そのカーブデイの朝はやや冷え込んでいたが、プラクティスの開始時刻11時には燦々と照らす太陽が気温を上げ、場内に詰めかけたファンの熱気も相まって、エンジンが始動するとさらにヒートアップする。

 琢磨はグリーンフラッグが振られた後、ひと呼吸おいてからコースインした。そして冒頭のように段々とペースを上げていくと、21周目と早い段階でトップに出た。

 他のマシンはパックのなかで自分のマシンのフィーリングを確かめながら、抜きつ抜かれつを繰り返している。なかでも琢磨のチームメイト、スコット・ディクソンはマクラーレンのパト・オワード、フェリックス・ローゼンクヴィスト、チームメイトのアレックス・パロウらと走りつつ、227.285マイルを11周目にマークしていた。

 ディクソンもカーブデイ走行後「他のマシンと一緒に走って興味深かったけど、まだいくつか見直すところがあると思う」と感想を語っている。

 琢磨だけに限らず、チップ・ガナッシのドライバーは速いだけでなく探究心も旺盛で、それに応えるエンジニアたちもデータの解析に余念がない。膨大なリソースを持つこのチームの強さを、この2週間の間で垣間見た。

 そして残すは500マイルの決勝レースのみとなった。琢磨はカーブデイの走行後に「今日試したいと思っていたことは、ほぼやることができて、90%の仕上がりです。理想のかたちに近づいていて、最後の10%は確認する作業で、それはレースでも修正できます。ですので、やりたいことは全部できたと思っています。準備としては整いました」

「過去と比べてみて、2017年(アンドレッティ・オートスポーツ在籍時)は、チームのアドバンテージとしては今年を上回っていると思いますけど、自分たちのやりたいプログラムを消化できたという意味では、2017年を上回りました。今のマシンをインディ500のレースに向けて最適化できたという自覚はあります。レースは思いっきり行けると思うので、そこに賭けるしかないですね」

 昨年デイルコインからの臨んだインディ500では、セッティングで一か八かの選択をせざるを得ず、最後まで悩んでレースに臨んだが、今年は全方位OKという余裕が見える。これが名門チームのマシンに乗るということなのだろう。

 プラクティスから予選まで常にトップ10内を維持し、いよいよ迎える決勝レース。状況は2017年のようでも、2020年のようでもあるが、琢磨の顔に見える余裕は明らかにそれを上回っている。

スコアリングパイロンの一番上に表示される佐藤琢磨のカーナンバー『11』
スコアリングパイロンの一番上に表示される佐藤琢磨のカーナンバー『11』

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