バーレーンGPでルイス・ハミルトンを追いつめたのは、セバスチャン・ベッテルではなかった。第2戦で勝利を挙げたベッテルが沈んでしまった裏には何があったのか。レース中の無線交信を中心に、検証してみよう。

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 35周目の最終コーナーで、セバスチャン・ベッテルが飛び出した。コーナーの進入でわずかにラインがアウト側にはらみ、出口の縁石に乗ってバランスを崩したマシンはダスティなランオフエリアへとはみ出してしまう。

 ニコ・ロズベルグと2位を争っていたベッテルだったが、このミスの代償は非常に大きなものになってしまった。

「フロントウイングにダメージがあると思う。なぜかわからないけど、すごくアンダーステアだ。センサーの数値をチェックしてくれ」

 フロントのダウンフォースを失ったベッテルのマシンはアンダーが強くなり、ロズベルグの先行を許しただけでなく、ノーズ交換のため緊急ピットインを強いられることになった。

「ニコから逃げようとプッシュしていて、最終コーナーで少しワイドになってしまったんだ。フロントウイングはコクピットからは見えないから何が起きたのかわからないけど、それでダメージを負ってしまった。僕は攻めていたし、前にクルマがいるとダウンフォースを失いやすい。あの時は僕が思った以上にダウンフォースが失われたんだ。フロントのグリップが失われた感じがあったし、ノーズ交換のためにピットストップをしたのは正しい判断だったと思う。バルテリ(ボッタス)と戦う時間を得るために、早めにピットインすることを決めたんだ。残念ながら、それでも十分ではなかったけどね」

 これで5番手まで後退したベッテルは、すぐにバルテリ・ボッタスに追いついて猛攻を仕掛けるが、どうしても抜けない。

「いいぞ、ベッテルの脅威はそれほど大きくない。このポジションをキープできそうだ」

 ボッタスとウイリアムズ陣営も、ストレートの立ち上がりが伸びないベッテルの弱点を見破ったようだった。

 実は、ベッテルはレース序盤からペースが思うように上がらず苦しんでいた。

「もう少し速く走れるはずだ、彼(ベッテル)を抜いてもいいか?」

 10周目には、ベッテルに抑えられた格好のキミ・ライコネンが、こうチームに訴える場面もあった。

「ここでベッテルにアタックしろ、フレッシュタイヤを使え!」

 16周目にはピットストップ直後のロズベルグが攻勢を仕掛け、メインストレートでDRSを使ってベッテルを抜き去った。

 ベッテルのペースが伸び悩んだ原因は、リヤのグリップ不足にあった。

「今日はリヤタイヤのグリップに苦しんでいて、コーナーの立ち上がりで上手く前のクルマについていけなかった。逆にニコは立ち上がりが良かった。バルテリに対しても同じで、彼が上手く走っていたので抜くことはできなかった。DRSを使えるところまで来ても、何かを仕掛けるところまで接近することができなかったんだ」

 逆に僚友のライコネンはベッテルとは異なるタイヤ戦略を採り、最終スティントにソフトタイヤを履いたことでロズベルグを追い立て、2位を奪い取ることに成功した。マレーシアGPでは見事な戦略とレースペースで優勝したベッテルだったが、今回はライコネンのほうが完璧なレースを組み立てることに成功した。

 しかし、レース後のベッテルは晴れやかな表情をしていた。パワーサーキットのバーレーンでメルセデス1台を食うほどの走りを見せたのだ。そこまで攻め立てられたからこそ、メルセデスの2台もレース終盤にブレーキに問題を抱えるところまで追いつめられた。

「もちろんメルセデスは、はるかに先を行っているけど、彼らが三味線を弾いていたとは思わない。第2スティント以降は多少のペースコントロールをしていただろうけど、最初のピットストップでは僕が彼ら2台の間に割って入ったくらいだし、彼らにも余裕はなかったはずだ。キミが2位に入ったことで僕たちの速さは証明できたし、ポジティブな週末だった。次のレースでも前進して、彼らにプレッシャーを与え続けていきたい」

 いよいよ始まるヨーロッパラウンドを前にフェラーリの展望は明るい。勝負に敗れてもなお、ベッテルの表情がそれを物語っていた。

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