「15年間レースを戦っているが、これほど大きなコントラストのサーキットで戦ったことはないね。ミドルセクターはとても濡れていて、赤旗が出た瞬間には自分も芝の上だった(笑)。再開後もコースの反対側は完全にドライだったし、これほど困難な状況で最速タイムを記録できてうれしいよ」と、前戦地元開幕の日曜には2ヒート連勝を飾っているキス。
約2カ月半越しの勢いを持続したキスは、土曜午後に雨量過多による“オープニング・イエロー”で開始されたレース1でも視界良好の優位性を保ってポール・トゥ・ウインを達成すると、さらにトップ10リバース採用のレース2でも怒涛の追い上げを披露。
ドイツ出身のシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)や、フランス出身のアンソニー・ヤニエック(ライオン・トラック・レーシング/マン)らを次々と仕留めると、首位争いを繰り広げるアンドレ・クルシム(ドント・タッチ・レーシング/イベコ)、テオ・カルヴェ(バギラ・レーシング/フレイトライナー)の編隊に迫っていく。
ラップ数の消費を抑えるため手早く2番手カルヴェをパスし、首位クルシムに迫ったキスだったが、残り2周の時点でドアを閉め徹底したディフェンスラインで抵抗するドント・タッチ・レーシングのイベコに対し、接触上等の激しいドライビングで応戦し、トレーラーヘッドをきしませながら首位浮上に成功。これで連勝かと思われたキスだったが、チェッカー後の審議で追い抜き際のヒットに「10秒加算ペナルティ」が言い渡され3位に後退。失意のまま初日を終えることとなった。
明けた日曜もレース3に向けたウエットの予選で勝負が再開すると、意外にもこれが今季初ポールとなった帝王ハーンに対し、午後に始まった週末3度目のレースでキスが躍進。フロントロウ2番手から「前日の借りを返す」とばかりにターン2で首位を奪うと、そのまま独走体制に持ち込んで2位浮上の2017年王者アダム・ラッコ(バギラ・レーシング/フレイトライナー)に対し21秒ものマージンを築いてチェッカー。一方、最後の表彰台となる3位にはハーンを攻略したレンツが入り、ポイントで逆転された勝者キスとの差を最小限に留める力走を見せた。
そして、ふたたびリバースグリッド採用の週末最終ヒートでは、そのレンツが6番手発進から意地の奮闘で毎ラップのオーバーテイクを披露。アントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)や復帰組のシェーン・ブレルトン(TORトラック・レーシング/マン)らをパスして今季2勝目を挙げ、このレースで5位に終わったキスに対し3点差のランキング2位で喰い下がる結果となった。
続くETRCの2021年シーズン第5戦、実質的“ラウンド3”は約2週間後の9月11~12日に、ベルギーのゾルダー・サーキットでの1戦が予定されている。


