国のパスポートを所持し、このシリーズでレースをする能力があるドライバーをひとり見つけなければならない。チーム・レバノンはカリル・ベシールというドライバーを見つけた。ベシールはフォーミュラ・ルノーに何度か参加し、A1GPの準備をするために、イタリアでF3000のレースに数回出ていたドライバーだ。だが、私は仕事仲間にこう言ったのだ。

「彼より僕の方がずっと経験があるよ」

 日本もグリッド上に並んでおり、10番手から福田良がスタートすることになっていた。ファンの注目のほとんどは、元イギリスF3選手権チャンピオンのロビー・カーがドライブする、チーム・グレート・ブリテンのマシンに注がれていた。

 私はグリッドを見渡してドライバーたちの歴史に思いを馳せていたが、それはシェイク・マクトゥームの言葉によって中断された。マクトゥームはA1GPの初開催を祝う短いスピーチを行ない、そのなかで彼は自身のことを常軌を逸した人間だと表現した。マクトゥームは大きな微笑みを浮かべると高らかに宣言した。

「国の誇りを背負う紳士たち、エンジンをかけてください!」

2005年A1GP 第1戦イギリス スプリントレースのスタートの様子
2005年A1GP 第1戦イギリス スプリントレースのスタートの様子

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サム・コリンズ(Sam Collins)
F1のほかWEC世界耐久選手権、GTカーレース、学生フォーミュラなど、幅広いジャンルをカバーするイギリス出身のモータースポーツジャーナリスト。スーパーGTや全日本スーパーフォーミュラ選手権の情報にも精通しており、英語圏向け放送の解説を務めることも。近年はジャーナリストを務めるかたわら、政界にも進出している。


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