スコット・ディクソンが伝統のショートオーバルを制し、今季2勝目
武藤英紀は8位
2009年5月31日(日)
決勝
会場:ザ・ミルウォーキー・マイル(全長1.00マイル)
天候:快晴
気温:16〜17℃
09年インディカー・シリーズ第5戦ABCサプライ/AJ・フォイト225は、全長1マイルのショートオーバル=ザ・ミルウォーキー・マイルで開催され、予選4位からスタートしたスコット・ディクソン(Target Chip Ganassi Racing)が今季2勝目を飾った。終盤の勝負どころとなったトラフィックの中、ディクソンは見事なオーバーテイクを見せ、その後は後続を突き放してゴールした。
決勝日のミルウォーキーは朝から雲ひとつない晴天が広がった。しかし、スタート時刻の午後2時半になっても気温は摂氏20度に届いていなかった。緯度の高さを改めて感じさせるコンディション下で、225周のレースはスタートした。
多くのファンがグランドスタンドから見守る中でグリーンフラッグが振られると、見事なダッシュを見せたのはトニー・カナーン(Andretti Green Racing)で、3位からトップへと躍り出た。しかし、25周を越えるとハンドリングが悪化し、見る間に後退。後に燃料漏れから火災が発生し、カナーンはリタイアを喫した。
ポールポジションからスタートしたライアン・ブリスコー(Team Penske)は、カナーンをパスしてトップを奪還するとリードを続けた。しかし、ダリオ・フランキッティ(Target Chip Ganassi Racing)が、素早いピットストップで3位からトップへと浮上した。
ショートオーバルでは、トラフィックが何度もトップグループの前に発生し、どれだけ短時間でパスして進んで行けるかが重要だったが、フランキッティは周回遅れに引っかかった一瞬の隙を突かれてブリスコーとディクソンにパスを許し、3位へと順位を戻した。
再びトップに立ったブリスコーは、2年連続優勝に向けて周回を重ねた。しかし、201周目、周回遅れのマシンに一瞬引っかかった彼をディクソンが鋭い走りでオーバーテイク。ゴールまで25周を切ってトップに立つと、周回遅れを次々とパスしてブリスコーとの間にマージンを作り上げ、2.1257秒の差をつけてゴールへ飛び込んだ。
ブリスコーはゴールを目の前にしてフランキッティから激しいアタックを受けたが、これを辛うじて封じ込めて2位フィニッシュ。3位はフランキッティ、4位は予選2位から、ほぼ全周で4位を走り続けたグラハム・レイホール(Newman/Haas/Lanigan Racing)が入った。ウィスコンシン州生まれで、多くの地元ファンの期待を集めるダニカ・パトリック(Andretti Green Racing)は予選9位から5位でゴールし、大きな歓声を浴びていた。予選でアクシデントを起こして最後尾スタートとなったインディ500ウィナーのエリオ・カストロネベス(Team Penske)は、11位まで順位を上げるのが精一杯だった。
予選6位からスタートした武藤英紀(Andretti Green Racing)は、レースの序盤に5位に順位を上げ、ハイペースで走行を続けていた。そのポジションを保っていた武藤だったが、2回目、3回目のピットストップで順位を落とし、8位でのゴールとなった。
コメント
スコット・ディクソン(優勝)
「ミルウォーキーは本当に難しいコースだ。だからこそ挑戦のしがいもある。今日はとても楽しいレースとなっていた。マシンのハンドリングはすばらしく、特にターン1からターン2ではインもアウトも自在に走れていた。そして、我慢強く戦うことが今日のカギだった。序盤から燃費をセーブし続けて3、4番手を走行。チャンスを待ち、それが終盤にやって来た。ブリスコーがトラフィックに追いつくタイミングと、私がとても速いスピードでターン1からターン2を回れたタイミングがピタリと合い、バックストレッチでトップを奪うことができた」
ライアン・ブリスコー(2位)
「すばらしいレースを戦うことができていた。優勝を狙っていたし、勝つチャンスが十分にあっただけに、2位に終わったのは非常に悔しいし、残念だ。我々のマシンより、スコット・ディクソンの方が終盤によいマシンになっていたようだ。しかし、Team Penskeのピットストップは今回も最高で、今シーズンの我々はまだピットでひとつも順位を落としていない。勝利を飾ることこそできなかったが、今週はポールポジションと最多リードラップ記録でボーナスポイントを獲得できた」
ダリオ・フランキッティ(3位)
「ミルウォーキーでのレースは常に接戦になり、トラフィックの中での戦いが続けられる。そのトラフィックの処理で今日の我々は苦労した。クルーたちのピットストップがすばらしかったことでトップに立ったというのに、1台の周回遅れに追いつくタイミングが悪かったためにオーバーテイクを許し、3位に逆戻りさせられた。最後はブリスコーをパスすべく全力を挙げたが、マシンに当たる風を遮られるとグリップが下がり、彼から2位を奪うことはできなかった」
武藤英紀(8位)
「マシンのハンドリングはとてもよく、レース中のペースもよいものでした。1回目のピットストップでは順位を上げることこそできませんでしたが、ポジションキープはできていました。しかし、レースの中盤以降、ピットストップに入るタイミングが周回遅れと一緒になってペースが遅くなったのと、最後にはピットでの給油作業の遅れもありました。ピットで順位を落としていては勝つことはできません。クルーたちもミスをしようとしているわけではないのですが、練習をもっと繰り返し、ミスのないようにしなければならないと思います」
ロジャー・グリフィス|HPD レース・チーム・マネジャー
「とても多くのファンが集まってくれた中、インディカーならではの非常に速いペースでのレースが展開された。アクシデントも、フルコースコーション2回だけ。ショートオーバルでのレースはトラフィックも大きなファクターとなるのが常で、ブリスコーはフランキッティの一瞬のスピードダウンを見逃さずにパスした。しかし、ディクソンがレース終盤、同じようにトラフィックを利用してブリスコーからトップを奪った。実に見応えのあるレースとなっており、集まったファンはインディカーバトルを堪能してくれたものと思う」
