【Honda】雷雨により月曜に延期されたレースでウィル・パワーが開幕2連勝
武藤英紀は14位、佐藤琢磨はアクシデントでリタイア

2010年インディカー・シリーズの第2戦、Hondaグランプリ・オブ・セント・ピーターズバーグは、3月28日の午後に決勝レースのスタートが切られる予定だった。しかし、午後からの強い雷雨により、ファンの安全確保のためにレースは翌日へと延期された。
雨雲は月曜日の朝方までフロリダ半島の東側に居残り続けたが、ほぼ予定通りの午前10時半前、24台のインディカーの頭上にグリーンフラッグは振り下ろされた。

小さな美しいリゾート地のダウンタウンにレイアウトされた全長1.8マイルのストリートコースは、町の南側に位置するヨット・ハーバーの横を駆け抜け、空港の滑走路も利用するもの。低速から高速までバラエティに富む14個のコーナーが配され、抜きつ抜かれつの激しいバトルの舞台となる。

100周で争われたレースにおいて出場24台の作戦は、序盤のフルコース・コーションで早めにピットインするものと、燃料がなくなるギリギリまで走り続ける2パターンに分かれたが、最終的には1つの作戦に集約された。65周目に出されたフルコース・コーション中にほぼ全車がピットインし、残り35周をフルスロットルで戦い抜くというレース展開になったのである。

72周目にトップに躍り出たのは、予選9番手からスタートしたE.J.ヴィソ(KV Racing Technology)だった。ところがその次周、彼は不運にもギアボックスにトラブルが出てスローダウン。トップの座はポールポジションからスタートしたウィル・パワー(Team Penske)の手に戻った。彼は2位に浮上してきたジャスティン・ウィルソン(Dreyer & Reinbold Racing)から執拗なプレッシャーをかけられながらもミスなくゴールまで走りきり、開幕2連勝を飾った。3位には19番グリッドからスタートしたライアン・ブリスコー(Team Penske)が食い込み、4位はエリオ・カストロネベス(Team Penske)のものとなった。

5位でフィニッシュしたのは、昨年度チャンピオンのダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)だった。予選は13番手と振るわず、スタート直後には他車と接触。最後のピットストップを終了した時点では16位を走っていたフランキッティだったが、残り30周強の走りは目覚しく、切れ味鋭い走りで5位にまで浮上したのだった。

武藤英紀(Newman/Haas/Lanigan Racing)は、フルコース・コーションでのピットインをできるだけ遅らせる作戦が的中し、レース中盤に2位までポジションを上げた。しかし、最後となるはずだったピットストップでクラッチにトラブルが発生。エンジンをストールさせて18位まで大きく後退。そこから4つのポジションアップを果たし、14位でゴールした。

インディカーデビュー2戦目を迎えた佐藤琢磨(KV Racing Technology)は、11番グリッドからスタートしてすぐさま9位までポジションを上げる順調さだった。しかし、フロントタイヤがグリップを失って25周目のターン4でタイヤバリアに突っ込み、2戦連続のリタイアを喫した。レース結果も開幕戦と同じく22位となった。
今回のパワーの勝利はキャリア3勝目。セント・ピーターズバーグでは初勝利だが、Team Penskeにとっては昨年に続いての2連勝、そして通算4勝目となった。なお開幕からの2連勝は、2001年のタイトル獲得を果たしたサム・ホーニッシュJr.以来である。

コメント

ウィル・パワー(優勝)
「2連勝できるなんて考えてもいなかった。すばらしいシーズンのスタートとなった。ハードワークを続けてくれているチームのためにも、連勝はとてもうれしい。今日も彼らのピットストップは完ぺきだった。しかし、まだ17戦のうちの2戦が終わっただけ。タイトルのことを考えるには早過ぎる。自分としては1レースずつを今後も全力で戦っていくだけだ。今日はスタートに注意深く対処した。レッドタイヤは消耗が激しいと考えていたので、あまりプッシュしないことにした作戦も正解だったと思う」

ジャスティン・ウィルソン(2位)
「本当に多くのことがあり難しいレースだったけれど、我々のマシンはすばらしかったし、チームのクルーたちはピットストップも速かった。最後は燃料をセーブしながらもパワーを追った。ゴールまで10周をきってから差を縮め、プレッシャーをかけたが、パワーはミスを犯さなかった。これからもチームとともにマシンの性能を向上させ、優勝争い、ポイント争いを続けていきたい」

ライアン・ブリスコー(3位)
「予選は19番手だった。戦いを甘く見て、タイヤ選択を誤った。しかし、レースに向けてのマシンはよかったので、ばん回のチャンスはあると信じていた。そして、その通りに19番手スタートから表彰台に上がることができ、本当にうれしい。後方のグリッドからスタートするときには、ピットタイミングをずらす作戦が必要になる。レースの序盤、我々は早目にピットに入った。その後のレース展開も味方してくれ、我々は狙い通りにポジションを稼ぐことができた。ブラジルでミスをしたので、冷静さを保って戦い続けるよう自分に言い聞かせた」

武藤英紀\t(14位)
「クラッチがなくなっていたためにピットストップで大きくポジションを落としてしまい、今日のレースは終わってしまった感じでした。実は、今週末にクラッチのトラブルは何度か出ていました。今日はレース中盤に上位を走りました。序盤は我慢の走行を続け、チームの作戦もよく2位へと上がることができました。その後のピットストップで大きくポジションを落とさなければ、そのまま上位でフィニッシュできていたレース内容でしたから、チームも自らのパフォーマンスに好感触を得ています。もちろん、もっと細かい部分までマシンをよくする必要はあります。今回の場合でいえば、ソフトのオルタネートタイヤでの走りが、ハードのプライマリータイヤと比べて苦しいものになっていました」

佐藤琢磨(22位)
「序盤の路面は難しかったですが、バトルを楽しめました。ポジションをいくつか上げることもできました。しかし、フロントタイヤのグリップがなくなってしまって、ピットに入りたいと無線で伝えましたが、燃費などの作戦もあってチームとしてはもう少し周回数を引っ張りたかった。あのアクシデントの2周ぐらい前から、フロントタイヤはまったくグリップしなくなっていて、オーバーテイクされないライン採りで走ったらコーナーでマシンが曲がらず、壁にヒットしてしまいました。それでも、今回はレースを戦うことができて、いくつものことを学びました。我慢強く走ることがインディカーでは重要です。いくつかポジションを落とすことがあっても、後に抜くチャンスが来るということなどもわかりました。次はバーバー・モータースポーツ・パークというロードコースですから、開幕2戦とは少し違ったレースになりますが、いい結果を出せるようがんばりたいと思います」

ロジャー・グリフィス|HPDレース・チーム・マネジャー
「毎年、フロリダらしい好天の下でレースを開催することができていたが、今年は日曜日にレースを行えず、ファンも残念だったに違いない。しかし、あれだけの雨が降ってはレースが危険なものになっていただろう。ブラジルと同じように赤旗での中断などが起きていたことも十分に考えられ、見て楽しく、エキサイティングなレースができない可能性があった。レースの順延は正しい判断だったと思う。
今日は、スタート直後は少し路面が濡れていたが、すぐにドライコンディションとなり、ストリートコースならではの激しい、接触などもある戦いが繰り広げられた。スタート時にはまだ多くの空席が見られたが、レースが終わる頃にはスタンドもほぼ満員になっていた。集まってくれたファンにはインディカーレースを大いに楽しんでもらえたと思う。今シーズンから燃料ミクスチャーダイヤルを廃止し、オーバーテイクボタンを押した際のパワーのアップ率を増大させているが、結果として、レースが抜きつ抜かれつのバトルになっていたと思う」

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