更新日: 2018.02.16 23:19
【レースの焦点】急成長する次世代エースドライバー

しかし予選Q3の最後、リカルドがベッテルを0.5秒上回るタイムを記録したのは、ダウンフォース云々よりも、インターミディエイトの2連続アタックラップに成功したからだ。ウエットで速度が落ちるとはいえ、1周あたりのエネルギー回収は最大2メガジュール(MJ)、放出は4MJというパワーユニットの使用規制の下、2連続で速いタイムを記録するのは難しい。トップ10のなかでトライできたのはルノー勢とニコ・ヒュルケンベルグで、2周目にベストタイムを記録したのはリカルドひとりだった。彼の勝因は、2連続の1周目から速いタイムで走行し、ウォームアップの難しいインターミディエイトの温度を維持し、ベストを2周目に合わせてきたところにある。
「午前中とは微妙に雨量が違っていて、コース上のアスファルトが変化するところなどは特に、ベストラインを見つけるのに苦労した」と、2位のタイムを記録したリカルドは説明した。「少し水の量が違うだけで、場所によってグリップがすごく変わったから」
Q1、Q2と、トライ&小さなエラーを繰り返した末、最後に見出したベストライン、そしてタイヤの使い方だった。
「いつか、アイルトン・セナのようにウエットで速くなりたい」と言ったのは、12年のサンパウロ――セナはもちろん憧れの存在で、インテルラゴスのパドックが古びているだけでも「セナもこの、同じパドックにいたんだよね!?」と感動していた。非力なHRTで走った頃から、ウエット走行を研究するのが大好きだった。
グリップを感じ取り、タイヤと路面の関係を分析し、ロングランの性能を予測する。HRT/トロロッソの2年半で鍛えた能力は、今シーズン、ドライ路面のレースでも大きなアドバンテージとなっている。コースを見る際、マシンの“ポジショニング"を彼はとても大切にする。レースを組み立てるときには“攻撃と防御の黄金比"を研究し続けた。
「アタックし過ぎて、タイヤを駄目にしてしまった。そもそも、スタート直後にあのラインを選んだのが、僕の最初のミスだ」というふうに、幾度か失敗し、自己批判することによってレースクラフトに磨きをかけてきた。
正確なドライビングで、ひとつひとつ着実に学んでいくドライバーだ。トラブル続きだったこの冬のテストを経ても、データの豊富なトップチームで走ることによって、学習熱心は加速したに違いない。レッドブルが彼を選択したのは、失敗から目を逸らさない精神力の強さと、生まれ持った速さに賭けたからだ。