「お願いします、もっと走らせてください」
開幕戦のオーストラリアGPでは予選15位を獲得した小林可夢偉が、第2戦のマレーシアGPの予選でどんな走りを披露するか注目が集まったが、20位という結果に終わった。メルボルンの再現を期待していたファンにとっては残念だったと思うが、それ以上に肩を落としていたのは、21位のマックス・チルトン(マルシャ)と最下位となったマーカス・エリクソン(ケータハム)だったのではないだろうか。
なぜなら、可夢偉が予選に向けてセットアップがまったくできていなかったのに対して、チルトンとエリクソンは完璧ではなかったものの、可夢偉に比べれば十分に準備する時間があったからである。それは予選まで3回あったフリー走行の周回数を見れば、一目瞭然だ。
可夢偉
フリー走行1回目:5周
フリー走行2回目:0周
フリー走行3回目:7周
合計:12周
チルトン
フリー走行1回目:10周
フリー走行2回目:20周
フリー走行3回目:16周
合計:46周
エリクソン
フリー走行1回目:24周
フリー走行2回目:31周
フリー走行3回目:12周
合計:67周
これを見ればわかるように、可夢偉はチルトンとエリクソンに対して、圧倒的に周回数で劣っているだけでなく、セットアップの参考となるフリー走行2回目のデータがまったく取れていない中での、事実上ぶっつけ本番の予選アタックだったことがわかる。
ところが予選では「週末中ずっとペースがあったから、この結果はガッカリ。1回のアタックですべてをうまくまとめることができなかった」とチルトンが言えば、エリクソンは「フリー走行3回目を終えて、ハンドリング面でもパワーユニットのドライバビリティの面でも、昨夜からかなり進歩したのは明らかで、すぐにクルマの感触が良くなっていただけに、最後のアタックでミスしてクラッシュしてしまい、チームに申し訳ないことをした」と反省。
一方、20位に終わった可夢偉も、もちろんこの結果に満足しているわけではない。しかし、それは結果ではなく、走ることができなかったことに対するフラストレーションである。
「まずは、走らないことにはどうすることもできない。セッティングとか、言える状況じゃないですから。お願いします、もっと走らせてください」と予選後、日曜日のレースに向けた現在の心境を語ってくれた可夢偉。それは可夢偉だけでなく、ファンも同様である。今は成績よりも、1周でも多く周回してくれることを望みたい。