2月19日にニューマシンFW38の画像を公開したウイリアムズ。チーフ・テクニカルオフィサーであるパット・シモンズが新車について語っている。
──FW38の設計コンセプトは?
「FW37は出来の良いクルマだったので、その長所を失わずに改善できる領域はどこかを理解しようと考えた。FW37は高速域でのパフォーマンスと比べると、速度の低い領域で見劣りするところがあった。したがって、なぜそうだったのかを突き止め、必要な改良を施すことに多くの時間を費やした」
──設計のプロセスはいつから始まった?
「正確に答えるのは難しい。上級エンジニアの間では、パフォーマンスを高める方法について絶えず話し合っているからだ。それでも何とか答えるとすれば、まだFW37が走り始めてもいない昨年の1月半ばには、もうFW38のコンセプトについて『やりたいこと』リストを作るミーティングが開かれていた。FW37のテストが始まり、次のクルマで採るべきデザインの方向性がもう少しはっきり見えてきた段階で、モノコックやギヤボックスなど、設計だけではなく構造解析にも時間がかかる部分の基本的なレイアウトの作業が始まっていた」
──2016年には何が変わる?
「テクニカルレギュレーションは、ほとんど変わっていない。安全性を高めるためにドライバーの頭部を保護するプロテクターが少し大きくなり、強度も上がっている。観客にもわかりやすいのは、エンジンの音がやや甲高くなることだろう。冬の間にエンジンの燃焼が改善され、それだけでも少し音が大きくなることに加えて、ターボのウェイストゲートからの排気をメインのエキゾーストへ出さずに、直接外へ排出するようになるからだ。これだけで音量は12%ほど大きくなる。時には高性能ターボエンジン特有の刺激的な音も聞けるかもしれない」
──スポーティングレギュレーションについては?
「特にタイヤの使い方に関するルールが大きく変わる。ルールでタイヤの使い方が縛られるほど、レースの結果が予想どおりになりやすいことは、ずいぶん前から認識されていた。これに対処するために、従来のスーパーソフトよりさらに軟らかいウルトラソフトが追加され、それ以上に重要なこととしてチームのタイヤ選択の自由度が高められた。これで順位の大変動が起きるとは思わないが、時として予想外の結果をもたらす可能性はあるだろう」
──2016年はウイリアムズにとって良いシーズンになる?
「それは誰にもわからない。スポーツの世界では、あらゆることが相対的だ。つまり自分たちがどれほど努力して進歩したかだけでは決まらず、競争相手の努力と進歩によっても左右される。ウイリアムズでは間違いを正直に認めて、そこから学ぶことを重視している。外部からは見えにくいことだが、チームのオペレーションにもいくつかの変更を加えた。今年はレース中に様々な状況の変化に直面しても、よりうまく対応できるはずだ。
2016年のウイリアムズの強みは、安定したチーム体制にある。その重要性は理解されにくいのだが、同じふたりのドライバーと継続的に仕事をしてきたエンジニアリングチームであれば、それぞれが本来の力を発揮するのに時間はかからない。プレシーズンテストが8日間しかないシーズンには、特に重要だ」
──2016年の予想を聞かせてください。
「もう長くこの世界にいるので、うっかり予想を口にしない程度の知恵はある(笑)。過去2年間で、ウイリアムズはチームの伝統である競争心を取り戻した。そのスピリットをさらに高めて、着実に前進していく原動力にしたい。また2017年に迎える大きな変革を視野に入れながら、将来に向けた戦略的な視点を忘れないようにしたい」
2015年シーズン、モナコやハンガリーといった低速のサーキットで無得点に終わったウイリアムズ。今季は、その弱点に焦点を当てて開発を進めたという。2月22日から始まるバルセロナ合同テスト1回目では、前半2日をバルテリ・ボッタス、後半をフェリペ・マッサが担当する予定だ。
