最近のF1はネガティブなニュースが多く、ファンとしてはいささかガッカリしている。F1立役者バーニー・エクレストンの贈賄裁判、新エンジン規定の不評、ケータハムの身売りと解雇従業員による起訴、主要レースの観客数減とテレビ視聴率低下……等々。

 なぜこんなことになったのか考えてみたが、それはとりもなおさずF1のガラパゴス化が原因だろうという結論に達した。ガラパゴス化というのは常識的な立ち位置から見て孤立した状態を言う。多くの人は自分が常識的だと考えており、その常識に照らして異端である事やモノをガラパゴスと称する。語源はガラパゴス諸島にあることは今更説明は要らないだろう。

 F1はなぜガラパゴス化したのか? それには色々と理由はあるが、基本的にはバーニー・エクレストンによる独占開催がもたらした弊害と言えよう。彼はF1をテレビに売ることによってヒーローを作り出し、一種のショーに仕立て上げた。テレビの力は絶大で、自動車メーカーや国際的企業がスポンサーとしてF1に参入してきたのは、ひとえにテレビ放映があったからに他ならない。

 しかし、テレビで成長してきたF1は、あるとき大切なことに気付いた。自分たちが世間の常識から遠い場所でサーカスをやっていたことに。気付いた時には世間は遙か彼方を未来に向かって進んでいた。そこでF1は慌てて世間に足並みを揃えようとするのだが、するとこれまで狭い世界で解決していた問題が、世間の常識では簡単に解決できない大きな問題であることを知らされ、その対応に四苦八苦している。それがまさにF1の今だ。

 F1に参戦し続けるチームや企業は、F1の呪縛に雁字搦めにされているのではないだろうか? 例えば技術。F1の技術は高出力で高速を可能にしなければならない。そのために、開発が続けられてきたF1技術だけは特別だという奢った気持ちがあるのではないだろうか? その結果、社会が求める自動車技術とはかけ離れた技術を後生大事に抱え、ここまで来たのだろう。

 ところがある時、このままではF1は完全に孤立する、と気付いた者がいた(すでに十分孤立しているのだが……)。そして、世間に対して我々F1も敏感であるという姿勢を見せるために、環境技術を盛り込んだ規則を作りあげた。それが2014年から採用されたF1の新技術規則だ。何事にも頂点でなければならないF1だから、数値だけは厳しい。

 ただ、問題はそれで解決したわけではない。自動車メーカーの参入が少なく、環境対応を重視する企業の参入も少ない。理由は明解だ。F1の規則の環境対応は、市販車レベルと比べるとややもすれば荒唐無稽に映るからだろう。小排気量エンジンにターボチャージャーやハイブリッドを取り付けるという世間の流れに沿ってみても、それらは出力増加の道具でしかない。燃費向上と言っても、1リッター当たり2kmくらいしか走らない。だから、大排気量高性能車やスポーツカーを製造販売し、F1をプロモーションと考えるメルセデスやフェラーリにとれば参加する意味は十分あるが、実際にコツコツと環境技術に取り組んでいるメーカーには、F1は遠いところにあるように映るのだろう。

 その孤立から脱却するには、参入して活動する自動車メーカーが、誰でも購入できる廉価な市販車にも採用される可能性のある技術の重要性をF1中枢に説いていくことしかあるまい。そこでやっとF1は自動車産業に与することが出来ることになる。

 その他のネガティブな問題は、どこにでもある問題だ。ただし、観客数減、テレビ視聴率低下はF1が大勢の人にとって魅力を失いつつあることを示している。どうすれば回復出来るのか? 技術の問題も含めて原点に戻って考えてみた方がいい時期に来ていると思う。パドックの華やかさに目を眩まされることのないように、くれぐれも冷静に。

赤井邦彦(あかいくにひこ):世界中を縦横無尽に飛び回り、F1やWECを中心に取材するジャーナリスト。F1関連を中心に、自動車業界や航空業界などに関する著書多数。Twitter(@akaikunihiko)やFacebookを活用した、歯に衣着せぬ(本人曰く「歯に衣着せる」)物言いにも注目。2013年3月より本連載『エフワン見聞録』を開始。月2回の更新予定である。

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