バーバー・モータースポーツパークで開催されたIZODインディカー・シリーズ第2戦。1日に行われた決勝レースでは、昨年のロード/ストリートコースチャンピオンのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が今季初勝利を飾った。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)は、エンジントラブルにより2戦続けてリタイアを喫した。
真夏のような日差しの下で繰り広げられた白熱バトルを制して優勝を飾ったのは、予選9番手からスタートしたパワーだった。
スタート時の気温は摂氏28度に達し、金曜、土曜のどの走行セッションよりも気温、路面温度ともに高いコンディションでレースは戦われることとなった。2種類あるタイヤがどのようなパフォーマンスを見せ、どのような順番でそれらを使うのが正解なのか不透明な中でレースは始まった。
序盤はポールシッターのエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)がリードし、レース中盤からは予選3番手のスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が主導権を握る。
ディクソンはカストロネベスを7秒以上も突き放して悠々とトップを走るも、チームメイトを抜いて2番手へと上がって来たパワーがその差をジリジリと縮めて来た。逃げるディクソン、追うパワー、レースはふたりによる一騎打ちとなる。
ディクソンは差を2秒以上に保ってトップを守り続けた。しかし、バックマーカーのシモーナ・デ・シルベストロ(ロータスHVM)にひっかかり差は一気に消滅した。
90周のレースの65周を終えたところでパワーが先に3回目のピットストップ。ディクソンは次の周にピットロードに向かう。チーム・ペンスキーのクルーが完璧な仕事をこなしたのに対し、チップ・ガナッシ・レーシングは右リヤタイヤの交換に手間取って決定的なタイムロス。
このタイミングでキャサリン・レッグ(ロータス・ドラゴン)がコースオフしてフルコースコーションが出されたが、パワーはディクソンがピット出口のラインを横切るよりも早く、コース上のコントロールラインを通過し、ポジションは逆転した。
レースは残り16周でリスタート。直前のスティントではディクソンの方が速かったが、最後のスティントでは立場が逆転。パワーは先頭に出たことでモチベーション・アップしたのか、リスタートを危なげなく決めると、そこから先は渾身の力を込めて突っ走った。その結果、ディクソンに3.3709秒もの大差をつけてゴールしたのだった。
「凄いレースになった。ピットの作戦も良く、自分たちは持っている力を最大限に出し切って戦えていた。最後のリスタートは冷や冷やものだよ。ディクソンは速く、彼が2ラップほど思い切りチャージして来たんだ。でもべライゾンの12号車を、シボレー・エンジンでビクトリーレーンヘと導けた。これは本当に嬉しいことだ。今日の勝利はピットクルーによるものだ。彼らの仕事が最高だったよ。それがなければ勝つことはできなかった」とパワーは語った。
パワーにとっての今季初優勝は、バーバー・モータースポーツパークでの2年連続優勝となった。チーム・ペンスキー、そしてシボレーは開幕2連勝だ。
対するディクソンは開幕戦のセント・ピータースバーグに続く2位フィニッシュで、しかも、バーバーでは3年連続で2位となっている。ホンダ・エンジンも開幕から2戦続けての2位。まだ初勝利の美酒を味わうことはできていない。
「勝てなかったことは悔しいが、長いシーズンを通して安定した戦いぶりを保ち続けることを考えている。ポイントをほとんど稼げない、そういう週末があるとチャンピオンにはなれないんだ。開幕2戦で2位という成績に自分としては満足している」とディクソンは語った。
表彰台の最後のスポット、3位はカストロネベスが何とか辛うじて守り切った。75周目のリスタートからグラハム・レイホール(チップ・ガナッシ)が猛チャージを仕掛けたが、カストロネベスはベテランの技でレイホール二世を0.2205秒差で封じ込めた。
ふたりのすぐ後ろでゴールしたのはサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)。予選10番手からアグレッシブな走りをゴールまで見せ続けたペジナウは、開幕戦で記録した自己ベストリザルトの6位を、第2戦目にして早くも上回る5位フィニッシュを達成した。
佐藤琢磨は、フレッシュ・ソフトタイヤ装着で16番グリッドからスタート。オーバーテイクを重ね、15周目には10位にまでポジションを上げていた。ところが、1回目のピットストップでハードタイヤに交換するとマシンバランスが一気に崩れ、順位を大きく落とすこととなった。そこで2回目のピットストップでは再びソフトタイヤを選択したのだが、この頃からエンジンパワーがダウン。53周目にエンジンがストップし、リタイアで24位という結果となった。
「今年のバーバー・モータースポーツパークでのスタートは、去年よりスピードが上げられた分、オーバーテイクは難しくなってました。それでもレース序盤に何台かをパスできました。1回目のピットでプライマリーに変えたら、マシンが一気に悪くなった。オルタネート(ソフトタイヤ)装着とで、今日の僕らのマシは差が大き過ぎましたね。次のピットでオルタネートに戻したら、また順位を上げていくことができました。そこから更に行こうという時、エンジンがストップしました」と語っていた。
ルーベンス・バリチェ(KVレーシング・テクノロジー)は多くのバトルを戦って8位でゴール。ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ)は苦しく長いレースを戦い抜き、10位でフィニッシュした。彼らの間の9位はセバスチャン・ブルデー(ロータス・ドラゴン)で、ロータス・エンジンにとっての初のトップ10フィニッシュが達成された。